親や上司など目上の人に使う四字熟語があります。一般的には「反面教師とする」などと言います。
「教師」と付くからには「何かを教わる」というイメージではないでしょうか?ところが、この言葉の意味を誤用している人が意外と多いようです。
そこで本記事では、「反面教師」の意味や語源、対義語、言い換え表現などをわかりやすく解説しました。
反面教師の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【反面教師(はんめんきょうし)】
⇒悪い見本として、かえって見習うべきようなもの。悪い面の手本。悪例。
出典:三省堂 大辞林
「反面教師」は「はんめんきょうし」と読みます。
意味は「悪い見本として、かえって見習うべきもの・悪い面の手本」を表したものです。
例えば、あなたが来年受験を控えている学生だとして、仲の良い先輩が受験に落ちたとします。
後から聞くと、その先輩はほとんど勉強もせず常に遊んでいたと聞きました。そのため、あなた自身は先輩のようにはならないようにとしっかりと勉強をしようと考えました。
このよう場面では、「先輩を反面教師とする」などと言うことができます。つまり、「受験に落ちた」という悪い見本を参考にし、自分はそうはならないように決意したということです。
反面教師は、基本的に他人の悪い見本を参考にするような時に使います。ポイントは、「悪い見本」という点です。
この四字熟語は、良い見本に対しては使いません。「自分がそうなってはいけない」と思うような好ましくない悪い見本を対象とします。この悪い見本によって、自分の能力や技術を向上させるような時に使うのが反面教師ということです。
反面教師の語源・由来
「反面教師」の「反面」は「反対の面」、すわなち「自分とは真逆の悪い一面」という意味です。そして、「教師」は「人に教える職業」を指します。
よって、「反面教師」を直訳すると「自分と正反対の悪い一面を教えてくれる人」となります。ここから転じて、「悪い見本となる人や物事」という意味で幅広く使われているわけです。
「反面教師」という四字熟語は、中国共産党の革命家、「毛沢東(もうたくとう)」のセリフが由来と言われています。毛沢東は、民衆に対して次のような演説を行いました。
間違った考えを持った者が組織にいたとする。その場合は、単に排除するのではなく民衆に見せつけるのだ。
そうすれば、他の人員は間違った考えをせずに全体が良い方向へと向かうだろう。
要するに彼は、「組織の中に間違った人物がいた方が、むしろよい」と言ったわけです。なぜなら、好ましくない人物を他の人が見ることにより、反省や戒めの材料となるからです。
人間は生きていく上で必ず誰かと比較をします。
- 「Aさんが成功したのでマネをしよう」
- 「Bさんが失敗したのでやめとこう」
このように、誰かと比較をしながら自分の未来の行動を決めることが反面教師の基本にある考え方なのです。
反面教師の類義語
続いて、「反面教師」の類義語を紹介します。
以上、四つの類義語を紹介しました。いずれも「他人の過ちを参考にする」という点では共通しています。
この中でも特に「他山の石」はよく使われます。「他山の石」とは「他人の誤った行いでも、自分のためになる」という意味のことわざです。
「反面教師」との違いですが、「他人の石」には自分の修養に役立たせる・それを使って磨くという意味が含まれています。「反面教師」にはこのような「悪い行いを使い、自分のために利用する」という意味までは含まれていません。
また、「他山の石」は目上の人の言行には使わないといった特徴があります。一方で、「反面教師」は教師と付くように主に目上の人を対象とするのが基本です。
そもそも、「教師」という言葉自体が自分より上の教える立場の人を指します。したがって、同世代や目下の人ではなく比較的目上の人を対象とする四字熟語が「反面教師」ということになります。
反面教師の対義語
「反面教師」の対義語としては、次のような言葉が挙げられます。
対義語の場合は「参考にすべき良い物事」という意味の言葉となります。
反面教師は、「悪い見本・悪い例」などを意味する四字熟語でした。したがって、「良い見本」や「良い例」を表す言葉が反対語となります。
反面教師の英語訳
「反面教師」は、英語だと次の三つの言い方があります。
「bad example(悪い例)」
「negative example(良くない例)」
「an example of how not to behave」(見習うべきでない例)
「bad」や「negative」は、「良くない・悪い」という意味を持つ形容詞です。また、「behave」は「行儀よくする」という意味の動詞です。これに打消しの「not」がつくことにより、「見習うべきでない例」となります。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
He is a bad example for his students.(彼は生徒達にとっての反面教師だ。)
His behavior was a negative example.(彼の行いは良くない例であった。)
She is an example of how not to behave.(彼女は見習うべきでない人物である。)
反面教師の使い方・例文
最後に、「反面教師」の使い方を例文で紹介しておきます。
- すぐ怒る親を反面教師として、自分は人にやさしくしようと思います。
- 大嫌いで顔も見たくない上司だが、反面教師として自分に生かすことにした。
- 私の親は子育てで苦労していたようなので、これを反面教師とするようにします。
- 彼は今まで何度もミスしてきたが、逆に彼の失敗談を反面教師とすべきである。
- 先輩がスピード違反で捕まったらしい。自分も運転するので反面教師としよう。
- 良い師匠に出会うのも反面教師に出会うのも、こればかりは運と言っていい。
- 親の離婚を反面教師として、自分の今後の結婚生活に生かすつもりでいます。
反面教師は、例文のように目上の人を対象とするのが原則です。自分と同格の人、もしくは下の人に対してはほとんど使いません。
前後関係としては、まず親や上司、先輩、師匠などが失敗やミスを犯します。その後で、「自分はそうはならないように」という戒めや注意の意味も込めて使うのが適切な使い方です。
自分の身の回りの年上を見て、「同じ失敗はしたくない」「同じ事をしてはいけない」と感じた時に、この反面教師を使うようにして下さい。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「反面教師」=悪い見本として、見習うべきもの。悪い例。
「語源・由来」=自分と正反対の悪い一面を教えてくれる人。「毛沢東」の発言から。
「類義語」=「他山の石・人を以て鑑と為す・人の振り見て我が振り直せ・前車の覆るは後車の戒め」
「対義語」=「見本・手本・模範・鑑」
「英語訳」=「bad example」「negative example」「an example of how not to behave」
私たちの身の周りには、悪い見本を持つ人がたくさんいます。そんな時は、自分にとっての教訓と考えて「反面教師」としてみてはどうでしょうか?