余裕綽々 語源 使い方 例文類義語 対義語

「余裕綽々」という四字熟語をご存知でしょうか?

「余裕」という言葉はよく聞きますが、「綽々」に関しては普段はあまり聞きません。実際にこの言葉の起源や歴史が気になるという人も多いと思われます。

そこで本記事では、「余裕綽々」の意味や読み方、由来・対義語などを含め詳しく解説しました。

余裕綽々の意味・読み方

 

最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。

【余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)】

落ち着いた様子で悠然・泰然と構えているさま、大いに余裕を感じさせるさま、などを意味する表現。

出典:実用日本語表現辞典

余裕綽々」は「よゆうしゃくしゃく」と読みます。

意味は「落ち着いていて、悠然・泰然と構えているさま・大いに余裕を感じさせる様子」などを表したものです。

「悠然(ゆうぜん)」とは「物事に動じず、ゆったりと落ち着いているさま」、「泰然(たいぜん)」とは「落ち着いていて、物事に驚かないさま」を表します。つまり、「物事に動じずに落ち着いている様子のこと」を「余裕綽々」と呼ぶわけです。

分かりやすい例で説明しますと、例えば「大事な試験の前日でも、落ち着き払っている人」、「スポーツの決勝戦でも、余裕を感じさせる人」などは「余裕綽々」と言うことができます。

「余裕綽々」とはこのように、本来なら慌てる状況・苦労する状況にも関わらず、余裕を感じさせる人に使われる四字熟語です。

なお、「余裕綽々」は「余裕綽綽」と書く場合もあります。どちらを使っても意味自体は同じですが、一般的には後ろに「々」を付けることの方が多いです。

余裕綽々の語源・由来

 

「余裕綽々」は「余裕」と「綽々」の二語が合わさってできた言葉です。まず、「余裕」とは「ゆとりがある様子」を表します。

現在でも「時間に余裕がある」「金に余裕がある」などのように、「余裕」は何かに対して「余りがある」という意味で使われています。この事から、「心にゆとりがあること」を「余裕」と言うわけです。

そして、「綽々」は「ゆったりと落ち着いている様子」を表す言葉です。「綽」は見慣れない漢字ですが、元々は「綽(ゆる)やか」と読む漢字でした。そのため、現在では「あせらずにゆっくりしている様子」という意味で使われています。

以上の事から、「余裕綽々」は「ゆとりがある様子」+「ゆったりと落ちている様子」という意味から成る言葉なのが分かります。

比較しても分かるように、どちらも似たような意味です。似たような意味を持つ語を合わせることにより、余裕があることを強調している四字熟語ということです。

なお、「余裕綽々」の由来は中国戦国時代の思想書『孟子(もうし)』から来ています。『孟子』の「公孫丑(こうそんちゅう)」には、以下のような記述があります。

「豈(あ)に綽綽然として余裕有らざらんや」

これを簡単に訳すと、「私の進退は余裕綽綽である」という訳になります。つまり、元々の起源としては「人の進退」に対して使われていた言葉ということです。その後に上記の一文が日本に伝わり、様々な場面で使われるようになったのがこの四字熟語ということになります。

余裕綽々の類義語

余裕綽々 類義語 言い換え 対義語

続いて、「余裕綽々」の「類義語」をご紹介します。

泰然自若(たいぜんじじゃく)】⇒落ち着いており、物事に動じない様子。「泰然」は「落ち着いて動じないさま」、「自若」は「何に対しても平常心でいること」を表す。
従容自若(しょうようじじゃく)】⇒穏やかで、落ち着いている様子。「従容」は「ゆったりと落ち着いているさま」という意味。
神色自若(しんしょくじじゃく)】⇒顔色一つ変えず、平然と落ち着いている様子。「神色」は「精神と顔色。精神状態を表す顔色」という意味。
言笑自若(げんしょうじじゃく)】⇒どのようなことがあっても、平然としている様子。「言笑」は「しゃべったり笑ったりすること」を表す。
冷静沈着(れいせいちんちゃく)】⇒冷静で落ち着いている様子。「冷静」は「感情に左右されず、落ち着いている様子」、「沈着」は「落ち着いていて、物事に動じないさま」を表す。

「余裕綽々」を言い換えた語はいくつかありますが、「同義語」というのはありません。基本的にはどれも「物事に動じない様子・落ち着いている様子」を表した言葉となります。

この中でも「泰然自若」はよく使われる四字熟語です。「泰然自若」は「泰然」と「自若」が合わさってできた言葉で、どちらの語も「落ち着いている様子」を表す言葉です。

そのため、「余裕綽々」と似たような場面で使われますが、実際にはその使い方は多少異なります。「余裕綽々」は良い意味としても悪い意味としても使いますが、「泰然自若」は原則良い意味としてしか使いません。この点が両者の違いです。

余裕綽々の対義語

 

逆に、「対義語」としては次のような言葉が挙げられます。

右往左往(うおうさおう)】⇒混乱してうろたえる様子。右へ行ったり左へ行ったりすることから。
周章狼狽(しゅうしょうろうばい)】⇒非常にあわてうろたえること。「周章」と「狼狽」、ともに「あわてる」という意味。
油断大敵(ゆだんたいてき)】⇒気を緩めていると物事は失敗するので、気を付けるべきである、という戒めの言葉。

「対義語」の場合は、「余裕がない様子」すなわち「あわてる様子やうろたえる様子」を表した言葉となります。そこから派生して、「余裕がありすぎるのもよくない」という意味で「油断大敵」なども反対語に含まれます。

余裕綽々の英語訳

 

「余裕綽々」は、英語だと次のような言い方があります。

①「calm and composed(落ち着いて沈着な)」

②「with composure(落ち着きがある)」

③「broad-minded(心の広い・寛大な)」

「落ち着きさ」を表す英単語は多くありますが、最もよく使われるのが「calm」です。また、少しニュアンスが異なりますが、「冷静沈着な」という意味では「composed」も使えます。この2つを単体で使ったり合わせて使ったりすることで、「落ち着いている様子」を表すのが一般的です。

さらに、別の角度から言うと、「余裕がある」ということは「心に余裕があること」でもあります。そのため、③のように「broad-minded(広い心を持った)」などの表現も使えます。

例文だと、それぞれ次のような言い方です。

He is calm and composed.(彼は落ち着いていて沈着である。)

She talked the story with composure.(彼女は落ち着いてその話を語った。)

He is a broad-minded person.(彼は心の広い人である。)

余裕綽々の使い方・例文

 

最後に、「余裕綽々」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 皆が慌てふためく中、部長だけは余裕綽々だったのはさすがだ。
  2. 初めてのプレゼンなのに彼は余裕綽々としているね。頼もしいよ。
  3. 球技が得意な彼女にとって、球を投げることなど余裕綽々であった。
  4. 皆がボーダーラインの中、彼は余裕綽々で大学に合格したようだ。
  5. 緊急事態だったが、彼女の余裕綽々とした行動が部下を安心させた。
  6. ここまで余裕綽々な人は見たことないね。逆に大丈夫なのかな?
  7. あまりに余裕綽々な彼の態度に、周囲の人間はいら立っていた。

 

上記のように、「余裕綽々」は様々な場面で使うことができます。基本的には、物事に対して余裕を感じさせる様子なので良い意味として使われることが多いです。

ただし、場合によっては否定的な使い方をする場合もあります。例えば、最後の7の例文です。この場合は、彼の余裕綽々な態度が周囲の人間をいら立たせる文となっています。

何事も度が過ぎると、イメージが悪くなります。「余裕綽々」も同じで、あまりに余裕すぎる態度だと周囲の人間のしゃくにさわってしまうこともあります。この事も念頭に入れた上で、「余裕綽々」という言葉を使うようにしてみてください。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

余裕綽々」=落ち着いていて、悠然・泰然と構えているさま・大いに余裕を感じさせる様子。

語源・由来」=「ゆとりがある様子」+「ゆったりと落ちている様子」『孟子』の「公孫丑」

類義語」=「泰然自若・従容自若・神色自若・言笑自若・冷静沈着」

対義語」=「右往左往・周章狼狽・油断大敵」

英語訳」=「calm and composed」「with composure」「broad-minded」

日々生活していると、余裕がある人を目にする機会もあるかと思います。そんな時は「余裕綽々」という四字熟語を使ってみてはどうでしょうか?