「カタルシス」という言葉をご存知でしょうか?主に「カタルシスを感じる」「カタルシス効果」などのように用います。
元々は心理学の用語として使われていた言葉ですが、最近では普段の会話や入試現代文など幅広い場面で使われているようです。
今回は、この「カタルシス」の意味や語源、例文などを簡単に分かりやすく解説しました。
カタルシスの意味
まず、「カタルシス」を国語辞典で引くと次のように書かれています。
【カタルシス】
①文学作品などの鑑賞において、そこに展開される世界への感情移入が行われることで、日常生活の中で抑圧されていた感情が解放され、快感がもたらされること。特に悲劇のもたらす効果としてアリストテレスが説いた。浄化。
②精神分析で、無意識の層に抑圧されている心のしこりを外部に表出させることで症状を消失させる治療法。通利療法。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「カタルシス」とは簡単に言うと「抑えられていた感情が解放され、心の中がすっきりすること」を意味します。日本語では、「精神の浄化」とも訳されています。
「カタルシス」は、「抑圧」⇒「解放」⇒「快感」という3つの流れで覚えると分かりやすいです。
- 心の中で抑えられている感情がある(抑圧)
- その感情が何かをきっかけに一気に取り除かれる(解放)
- そして、気分がスッキリする(快感)
この一連の流れを、「カタルシス」と呼んでいるのです。
なお、「カタルシス」にはもう一つ意味があります。
それは「心の中にたまっている無意識の嫌な気持ちを外部に出すこと」という意味です。この場合は、精神医学の用語として使われるのが特徴です。
どちらの意味でも使うことができますが、一般的には「解放されてすっきりする」という意味で使うことが多いです。
カタルシスの語源・由来
「カタルシス」は、英語だと「catharsis」と書きます。
「catharsis」はギリシャ語の「katharsis」に由来し、ギリシャ語では「排泄(はいせつ)」という意味があります。
元々この言葉は、薬を使って吐かせたり下痢を起こさせたりする治療行為を指していました。つまり、「生理的な用語」を表すものだったということです。
その後、古代ギリシャの哲学者であるアリストテレスがこの言葉を使い始めてから、世に大きく広まったと言われています。
アリストテレスと言えば、紀元前4世紀頃の人物なのでかなり古い話です。彼は「悲劇を見ることによって、観客の精神は浄化される」と述べました。
これは、アリストテレスが演劇などを論じた『詩学』の中で書いています。何千年も前から、「悲劇には何らかの浄化作用がある」と気づいていたのは驚きですね。
そして現在、「カタルシス」は精神医療の分野でも使われています。精神医療では、「質問に答えることにより、人の心を解放する」という使い方が一般的です。
患者さんがカウンセラーの人と相談し、「話したら楽になりました」と言うのは、まさに「カタルシス」のイメージでしょう。
誰かに話を聞いてもらい、気分が楽になるのは、広い意味での「カタルシス効果」と呼べるのです。
カタルシスの具体例
「カタルシス」の身近な例は何があるでしょうか?
最も分かりやすいのは、「悲しい映画をみた時」でしょう。
悲しい映画を見て涙を流したら、「何だか心がすっきりした」という体験をした人はいるかと思います。
例えば、「タイタニック」などの有名な作品は、多くの人が涙を流したことがあるかと思われます。このような体験は、まさに「カタルシス」と呼べます。
他には、「悲しい文学作品を読んだ時」なども挙げられます。
世の中には感動できる小説が数多くあります。気が付いたらストーリーの中にのめり込み、終わった頃には自然と涙を流していたという人も多いでしょう。このような体験も「カタルシス」と呼べるのです。
以上の事から考えますと、カタルシスを感じる際は「悲劇」が一緒に付いて回るということが分かるかと思います。
人間は他人の悲劇を見ると、「かわいそう」と感じます。一方で、それと同時に「自分じゃなくてよかった」「自分はまだ幸運なんだな」という一種の安らぎのようなものを得ます。
悲しいことに、人間は他人と比較することによって自分の幸せを感じるという一面もあるのです。また、涙にはストレスを緩和させる効果があるとも言われています。
つまり、「悲しいこと」と「涙を流すこと」は、種類は違えど両方とも人間にとって気分がすっきりすることなのです。
この事から、人間は悲しい出来事をきっかけに感情が解放されて気分がスッキリするという現象を体験するのです。
カタルシスの類義語
続いて、「カタルシス」の類義語を紹介します。
- 心が洗われる。
- 心がきれいになる。
- 気持ちがスッキリする。
- 気持ちが救われる。
- 精神が浄化される。
- 清々しい気分になる。
- 気分が晴れやかになる。
- うっぷんが晴れる。
- ストレスを解消する。
基本的な言葉のイメージとしては、「心がスッキリする・気分が晴れやかになる」といった内容となります。そこから派生して、「うっぷんが晴れる・ストレスを解消する」なども広い意味で類義語と言えます。
その他、慣用句では「溜飲が下がる」も類義語に含まれます。「溜飲(りゅういん)が下がる」とは「不平や不満、恨みなどの胸のつかえがおりて、気分が晴れること」です。「試合に勝って溜飲が下がった」などのように使います。
カタルシスの英語訳
「カタルシス」は、英語だと「catharsis」と言います。
これは日本語だとそのまま「カタルシス」と訳すこともできますし、「精神の浄化」と訳すこともできます。
他には、「感情の浄化」「精神療法」「便通」などと訳すことも可能です。
例文だと、以下のような言い方です。
He got catharsis by watching movies.(彼は泣くことでカタルシスを得た。)
Crying can offer emotional catharsis.(泣くことは心理的なカタルシスを得られる。)
She said “tragedy brings about catharsis“.(彼女は悲劇は浄化をもたらすと言った。)
カタルシスの使い方・例文
最後に、「カタルシス」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 彼は悲しいドラマを見て涙を流すことにより、カタルシスを得た。
- 読者は自分の気持ちを主人公に重ねることで、一種のカタルシスを得る。
- 気分が冴えない時に映画を見に行くのは、人が無意識にカタルシスを求めているからだ。
- カタルシス療法とは、精神科医のフロイトによって確立されたものである。
- ストレスを払拭するために、心からカタルシスを感じることを実践してみた。
- 今まで我慢していた不満を話したら、一種のカタルシス効果を得ることができた。
「カタルシス」は、例文のように悲しい出来事に対して使うのが基本です。映画・ドラマ・小説・漫画など悲しい作品を読んで、心の中がすっきりするような時に使います。
ただし、場合によっては、「不満やストレスなどに対して解放される」という意味で使うこともあります。例文だと、5と6です。「カタルシス」は悲しくなくても使われる場合があるので注意が必要です。
なお、言い回しとしては、「カタルシスを得る」「カタルシスを感じる」が多いです。その他、「カタルシス効果」「カタルシス療法」など、心理学の用語の一部として使われることもあります。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「カタルシス」=抑えられていた感情が解放され、心の中がすっきりすること。精神の浄化。
「具体例」=悲しい映画をみた時。悲しい文学作品を読んだ時など。
「類義語」=「心がスッキリする・気分が晴れやかになる・精神が浄化される」など。
「英語訳」=「catharsis(精神の浄化・精神療法・便通)」
「カタルシス」は一般に「精神の浄化」などと訳されます。イメージとしては、「抑圧」⇒「解放」⇒「快感」という3つの流れを頭の中に描くようにしておきましょう。