ビジネスでは物事の内容や要点をまとめたものを「概略」あるいは「概要」と言います。また、場合によっては「概況」が使われることもあります。
これらの言葉はどう使い分ければいいのでしょうか?本記事では、「概略」と「概要」の違い、さらに「概況」についても解説しました。
概略の意味
まずは、「概略」の意味からです。
【概略(がいりゃく)】
⇒おおよその内容。あらまし。大略。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「概略」とは「おおよその内容」を表した言葉です。
例えば、「企画の概略」であれば、
- どんな企画なのか?
- いつから始めるのか?
- 目的は何なのか?
といった大まかな内容となります。
このように、物事のだいたいの中身を示したものを「概略」と言うわけです。
言葉の意味を補足すると、「概略」の「概」は「おおむね・だいたい」などの意味です。そして、「略」には「何かを省く」という意味があります。
つまり、不要な部分を省いて、大まかにまとめたものが「概略」ということになります。
概要の意味
次に、「概要」の意味です。
【概要(がいよう)】
⇒全体の要点をとりまとめたもの。大要。あらまし。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「概要」とは「全体の要点をとりまとめたもの」を表します。
「要点」とは「大事な点」という意味です。例えば、「事件の概要」であれば、
- どこで事件が起きたのか?
- いつ被害者は襲われたのか?
- 目撃者は何人ほどいたのか?
といった点をまとめたものとなります。
上記の内容はいずれも犯人を特定するのに重要な情報だと言えます。このように、物事の大事な点をまとめたものを「概要」と言うわけです。
「概要」の語源も確認しておくと、「概」は同じく「おおむね・だいたい」などの意味です。そして、「要」は「重要」「要約」などがあるように「かなめ(大切な所)」という意味があります。
つまり、大切な部分を、おおむねまとめたものが「概要」ということになります。
概略と概要の違い
ここまでの内容を整理すると、
「概略」=おおよその内容。「概要」=全体の要点をとりまとめたもの。
ということでした。
どちらも似たような言葉にも見えますが、実際には両者は意味が異なります。
まず、「概略」は「不要な部分を省いたもの」でした。一方で、「概要」は「大事な点を短くまとめたもの」でした。
ここで注意すべきは、「概略」には「まとめる」という意味は特に含まれていない点です。
「概略」は、要点に関係なく内容を省略したものです。したがって、場合によっては大事な点が漏れている可能性もあるのです。
もちろん、必ずしも要点が漏れているというわけではありません。不要な部分を省く行為というのは、結果的に大事な点が残ることも多いです。あくまで、「概略」=「必ず要点が残るわけではない」という意味だと考えてください。
もしも「概略」を誰かに説明された場合は、その内容がすべて大事とは考えないようにしましょう。逆に、こちらから相手に要点を伝えるような場合は「概要」を使うのが適切とも言えます。
概況の意味
似たような言葉で、「概況」があります。
【概況(がいきょう)】
⇒大体のようす。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「概況」とは「だいたいの様子のこと」を意味します。使い方としては、以下の通りです。
- 気象概況を伝える。
- 営業の概況を説明する。
「概況」は、「状況」の「況」という字を使っているのがポイントです。
「況」には「周りを含めた様子・ありさま」という意味があります。すなわち、物事のだいたいの様子を伝える時に「概況」を使うわけです。
「概況」は、物事の中身などには使いません。したがって、「内容」を示す「概要」や「要点」を示す「概略」とは明確に異なる言葉ということになります。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【概略の使い方】
- この図はあくまで概略を示したものです。
- 夏祭りの概略を示したパンフレットを配る。
- とりあえず、部下たちに作戦の概略を伝えた。
- 目的地への道筋を概略でいいので教えてください。
- レポートの概略を示したものが次の資料です。
【概要の使い方】
- 今後のビジネス概要を示した計画書を作成する。
- 昨日送ったメールの概要は、以下の通りです。
- 新しく発売した商品の概要を簡単に説明する。
- 事件の概要をもっと詳しく教えてください。
- 今回の企画の概要を先ほど伝え聞きました。
【概況の使い方】
- ようやく当時の概況を把握した。
- 本日の天気概況は、今のところ晴れです。
- 外出前に高速道路の概況をニュースで知る。
- 運航予定の概況は、次の通りとなります。
- 現場の概況を聞いてから判断するつもりです。
どれも使うことができますが、「概要」が最も一般的な言葉だと言えます。「概要」は、企画や発案などのビジネスでよく使われる言葉です。また、「会社概要」など組織の大まかな要点を説明するような際も使います。
逆に、「概略」や「概況」に関してはそこまで一般的には使われていません。「概略」を使うようなケースは、「趣旨」の方がよく使われています。
また、「概況」に関してはそもそも「様子」や「状況」という言葉を使った方が意味が通じやすいです。日常生活では、「概略」や「概況」はほぼ使わない言葉と認識してよいでしょう。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「概略」=おおよその内容。
「概要」=全体の要点をとりまとめたもの。
「概況」=だいたいの様子。
「違い」⇒「概略」は「不要な部分を省いたもの」、「概要」は「大事な点を短くまとめたもの」、「概況」は「周りを含めただいたいの様子」を表す。
ポイントは、それぞれの語源を理解しておくことです。「概略」の「略」は「省略」の「略」、「概要」の「要」は「重要」の「要」、「概況」の「況」は「状況」の「況」。このように覚えておけば違いを忘れにくいでしょう。