「敷衍」という言葉をご存知でしょうか?
使い方としては、
「敷衍する」「敷衍的」「敷衍化」などのように用います。
実はこの言葉は、
人と人が話す時に使えて非常に便利なのです。
普段の生活はもちろんのこと、ビジネスでも使うことができます。
今回は、「敷衍」の意味や例文、
類語・対義語などを分かりやすく解説しました。
さっそく、確認していきましょう。
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敷衍の意味・読み方
まず、「敷衍」の意味を調べると
次のように書かれています。
【敷衍(ふえん)】
①おしひろげること。展開すること。
②意義・意味をおしひろめて説明すること。また、わかりやすく詳しく説明すること。
出典:三省堂 大辞林
「敷衍」は「ふえん」と読みます。
意味は大きく分けて2つあり、1つ目は
「ある説明を様々な形に広げて展開すること」です。
【例】⇒野球のトレーニング法を、技術一般の上達論に敷衍する。
この場合は、「野球のトレーニング法」を
「サッカー」や「陸上」などのスポーツ技術上達、
あるいは「仕事の技術上達」などに広げる。という意味です。
このように、
一つの分野の知識や見解をより広い分野に展開することが
「敷衍」の1つ目の意味となります。
そして2つ目は、
「意義や意味を押し広めて説明すること」です。
別の言い方をするなら、
「わかりやすく説明する」と言っても構いません。
【例】⇒A教授の議論を私なりに敷衍すると、~
この場合は、
「A教授の議論を私なりに簡単に説明すると」という意味です。
つまり、抽象的なことを具体的に説明したり、
難しい言葉を分かりやすく言い換えたりすることも
「敷衍」と言うわけですね。
以上、2つの意味を紹介しましたが、
一般的にはそれぞれ次のような場面で使われます。
①「おし広げる・展開する」⇒大学入試の現代文など。
②「わかりやすく説明する」⇒ビジネスシーンなど。
①の意味は、大学入試現代文の評論などでよく使われてます。
一方で、②の方は人と人が話したりするビジネスシーンでよく使われます。
どちらも大事な意味ですが、
しいて言うなら前者の意味で使われることの方が多いです。
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敷衍の語源・由来
「敷衍」という言葉は、
「敷」と「衍」の2つから成る感じです。
まず、「敷」という字は日常的にも使われています。
例えば、「布団を敷く」「風呂敷を広げる」
「鉄道を敷設する」といった使い方です。
これは元々「敷」という字が、
「平らにして広げる」という意味を持っているからです。
布団や風呂敷などは、まさに平らにして広げて使うものでしょう。
また、「敷設」という言葉も、
「鉄道の敷設」のように線路を広げて鉄道網を作る時に使います。
これも「敷」に「広い範囲に設置する」という意味があるからです。
そして、「衍」という字ですが、
「衍」は「行」と「氵(さんずい)」が組み合わさってできています。
「行」という字は、元々
「(東西南北の)四方向に人々の足が行き交うこと」ことを表した漢字でした。
そして、「氵」は「水」を表す漢字です。
このことから、
「衍」は「水が四方向に広く広がる」
という意味を持った漢字になったのです。
以上の事から考えると、
「敷衍」という言葉は「水が四方向に平らに広がる様子」
を表したものだと分かるかと思います。
転じて、現在の
「色々な物事を(水のように)広げる」という意味になるわけです。
敷衍の類義語
「敷衍」の類語としては、
以下のような言葉が挙げられます。
【拡大(かくだい)】⇒広げて大きくすること。
【拡張(かくちょう)】⇒勢力・範囲などを広げて大きくすること。
【展開(てんかい)】⇒広くひろげること。物事をくりひろげること。
【詳言(しょうげん)】⇒物事を詳しく言うこと。
【詳述(しょうじゅつ)】⇒物事を詳しく述べること。
【肉付け(にくづけ)】⇒細部に手を加え、内容に厚みを与えること。
前半3つは、
「物事を広く展開していく」という意味の類語です。
そして後半3つは、
「物事を分かりやすく詳しく説明していく」という意味の類語です。
「敷衍」の「類語」は、
どちらの意味で使われているかによって異なってきます。
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敷衍の対義語
一方で、「敷衍」の「対義語」としては、
以下のような言葉が挙げられます。
【停頓(ていとん)】⇒行き詰まってはかどらなくなること。
【縮小(しゅくしょう)】⇒縮めて小さくすること。
【短縮(たんしゅく)】⇒縮めて短くすること。
【迂遠(うえん)】⇒まわりくどいさま。
【示唆(しさ)】⇒それとなく暗に示すこと。
【間接的(かんさつてき)】⇒物事を遠回しに言及するさま。
こちらも同じく、
前半3つが「広く展開してく」という意味の対義語です。
そして、後半3つが
「分かりやすく説明する」という意味の対義語です。
「反対語」の場合は、物事の進みを停滞させたり、
まわりくどくさせたりする意味の言葉となります。
敷衍の英語訳
「敷衍」は、英語だと次のように言います。
「expatiate(詳細に説く)」
「enlarge」(拡張する・大きくする)
「explain in detail」(細部に渡り説明する)
「expatiate」は、物事のことを詳しく説明するような時に使えます。
また、「enlarge」は
「話の規模を押し広げたり、詳しく述べたりする時に使います。
最後の、「explain in detail」は
「細かく説明する」という意味の熟語です。
「detail」には「詳細・細部」などの意味があるため、
上記のような意味となります。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
敷衍の中国語
「敷衍」は、中国語だと「ピンイン」と発音します。
ただし、中国語の場合は、
日本語とは少し異なる意味を持つので注意が必要です。
中国語の場合の意味は以下の通りです。
①詳細に説明すること。
②人を適当にあしらうこと。
③何とか持ちこたえること。
①の意味は日本語と同じです。
しかし、②の場合は「適当にあしらう」、
③の場合は「持ちこたえる」という意味で使われます。
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敷衍の使い方・例文
では、最後に「敷衍」の使い方を
実際の例文で確認しておきましょう。
- 食の安全問題を、生活全体に敷衍して論じる。
- いじめの問題を、社会全般に敷衍して論じる。
- 少子高齢化問題を敷衍して、日本経済を語る。
- 教授の抽象的な説明を、生徒が敷衍する。
- 分かりにくい説明なので、もう少し敷衍すべきだ。
- 科学は敷衍することにより、人々に認知されてきた。
前半3つは、「広げて展開する」という意味です。
この場合は、
「ある問題を、より広いテーマの中に位置づける」という意味でしたね。
そして、後半3つは、
「わかりやすく説明する」という意味です。
この意味の場合は、
「抽象的なことを具体的に説明する」ということでした。
どちらの意味で使われているかは、
文脈によって判断するようにしてください。
まとめ
以上、内容を簡単にまとめると、
「敷衍」=ある説明を様々な形に広げて展開すること。わかりやすく説明すること。
「語源」=「敷」と「衍」で「水が四方向に平らに広がる様子」から。
「類義語」=「拡大・拡張・展開・詳言・詳述・肉付け」
「対義語」=「停頓・縮小・短縮・迂遠・示唆・間接的」
「英語訳」=「expatiate」「enlarge」「explain in detail」
ということでした。
何かを論じるときは「敷衍」により視野が広がります。
また、相手への説明は「敷衍」により納得してもらえます。
ぜひ今後の生活で、
「敷衍」を意識した行動を心がけてみてください。
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国語力アップ.com管理人
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- 平穏無事の意味とは?例文や使い方、類義語・対義語を解説 - 2021年1月25日
まさか57歳で未知の単語に出会うとは思っていませんでした。
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