「一進一退」という四字熟語をご存知でしょうか?使い方としては「一進一退の攻防」「一進一退の繰り返し」などのように用います。
普段からよく耳にする言葉なので、聞いたことがあるという人も多いかもしれません。ところが、「具体的な使い方は?」と問われると多くの人が困ってしまうと思われます。
そこで本記事では、「一進一退」の意味や語源、例文・類義語などを含め詳しく解説しました。
一進一退の意味・読み方
最初に、基本的な意味と読み方を紹介します。
【一進一退(いっしんいったい)】
⇒進んだり退いたりすること。また、事態がよくなったり悪くなったりする状態。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「一進一退」は「いっしんいったい」と読みます。意味は「進んだり退いたりすること」もしくは「事態がよくなったり悪くなったりする状態」のことです。
どちらの意味でも使うことができますが、一般的には後者の意味として使うことの方が多いです。
例えば、病気の症状などは良くなったり悪くなったりすることがよくあります。少し良くなったと思ったらぶり返し、逆に、悪くなったと思ったら今度は治まったりといったことです。
このような状態は、事態が良くなったり悪くなったりすることを表しています。よって、「一進一退の繰り返し」などと言うわけです。
他にはスポーツの試合展開などに対して使われることもあります。スポーツの場合は、両者の戦力が拮抗している状態を想像すると分かりやすいでしょう。
野球やサッカーなどを応援する時に「優勢とは言えないし、劣勢とも言えない」というケースがあります。具体的に言うと、「得点した後にすぐ失点」、「失点した後にすぐ得点」といった様子です。
このような状態も、良くなったり悪くなったりしているので「一進一退の攻防」などと言うことができます。つまり、「一進一退」とは簡単に言うと「物事が停滞している状態」を表す四字熟語ということです。
一進一退の語源・由来
「一進一退」の「一進」は「一つ進む」と書くので「少しだけ前進すること」を意味します。そして、「一退」は「一つ退(しりぞ)く」と書くので、「少しだけ後ろへ下がること」を意味します。
つまり、「一進一退」は「物事が少し前進したり少し後退したりを繰り返す状態」を表す言葉だと分かります。
この事から、「事態が良くなったり悪くなったり」という意味で使われているということです。
元々、「一進一退」という四字熟語は、中国戦国時代の思想書である『荀子(じゅんし)』が由来となっています。『荀子』の中の一節に、次のような記述が残されています。
一進一退、一左一右すれば、六驥(りくき)も不致(いた)さず。
これを簡単に訳すと次のようになります。
「駿馬(しゅんば)」とは、一日に千里も走る名馬のことです。
要するに、「いくら優秀な馬でも、まっすぐ進めなければ何の意味もない」という教訓を伝えているということです。ここから現在の、「物事が停滞する様子」を表す意味になったと言われています。
私たち人間にとっても、例えばどんなに優秀なアスリートであろうと怪我をしてしまえば意味がありません。それと同様に、馬にとって前へ進めないのは、何も物事が進展していかないのと同じということです。
一進一退の類義語
「一進一退」は、次のような類語で言い換えることができます。
基本的には、「情勢が進展しない・止まっている」などの意味であれば「類語」と言えます。
四字熟語の中で全く同じ言葉(同義語)というのはありません。しいて挙げるならば、「停滞気味」が最も近い言葉だと言えるでしょう。
一般的な語だと、「停滞」「横ばい」「足踏み」「行き詰まり」などで言い換えることも可能です。
なお、全く同じ読み方で「一心一体」という言葉を使う人がいますが、このような四字熟語は存在しません。おそらく、「一心同体」と混同しているのだとは思いますが、誤用なので注意して下さい。
一進一退の対義語
逆に、「対義語」としては、次のような言葉が挙げられます。
「一進一退」は、「前にも後ろにも進まない停滞した状態」を表す四字熟語でした。したがって、前へ前へと前進していく言葉を表すものが反対語となります。
一進一退の英語訳
「一進一退」は、「英語」だと次のように言います。
「up and down(行ったり来たり)」
「back and forth(後ろへ前へ)」
「up」は「上」ではなく、ここでは「行く」という意味で使われています。「down」についても同様で、ここでは「下」ではなく「来る」という意味です。
後者の「back and forth」は、「後ろへ前へ」という動作を表した表現です。例文だと、それぞれ次のような言い方をします。
I went up and down the street.(私はその道を行ったり来たりした。)
She went back and forth.(彼女は前へ後ろへを繰り返した。)
その他、もっと簡易的な言葉だと「seasaw(シーソー)」などを使う方法もあります。
「シーソー」とは、普段からよく見かける公園の遊具のことです。上がったり下がったりする様子から、こちらも「一進一退」を意味する単語として使うことができます。
一進一退の使い方・例文
最後に、「一進一退」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 一進一退の病状が続いた後、やっと体調が回復してきた。
- 症状は良くなったり悪くなったりで、一進一退の繰り返しです。
- 父は今自宅で療養していますが、病状は一進一退という状況です。
- 現在の戦況は、一進一退の日替わりといったところでしょうか。
- 両軍は一進一退の攻防を繰り返しながら、最終的に引き分けで終えた。
- 一進一退を続けている内に、形勢がこちらの方へ傾いてきたようだ。
- 今日のゲームは一進一退の攻防戦だ。まさに目が離せない展開になるだろう。
「一進一退」は、病気の症状やスポーツ・軍事の戦況などを表す四字熟語です。
いずれの場合も良くなったり悪くなったりを繰り返すような場面で使われます。全く変化がないというわけでなく、一つ進んだと思ったらすぐに一つ退くようなイメージです。
良い意味・悪い意味の両方を含んでいるため、どちらか一方の意味で使われるということはありません。その時の状況を客観的に表すような場面で使うのが、本来の使い方だと言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「一進一退」=進んだり退いたりすること。事態がよくなったり悪くなったりする状態。
「語源・由来」=物事が少し前進したり少し後退したりを繰り返すことから。
「類義語」=「一喜一憂・紆余曲折・二転三転・停滞気味」
「対義語」=「猪突猛進・直往邁進」
「英語訳」=「up and down」「back and forth」
「一進一退」は、四字熟語の中でも比較的使いやすい言葉です。語彙力を高めるためにも、ぜひ明日から使ってみてはどうでしょうか?