「三千世界」という四字熟語をご存知でしょうか?
漢字だけを読むと、壮大なイメージを想像できるかと思われます。その印象通り、「三千世界」は非常に大きな意味を持った言葉です。
本記事では、「三千世界」の意味や由来、類語・英語訳などを詳しく解説しました。
三千世界の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【三千世界(さんぜんせかい)】
⇒この世のあらゆるものすべて。広漠とした世界のどこもかしこもすべて。広く世間一般をさす場合もある。
出典:学研 四字熟語辞典
「三千世界」は「さんぜんせかい」と読みます。
意味は、「この世のあらゆるものすべて・世間一般」を表したものです。一言で言えば、「全宇宙」のことだと考えても構いません。
「宇宙」は人間の想像では分からないほど無限の空間です。明確な定義を出すことはできませんが、この世は宇宙によって成り立っているのは間違いありません。
その宇宙という広大な概念を表した言葉が、「三千世界」ということになります。
「三千世界」という四字熟語は、人気漫画「「ONE PIECE」(ワンピース)」にも登場しています。作中では、ロロノア・ゾロというキャラクターがミホークという剣士に使った技ということで一躍有名になりました。
※【ワンピース】⇒『週刊少年ジャンプ』にて連載されている尾田栄一郎氏による少年漫画。ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を巡る海洋冒険ロマン。
三千世界の語源・由来
「三千世界」は、仏教を由来とした四字熟語です。
仏教では、「三千大千世界(さんぜんだいせんせかい)」という言葉があります。これを短く省略した言葉が「三千世界」なのです。
では「三千世界」とは一体何かと言いますと、世界をそれぞれ区分けしたものの総称です。仏教では、「小千世界」「中千世界」「大千世界」の3つが存在すると考えられています。
「小千世界(しょうせんせかい)」⇒一世界が1000個集まったもの。
「中千世界(ちゅうせんせかい)」⇒小千世界が1000個集まったもの。
「大千世界(だいせんせかい)」⇒中千世界が1000個集まったもの
つまり、上記3つを合わせたものが「三千世界」ということです。
この世の中は、須弥山(しゅみせん)という山を中心にその周りに四大州があるとされています。さらにその周りに九山八海(くせんはっかい)があるとされ、これを持って一つの小世界があると考えられています。
そして、この小千世界を1000個集めたものが中千世界と呼ばれ、さらに中千世界を1000個集めたものが大千世界だと言われています。この小・中・大の3つの世界を合わせたものが「三千世界」と呼ばれているのです。
なお、「三千世界」の「三千」は厳密には3000の世界があるというわけではりません。
ここでは、「1000の3乗(1000×1000×1000)」、すなわち「10億の世界」を表しています。つまり、「1000の3乗=10億個」の世界が集まった空間のことを「三千世界」と名付けているのです。
以上の事から考えますと、「三千世界」の元々の意味は非常に広大な空間を表していたことが分かるかと思います。
この一つ一つの世界には、必ず一人の仏様がいるとも言われています。そして、各々の仏様はそれぞれの世界で私たちに教化を行っているのです。
三千世界の類義語
続いて、「三千世界」の「類義語」をご紹介します。
四字熟語では、「三千世界」と全く同じ意味の言葉(同義語)と呼べるようなものはありません。
基本的には「世の中にある全てのもの」「宇宙に存在する全てのもの」といった意味であれば類義語となります。さらにそこから派生して、「世間」「世俗」「社会」などの言葉も広い意味では類義語と呼べるでしょう。
三千世界の英語訳
「三千世界」は、英語だと次のように言います。
「the whole world(世界全体)」
「the universe(宇宙)」
英語圏ではキリスト教文化が主流ですので、仏教文化はなじみが薄いです。そのため、英語では「三千世界」のことを、「world(世界)」や「universe(宇宙)」とシンプルに表すことが多いです。
例文だと、それぞれ以下のような言い方となります。
The whole world has its use.(世界全体で使い道のないものはない。)
We can’t know the universe.(私たちは宇宙のすべてを知れるわけではない。)
三千世界の使い方・例文
最後に、「三千世界」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 仏様は三千世界のすべてを見通している存在だと言える。
- いつの時代においても、人々は三千世界の中で生きてきた。
- もしも三千世界の中で一人になれば、あなたは無力になるに違いない。
- 彼のような稀有な人こそ、三千世界において唯一無二の存在であろう。
- 三千世界のどこを探しても出会わないような希少な植物を発見した。
- 彼のような優しい人間は、三千世界のどこを探してもいないだろう。
- 「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」とは、高杉晋作が唄ったとされる都々逸(どどいつ)の歌詞である。
「三千世界」は、元々仏教の世界から作られた言葉です。したがって、使い方としては必然的に仏教的な要素が含まれる場面が中心となります。
ただし、必ずしも仏教に関する意味が含まれるとは限りません。例えば、上記の例文だと「5」が該当します。
このように、「世間」や「世の中」といった意味で代用できるような日常的な場面で使うことも可能です。「三千世界」は、原則的に仏教の世界観を表した四字熟語ですが、すでに説明したように現在では漫画や小説などでも使われています。
そのため、状況によっては一般的な場面で使われることもある四字熟語ということになります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「三千世界」=この世のあらゆるものすべて・世間一般・全宇宙。
「語源・由来」=仏教用語、「三千大千世界」を略した言葉。(小・中・大3つの世界の総称)
「類義語」=「有象無象・天地万物・一切合切・所事万端・森羅万象」
「英語訳」=「the whole world」「the universe」
現代は科学が発達した時代なので、宇宙についてもだいぶ解明されてきました。しかし、「仏教」という目に見えない世界が存在する以上、「三千世界」という四字熟語は今後も使われ続けることでしょう。