「同工異曲」という四字熟語をご存知でしょうか?
漢字だけを見ると「曲」が入っているので、音楽に関係していそうなイメージです。ただ、この言葉は「大同小異」との違いが分かりにくいと感じる人も多いと思われます。
そこで記事では、「同工異曲」の意味や短文、語源、英語訳などを含め詳しく解説しました。
同工異曲の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味方を紹介します。
【同工異曲(どうこういきょく)】
音楽や詩文などで、その技量が同じでも味わいや趣がまちまちであること。転じて、見た目は異なるが、内容は似たり寄ったりであること。
出典:三省堂 新明解四字熟語辞典
「同工異曲」は「どうこういきょく」と読みます。
意味は「音楽や詩文などで、技量は同じでも趣が異なること」もしくは「見た目は異なるが、内容は似たり寄ったりであること」です。
簡単な短文を紹介すると、それぞれ次のようになります。
①一見同じ曲に聞こえるけど、実際は同工異曲だ。やはり異なるよ。
②君たちの意見はどれも同工異曲だ。もっと斬新なアイディアを出さないと。
①は「同じような技量・技巧を使っているけども、趣や味わいが異なる曲であること」を伝えています。そして、②は「表面的には違う意見に見えるけども、その中身はどれも似たり寄ったりであること」を伝えています。
どちらの意味でも使うことができますが、一般的には②の意味として使うことの方が多いです。すなわち、「外見こそ異なるが、内容は似通っていること」という意味です。
なお、「同工異曲」を「同巧異曲」と書くのは誤りなので注意してください。
「〇」⇒「同工異曲」「✕」⇒「同巧異曲」
同工異曲の語源・由来
「同工異曲」は「同工」と「異曲」から成る四字熟語です。まず、「同工」とは「作り方や手際が同じであること」を意味します。
「工」という字は「加工」「工作」「工夫」などの言葉があるように「技量」や「巧みさ」を表します。そのため、「同工」は「同じような技量で作られること」を表します。
そして、「異曲」は文字通り「異なる曲」と書くので「出来上がりが異なる完成品」のことを意味します。ここから派生し、現在では「中身や内容が異なること」という意味でも使われています。
以上の事から考えますと、「同工異曲」は「作り方は同じでも、出来上がりが異なる完成品」を表していることが分かるかと思います。
元々この四字熟語は中国、唐代の詩人である「韓愈(かんゆ)」が書いた『進学解(しんがくかい)』に登場したのが最初でした。以下、実際の一文です。
「子雲、相如、同工異曲」
これを簡単に訳すと、「子雲や司馬相如(しばしょうじょ)など、同じ作りだが異なる曲がある。」となります。つまり、「同じ作り方でも、実際は違う曲調に聞こえる」と言っているわけです。
現在の「違うように見えて、中身は同じようなもの」という意味はこの一文が由来です。本来の意味からは少し飛躍しているようにも聞こえますが、四字熟語の世界ではこのように意味が変わっていくのはよくある話だと言えます。
同工異曲の類義語
続いて、「同工異曲」の「類義語」を紹介します。
「同工異曲」を言い換えた語はいくつかありますが、どれも「結局は同じである」という意を伝えるものとなります。
この中でも特に「大同小異」はよく使われます。「大同小異」とは「多少の違いはあるものの、だいたいが同じであること」という意味です。
「同工異曲」と「大同小異」の違いですが、「同工異曲」は外見が異なるもの同士に使うのに対し、「大同小異」は必ずしも外見が異なるもの同士に使うわけではないという点です。
例えば、外見と中身の両方が似ているA・B二つの本があったとします。この場合、全体としてだいたいが同じであれば、「AとBは大同小異である」と言います。
しかし、「同工異曲」は基本このような使い方はしません。「同工異曲」は、原則として見た目が異なるもの同士を対象とします。
同じ例で説明するなら、本のカバーや表紙などの見た目が異なるものの、その中身が同じもの同士であるような場合に「同工異曲である」と言います。
同工異曲の対義語
逆に、「対義語」としては次のような言葉が挙げられます。
「同工異曲」は「似通っていること・同じであること」を表す四字熟語でした。したがって、「同じでないこと」すなわち「違いがあること」を表した言葉が反対語となります。
同工異曲の英語訳
「同工異曲」は、英語だと次のように言います。
「be practically the same(実際は同じである)」
「much the same(似たり寄ったり・大同小異の)」
「practically」は「実際には・ほとんど」などを意味する副詞です。後ろに「同じ」という意味の「same」をつけることで、「ほとんど同じであること」を伝えることができます。
また、「much」には「ほぼ・だいたい」などの意味があります。これは類似する語句を修飾する際に使われる表現です。一種の熟語表現と同じなので、「much the same」=「ほぼ同じ」と覚えても構いません。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
This problem is practically the same.(今回の問題は本質的には同じである。)
The results were much the same.(その結果はほぼ同じであった。)
同工異曲の使い方・例文
最後に、「同工異曲」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 最近の映画はどれも同工異曲なので、皆が飽きてきているようだ。
- 同工異曲の質問ばかりされても困るね。こちらも少し疲れてきたよ。
- 同工異曲の商品ばかりではなく、もっとオリジナリティーを出すべきだ。
- 小説と言っても同工異曲じゃ意味がない。誰かの二番煎じはやめた方がいいよ。
- 最近流行りの曲はどれも似たり寄ったりで同工異曲に聞こえる。何とかならないものか。
- アイドルグループと言っても歌も曲も似たものばかりで、私には同工異曲に感じるよ。
- 今回の投票は誰にするか迷うね。複数候補がいるけど、どの意見も同工異曲という他ないよ。
- 応募作品の中には同工異曲のものもあったが、全体としては新鮮さに欠けたように感じた。
- 楽器は同じでも演奏者が異なるとここまで変わるのか。まさに同工異曲と言えるよ。
上記のように、「同工異曲」は「見かけは異なるが、結局は中身が似通っていること」という意味で使われることが多いです。この場合は、オリジナリティーがないものを皮肉を込めて否定するような時に使います。
もちろん、本来の語源としての「同じ作りでも、実際は趣がある」という意味で使われることもあります。(例文8・9)、ただ、この使い方をすることは少ないです。
したがって、一般的に使う際には「同工異曲」=「否定的なニュアンスを含む言葉」と考えて問題ありません。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「同工異曲」=「音楽や詩文などで、技量は同じでも趣が異なること」「見た目は異なるが、内容は似たり寄ったりであること」
「語源・由来」=「作り方は同じでも、出来上がりが異なる完成品」(韓愈の『進学解』)
「類義語」=「大同小異・換骨奪胎・異曲同工・五十歩百歩」
「対義語」=「千差万別・雲泥万里・多種多様」
「英語訳」=「be practically the same」「much the same」
「同工異曲」は、元々は音楽や詩文から来た四字熟語です。しかし、現在では様々な場面で使える言葉ですのでこの機会にぜひ使ってみてはどうでしょうか?