不易流行 わかりやすく 松尾芭蕉 ビジネス 使い方 例文

「不易流行」と呼ばれる四字熟語をご存知でしょうか?元々は松尾芭蕉の言葉で、「不易流行の理念」「不易流行の気持ち」などのような使い方をします。

実はこの四字熟語はビジネスにおける経営理念や教育の場でよく使われています。もしも不易流行の意味を理解できれば、物事の見方が大きく変わることは間違いありません。

本記事では、不易流行の意味や使い方、例文、類語などを簡単にわかりやすく解説しました。

不易流行の意味・読み方

 

まず最初に、不易流行の意味を辞書で引いてみます。

【不易流行(ふえきりゅうこう)】

蕉風俳諧(しょうふうはいかい)の理念の一。新しみを求めて変化していく流行性が実は俳諧の不易の本質であり、不易と流行とは根元において結合すべきであるとするもの。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

不易流行」は「ふえきりゅうこう」と読みます。意味は「不易と流行は根本で結合すべきであること」を表したものです。

不易」とは「永久不変」、すなわち「ずっと変わらない」という意味です。そして、「流行」とは、「時代と共に変わること」という意味です。

つまり、「ずっと変わらないこと」と「変わり続けること」は同じくらい大切だということを言っているわけです。

分かりやすいように具体例を出しましょう。

人に気持ちを伝える手段というのは色々とあります。現代ではメールやLINEなどが主流です。一昔前は手紙などで相手に気持ちを伝えていました。

一方で、今も昔も伝える人の気持ちというのは変わりません。例えば、相手に対して好きと伝えるような場合、この好きという感情は変わらないです。これらを「不易流行」に当てはめると、以下のようになります。

不易」=伝える気持ち。(好きという気持ち)

流行」=伝える手段(メール・LINE・手紙など)

普通に考えれば、「不易」の方が変わらないので本質に見えます。

しかし、「不易流行」という言葉は「流行」も「不易」と同じくらい重要だと考えます。

この場合だとそもそも伝える手段がなければ、相手に気持ちを伝えることができません。同様に、相手に伝える気持ちがなければ、伝える手段を持っていたとしても何ら意味がありません。

不易流行は、「不易」と「流行」の両方がそろって初めて物事が成立する四字熟語です。したがって、どちらか一方でも欠けたらそれはもはや意味を成さないと考えるのです。

不易流行の語源・由来

 

「不易流行」は松尾芭蕉の言葉が由来です。松尾芭蕉の俳諧をまとめた『去来抄(きょらいしょう)』には次のような記述があります。

「千歳不易の句、一時流行の句といふあり。是を二つにわけて教え給へる、其の元は一つなり。

これを簡単に訳すと、「千年変わらない俳句と一時的な俳句を二つにわけて教えたが、根本は一つである。」となります。

俳諧の「不易」は「十七音なこと」「季語があること」などです。言い換えれば、永久不変の芸術の姿ということです。

一方で、俳諧の「流行」は、文字数を変えたり季語を変化させたりすることです。こちらは、「不易を求めて進展し、流動する芸術の側面」のことを表します。

つまり、芭蕉は【俳諧における「不易」と「流行」の美しさは、どちらも根本は同じである】と主張したわけです。

一見すると、「変化」と「不変」は真っ向から対立するようにも見えますが、芭蕉によれば両者が一句の中に統一される俳句こそが本来の理想であると考えられていたのです。

不易流行の類義語

不易流行 類義語 対義語

続いて、「不易流行」の「類義語」を紹介します。

千古不易(せんこふえき)】⇒永遠に変化しないこと。「千古」は「太古・大昔」という意味。
万代不易(ばんだいふえき)】⇒永遠に変わらないこと。「万代」は「永遠」を意味する。
万世不易(ばんせいふえき)】⇒永久に変わらないこと。「万世」は「永久」という意味。
百世不磨(ひゃくせいふま)】⇒永久に消えずに残ること。いつまでも消滅しないこと。「百世」は「百代」、転じて「長い年月」の意。「不摩」とは「すり減らないこと」を表す。
温故知新(おんこちしん)】⇒過去の事実を研究し、そこから新しい知識や見解をひらくこと。『論語』の「故ふるきを温あたためて新あたらしきを知しる」から。

以上、5つの類語を紹介しました。

「不易流行」を言い換えた四字熟語は多くありますが、全く同じ言葉すなわち「同義語」はありません。基本的には「永久・永遠に変わらないこと」を表す言葉が類義語となります。

この中では、「温故知新」が最も意味としては近いですが、「不易流行」とは多少意味が異なります。温故知新には過去のこと研究したり、新しい知識を切り開いていくという意味があります。「不易流行」にはこのような意味は含まれていません。

不易流行の対義語

 

一方で、「対義語」としては「一時流行」が挙げられます。

一時流行(いちじりゅうこう)」とは「社会が好む一時的な新しさ」という意味です。

「不易流行」と同じく元々は俳諧の言葉から来た四字熟語となります。

不易流行の英語訳

 

「不易流行」は、英語だと次のように言います。

immutable epidemic

「immutable」は「不変の、不易の」、「epidemic」は「流行」という意味です。合わせることで、「不変の流行」と訳すことができます。

また、以下のような単語を使うことも可能です。

「changelessness」 (無変化)

「unchangingness」(不変)

「unchangeability」(不変)

「change」は、「変わる・変化」などの意味です。その「change」の頭に「un」をつけると、「不変」という意味になります。

不易流行の使い方・例文

 

最後に、「不易流行」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. コンピュータの世界は不易流行により発展してきた側面がある。
  2. 現代社会でビジネスを行う際は、不易流行の考え方が必須である。
  3. 不易流行を取り入れてきてから、会社の本質が変わってきたと言える。
  4. 今後は不易流行の気持ちを持って、新しい挑戦をしていくつもりです。
  5. あそこの会社は、どうやら不易流行の理念で新商品を開発しているようだ。
  6. 弊社の経営理念は不易流行です。流行的なもの、伝統的なもの両方を重視しています。

 

不易流行は上記のように様々な場面で使うことができますが、一般的にはビジネスシーンで使われることが多いです。

ビジネスでは、変わらない本質の中にも、新しい変化を取り入れることという意味で使われます。こちらは本来の意味とは少し異なりますが、主に会社の経営理念などに使われます。

例えば、社歴が長い会社などでは、昔から大事にしている理念が当然あります。一方で、ビジネスを進めていくと、新しく取り入れたい理念も出てくるでしょう。そこで、両者を混合させた新たな理念を掲げ、芭蕉の俳句のように「不易」と「流行」を一つに統一するわけです。

不易流行には複数の意味がありますが、このあたりの微妙な違いは辞書によっても解釈が分かれています。いずれにせよ、共通しているのは、永遠性と流動性の根源は一つであるということです。ここの意味は本質的には変わらないと考えてよいです。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

不易流行」=「ずっと変わらないこと」と「常に変わること」は、同じくらい大切なこと。

語源・由来」=俳句の「不易」と「流行」は、どちらも根本は一つであることから。

類義語」=「千古不易・万代不易・万世不易・百世不磨・温故知新」など。

英語訳」=「immutable epidemic」

今の世の中を見ていると情勢は常に動いています。特にビジネスの世界では変化が激しいです。そんな世の中だからこそ、「不易」と「流行」の両方を重視して生きてみてはいかがでしょうか?