「有機的」と「無機的」は、どちらも現代文によく出てくる言葉です。特にセンター試験や共通テストの評論文には必須の重要単語と言われています。
そこで今回は、「有機的」と「無機的」の意味の違いを簡単に分かりやすく解説しました。後半では、「類義語」や「英語訳」にも触れています。
有機的の意味
まずは、「有機的」の意味からです。
【有機的(ゆうきてき)】
⇒有機体のように、多くの部分が緊密な連関をもちながら全体を形作っているさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「有機的」とは「多くの部分が密接に結びついて、全体を作っているさま」という意味です。
辞書の説明の「有機体」とは「生き物」のことだと考えてください。つまり、人間や犬、猫などのことです。
「有機的」という言葉は、私たちの体を思い浮かべると分かりやすいでしょう。
私たちの体には、手足や心臓、脳など様々な部位があります。
それぞれの部位は別の位置にありますが、実は密接に関わっており、単独で機能しているということはありません。
例えば、「手足」は、脳が命令を出すことによって初めて動かすことができます。
また、「心臓」は、手足や脳など全身の臓器に血液を送る重要な仕事をしています。さらに、「脳」は、手足を動かすことによって、活性化したりしています。
このように、それぞれの部分が相互に密接に関連し合い、一人の人間のような全体を構成している様子を「有機的」と呼んでいるのです。
ポイントは、「相互に密接に関連し合っている」という点です。
「有機的」の「機」は「機械」「飛行機」などがあるように「組み立てて出来た」という意味を持っています。
したがって、それぞれのパーツが互いに結びついた時に初めて使われる言葉なのです。
無機的の意味
続いて、「無機的」の意味です。
【無機的(むきてき)】
⇒生命力の感じられないさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「無機的」とは「生きる力を感じられないさま」という意味です。簡単な例として、「ロボット」が挙げられるでしょう。
「ロボット」は、生き物ではないため、生きる力が感じられません。
また、それぞれのパーツはお互いに関連することなく完全に独立したものです。独立しているので、パーツを切り離しても全体を動かすことができます。
このように、それぞれの部分と全体の関係が切れている様子を「無機的」と呼ぶのです。別の言い方をすれば、「単調で他との関係がない様子」とも言えるでしょう。
他との関係がないことから、「ドライで冷たい様子」「人間らしくない様子」などの意味で使われることもあります。
有機的と無機的の違い
ここまでの内容を整理すると、
「有機的」=多くの部分が密接に結びついて、全体を作っているさま。
「無機的」=生きる力を感じられないさま。
ということでした。
つまり、両者の違いを簡単に言うと、相互に関連しあっているのが「有機的」、他との関係が切れているのが「無機的」ということになります。
「有機的」は生物の細胞のように互いに結び合いながら、全体を形成する様子を表した言葉です。
一方で、「無機的」は互いに結び合うことなく他との関係が切れた様子を表した言葉です。したがって、「有機的」は「無機的」の「対義語」とも言うことができます。
元々、これらの言葉は「有機物」「無機物」という化学の用語からきました。
「有機物」とは、炭水化物・タンパク質・脂肪など「生物が作り出す物質のこと」です。私たちが普段食べている食事には、これらの物質が大抵含まれています。
一方で、「無機物」とは水や空気・鉱物など「生物が作り出さない物質のこと」です。「無機物」は、自然界に存在する水や木・土などに含まれています。
これらの化学的な物質が由来となり、「有機的」「無機的」という言葉ができたということです。
有機的・無機的の類義語
次に、両者の「類義語」を紹介します。
【有機的の類義語】
- 組織的
- 構造的
- 連鎖的
- 補完的
- 生物的
- 生命的
- 骨格的
「有機的」の類義語は「お互いが結びついているさま」を表す言葉となります。上記の類義語だと、「組織的」「構造的」「連鎖的」「補完的」などがこの意味に該当します。
また、そこから派生して「生命として生きているさま」という意味の言葉で言い換えることも可能です。後半の「生物的」「生命的」「骨格的」などがこれに当てはまります。
【無機的の類義語】
- 非情
- 画一的
- 非人間的
- 無表情
- 冷たい
- 味わいのない
- 人間味のない
一方で、「無機的」の類義語は「生命力が感じられないさま」を表す言葉となります。この中では、「非人間的」が一番近い意味だと言えるでしょう。
その他には、「冷たい」「味わいのない」といった表現で言い換えることも可能です。
有機的・無機的の英語訳
続いて、それぞれの「英語訳」を紹介します。
「organic(有機的)」
「inorganic(無機的)」
「有機的」は、英語だと「organic」と言います。日本語でも有機肥料(生物由来の肥料)を使って育てた野菜のことを「オーガニック野菜」などと呼んでいます。
「organic」は元々「organ(臓器・器官)」から派生した単語で、「生命力がある」という意味も含まれているのです。
一方で、「無機的」の場合は「inorganic」と言います。頭に「in」をつけることにより、逆の意味の英単語を表すことになります。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
This product has organic quality.(この商品は有機的な品質がある。)
It’s a house with an inorganic design.(無機的なデザインの家だ。)
有機的・無機的の使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を実際の例文で紹介しておきます。
【有機的の使い方】
- 人間の体は各臓器が有機的に活動することにより構成されている。
- 会社という組織は、各部署が有機的に連携しないと成り立たないものだ。
- 経済は人と人、モノとモノが有機的に結びつくことによって動いている。
- 不動産業界は、売買、仲介、管理などの会社が有機的に結びついている。
- この家は周囲の建物と調和をする「有機的建築」が行われている。
【無機的の使い方】
- 彼女は感情のない無機的な表情をする人が苦手だ。
- 計画が失敗に終わったため、彼は無機的な声で結果を報告した。
- そのアナウンサーは無機的な声で、ニュースを読み上げた。
- 無機的なデザインの家なので、味気ない印象を与えている。
- 実験の正当性は、無機的環境も考慮しないと証明されない。
最後の「無機的環境」とは「生物以外の環境」のことです。例えば、水や土、光、温度などが挙げられます。
単に「環境」と言えば、これらのもの以外の周りに住んでいる生物も含まれることになります。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「有機的」=多くの部分が密接に結びついて、全体を作っているさま。
「無機的」=生きる力を感じられない様子。部分と全体の関係が切れているさま。
「類義語」=「組織的・構造的・生物的・生命的」「非人間的・冷たい・面白みがない」など。
「英語訳」=「organic(有機的)」「inorganic(無機的)」
どちらの言葉も評論文などではよく使われています。正しい意味を理解した上で実際の文章を読むようにしましょう。