「一陽来復」という四字熟語をご存知でしょうか?お札やお守り、年賀状などに使われる縁起の良い言葉で、最近ではビジネスシーンにおいても見かけるようになりました。
ただ、どのような意味を持つ言葉なのかといった疑問があります。そこで本記事では、「一陽来復」の語源や使い方、類語などを含め詳しく解説しました。
一陽来復の意味・読み方
最初に、この言葉を辞書で引いてみます。
【一陽来復(いちようらいふく)】
①《易 (えき)で、陰暦10月に陰がきわまって11月の冬至に陽が初めて生じることから》陰暦11月。または、冬至。《季 冬》
②冬が去り春が来ること。新年が来ること。「―の春」
③悪いことが続いたあと、ようやく物事がよい方に向かうこと。「―を願う」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「一陽来復」は「いちようらいふく」と読みます。意味は全部で3つあります。
- 陰暦の11月。冬至の日。
- 冬が去り春が来ること(新年が来ること)
- 悪いことが続いたあと、ようやく物事が良い方向に向かうこと。
「冬至(とうじ)」とは、太陽が天球上の運行経路である黄道上のもっとも南を通過する時刻のことです。日本や中国の暦の二十四節気の一つであり、陰暦だと11月に存在します。
現在の太陽暦だと12月22日頃を指し、まさに冬の真ん中の時期にあてはまります。冬至の日は、正午に太陽の高度が北半球でもっとも低くなることから、昼の長さは最も短く、夜の長さは最も長くなります。
つまり、一年で最も昼の日照時間が短くなる日が冬至だと言えます。逆に言えば、この日を境に再び昼の時間が長くなり、気候も温かくなり始めるということです。
「冬が去り、春が来ること」や「悪運続きの後に、ようやく幸運の兆しが見え始めること」などの意味は、この「冬至」を表す季節の状況から派生したものということになります。
一陽来復の語源・由来
「一陽来復」は、古代中国の書物である『易経(えききょう)』に由来します。
『易経』は儒教の五大経書の一つで、占いの理論と方法を説いたものです。陰陽の二つによって人の未来を予想しているため、現代でもこれを元にした占いが日本や中国では用いられています。
この『易経』の中には、「陰暦10月に陰の気が極まり、陰暦11月に陽となる気が戻ってくる」と記されています。要するに、「冬至の日になると、再び太陽の力が戻って来る」ということです。
現在使われている「一陽来復」は、この「陽の気が戻って来ること」を語源とする四字熟語ということになります。「一陽」とは「一つの太陽の気」、「来復」とは「復活して再び戻って来ること」という意味です。
易の世界では、「陰」が冬を指し、「陽」が夏を指します。また、暗いところやマイナスなイメージを「陰」と言い、明るいところやプラスのイメージを「陽」と言います。この事から、「悪い運が終わり、良い運が訪れ出す」という意味でも使われるようになったわけです。
なお、「来復」を当て字で「来福」と書くこともありますが、本来は誤りなので注意して下さい。
「一陽来復」⇒「〇」 「一陽来福」⇒「✕」
一陽来復の類義語
「一陽来復」の「類義語」は以下の通りです。
類義語は「一陽来復」の意味そのものを表した「冬至」が意味としては一番近いです。その他だと、「悪い状況から抜け出すこと」「どん底から抜け出すこと」などの言葉も類義語となります。
逆に、対義語としては「夏至(げし)」が挙げられます。「夏至」とは二十四節気の一つで、太陽の黄経が90度に達する日のことです。
太陽暦だと6月21日頃を指し、北半球では昼が最も長く、夜が最も短い日となります。この日を境に、次第に日照時間が短くなり、陽から陰へと転じることになります。
一陽来復の英語訳
「一陽来復」は、英語だと次のように表現します。
「Winter is over and spring comes.」(冬が終わり、春が訪れる)
「Luck has finally come my way.」(ついに幸運がやって来た。)
「winter」は「冬」、「over」は「終わる」、「spring」は「春」、「come」は「来る」という意味です。そのため、「冬が終わり、春が来る」という意味で「一陽来復」と訳すことができます。
また、「luck」は「幸運」、「finally」は「ついに」という意味なので、「苦しい日々が終わり、ようやく良いことが起こること」を伝えることができます。
間接的な表現だと、次のような言い方も可能です。
「Spring is here.」(春が来た。)
「It is getting more like spring.」(日に日に春になりつつあります)
「The darkest hour is just before the dawn.」(夜明け前が一番暗い。)
一陽来復の使い方・例文
最後に、「一陽来復」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 長かった冬が終わりを迎え、ようやく一陽来復の春が来たようだ。
- 弊社はここ数年業績が不調だったが、今年は一陽来復の兆しが見えた。
- 最近不運なことばかりが続いているけど、一陽来復と考えるようにしました。
- 今年は大学受験の年なので、一陽来復のお守りを神社で購入するつもりです。
- 病気がなかなか治らず大変苦しいですが、一陽来復を待つだけだと思います。
- 心配がないと言ったら嘘になりますが、ここまで来たら一陽来復を願うしかない。
「一陽来復」には、複数の意味があるということでした。
一般的にはその中でも、「悪いことが続いた後、ようやく良いことが起こる」という意味で使われることが多いです。自身の不調や友人の不幸、会社の低迷などがあった際に、「これからは良くなるだろう」という期待を込めて用います。
他には、季節の移り変わりや神社のお守りを表したりするような際にも使います。いずれの場合も、前向きでポジティブな意味を含んでいるのがこの四字熟語の特徴だと言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「一陽来復」=①陰暦の11月。冬至。②冬が去り春が来ること(新年が来ること)③悪いことが続いたあと、ようやく物事が良い方向に向かうこと。
「語源・由来」=「一陽」とは「一つの太陽の気」、「来復」とは「復活して再び戻って来ること」を表す。古代中国の『易経』から。
「類義語」=「冬至・南至・中夜・重見天日・枯木竜吟」⇔「夏至」
「英語訳」=「Winter is over and spring comes.」「Luck has finally come my way.」
「一陽来復」は、未来への明るい希望が込められた四字熟語です。意味を理解したからには、ぜひ正しく使って頂ければと思います。