「目につく」という慣用句をご存知でしょうか?
主な使い方しては、「目につくチラシ」「目につくポスター」などのように言います。文学作品だと、『羅生門』の作中にも登場しているようです。
ただ、この言葉をいい意味・悪い意味のどちらで使うか気になる人も多いかと思われます。そこで今回は、「目につく」の意味や語源、類義語、英語訳などを詳しく解説しました。
目につくの意味・読み方
最初に、この言葉を辞書で引いてみます。
【目につく】
①よく見える。目立つ。
②見て忘れられなくなる。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「目につく」には二つの意味があります。一つ目は、「よく見える・目立つ」という意味です。
【例】⇒「目につく色・目につくチラシ」など。
この場合は、周囲と比較して目立つような対象に使います。例えば、色であれば赤やオレンジなどの目立つ色、チラシであれば色鮮やかでパッと見て分かりやすいようなチラシなどです。
そして二つ目は、「見て忘れられなくなる」という意味です。
【例】⇒「目に付く光景。目につくシーン。」など。
この意味の場合は、見たものの形やその場の光景などが、目にしみついて忘れられないような時に使います。例えば、何年経ってもよく覚えているような美しい風景だったり、印象深い映画のワンシーンといったものです。
なお、「目につく」は漢字だと「目に付く」と書きます。「目に着く」とは書かないので注意してください。
「目に付く」⇒「正」 「目に着く」⇒「誤」
目につくの語源・由来
次に、「目につく」の語源を確認していきましょう。まず「目」ですが、「目」には下記のように様々な意味があります。
①物を見る働きをする器官。
②物を見るときの目つき。まなざし。
③物を見る能力。視力。
④見ること。見えること。
⑤注意して見ること。注目。
⑥見分ける力。洞察力。
⑦見たときの印象。外観。
⑧その者が出会ったありさま。体験。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
この中でも今回は、④の意味として使われています。すなわち、「見ること・見えること」という意味です。
「見る」というと、何となく自分から見るようなイメージですが、ここでの「見る」は能動的な行為に限定されるわけではありません。「自然に見えてくる」「勝手に視界に入ってくる」のような受け身のような意味も含まれています。
そして、「つく」ですがこれはすでに説明したように漢字だと「付く」と書きます。「付く」には「くっつく」「加わる」など様々な意味がありますが、ここでは「働きかける・作用する」という意味で使われています。つまり、「意識や感覚、知覚などに働きかける」ということです。
以上の事から考えますと、「目につく」の原義は「見ることに働きかける」となります。
体中の意識が見ることに働きかければ、当然、人の視界には何か目立つものが入ってくることになります。転じて、「よく見える・見て忘れられなくなる」などの意味になったということです。
目につくの類義語
続いて、「目につく」の類義語を紹介します。
「目につく」は、多くの慣用句で言い換えることができます。この中でも特に、「目に入る」「目に留(と)まる」などは比較的意味が近い言葉だと言えます。
ただ、どの類義語も「忘れられない」という意味までは含んでいません。したがって、全く同じ意味の言葉、すなわち同義語と呼ばれる言葉は存在しないと言っていいでしょう。
他には、「目」が「鼻」になった慣用句で「鼻につく」があります。「鼻につく」とは「人の振る舞いなどがうっとうしく感じられる」という意味です。
こちらは主に、自慢をしたり相手を見下したりするような性格の悪い人を対象とします。「目」が「鼻」に変わるだけで、大きく意味が変わってくるので注意してください。
目につくの英語訳
「目につく」は、英語だと次のように言います。
①「catch one’s eye(目につく・目に留まる)」
②「catch one’s attention(目につく・目に留まる)」
それぞれを直訳すると、①は「目を捕まえる」、②は「注意を捕まえる」という意味です。英語では「よく見える」「目立つ」などの意味を持つ単語はいくつかあります。
例を挙げますと、「conspicuous(目立った・はっきり見える)」、「outstanding(突き出た・傑出した)」といった単語です。ただ、これらの英単語は形式的な場面で使うことが多いため、実際には「catch」を使った方が相手には伝わりやすいでしょう。
例文だと、それぞれ以下のような言い方となります。
This design won’t catch his eyes.(このデザインだと彼の目には留まらないでしょう。)
It will surely catch people’s attention.(それは確実に人の目につくでしょう。)
目につくの使い方・例文
最後に、「目につく」の使い方を例文で紹介しておきます。
- あのビルは周囲の建物より一段と高いので、目に付く存在である。
- 最近、子供たちのいたずらが目に付くようになった。注意しとかないと。
- 目につく広告に変えてから、あっという間に反響が来るようになった。
- 忘れないように目に付くところにちゃんと印を書いておきなさい。
- 昨日見たホラー映画は衝撃的だった。今でも目に付いて離れないよ。
- 目に付くような素晴らしい絶景だ。これは写真に残しておこう。
前半の1~4が「目立つ」という意味です。一方で、後半の5~6が「忘れられない」という意味になります。
「目に付く」は、どちらの意味でも使うことが可能ですが、一般的には前者の「目立つ」という意味で使われることの方が多いです。
なお、この慣用句自体にはいい意味も悪い意味もどちらも含まれていません。なぜなら、「目につく」は、単に「見る事・見える事」に焦点を当てた慣用句だからです。
ただし、他の言葉を合わせて使うことにより、悪い意味として使うことは可能です。例えば、例文2のように「いたずら」という言葉を入れるような場合です。
もしも単独で悪い意味として使いたい場合は、「目に余る」「目に触る」など別の慣用句を使うようにしてください。「目に余る」とは「程度がひどくて黙って見てられない様子」、「目に触る」とは「見てて不愉快になる様子」という意味です。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「目につく」=①「よく見える・目立つ」②「見て忘れられなくなる」
「語源・由来」=「見ること」に「働きかけること」から。
「類義語」=「目に入る・目に触れる・目に留まる・目を引く・目を奪う」
「英語訳」=「catch one’s eye」「catch one’s attention」
「目に付く」は複数の意味を持っていますが、普段の文章でもよく使われています。語源を理解したからには、ぜひ正しい意味として使って頂ければと思います。