「牛飲馬食」という四字熟語を聞いたことがあるでしょうか?元々は日本ではなく中国の故事を由来とする言葉です。
ただ、そもそもなぜ「牛」や「馬」を使うのかといった疑問があります。また、似たような語である「鯨飲馬食」や「暴飲暴食」との違いも気になる所です。
そこで本記事では、「牛飲馬食」の意味や語源、読み方、類義語などを含めなるべく簡単に解説しました。
牛飲馬食の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【牛飲馬食(ぎゅういんばしょく)】
⇒牛が水を飲み馬がものを食べるように、大いに飲み食いすること。
出典: 三省堂 大辞林
「牛飲馬食」は「ぎゅういんばしょく」と読みます。
意味は「牛が水を飲み馬がものを食べるように、大いに飲み食いすること」を表したものです。
例えば、焼き肉食べ放題の店にいき、大いに飲み食いをすることは「牛飲馬食」だと言えます。また、バイキングに行って物凄い量の食事を食べたり飲んだりすることも同じく「牛飲馬食」です。
つまり、常識では考えられないほど並外れた量の飲み食いをする行為を「牛飲馬食」と呼ぶわけです。
「牛飲馬食」は、文字通り「牛が水を飲むこと」と「馬が草を食べること」を表しています。
驚くべきことに、牛は一日に100キロもの水を飲み、馬は一日に15キロ以上もの草を食べるそうです。つまり、彼らは起きている時間のほとんどを膨大な飲食に費やしていることになります。
この事から、たくさん食べたり飲んだりすることの例えを「牛飲馬食」と言うようになったわけです。野生動物のようにムシャムシャと飲み食いする姿を表したのがこの四字熟語の語源ということになります。
牛飲馬食の由来とは
「牛飲馬食」は「牛飲」と「馬食」の二語から成る四字熟語です。元々これらの言葉は中国では別々の語として使われており、後に両者を組み合わせて用いるようになりました。
どちらも中国前漢時代の歴史家である司馬遷の『史記』が由来となっています。
まず、「牛飲」ですがこれは『史記』の中の『殷本紀(いんほんぎ)』の中に登場します。
上記の「牛飲」は、「牛のように身をかがめて地面に顔を近づけて飲む」という意味ですが、後に「牛のように大量に飲む」という意味に転じていきました。
そして、もう一方の「馬食」は、『史記』の中の『范雎蔡沢列伝(はんしょさいたくれつでん)』の中に登場します。
意味は「須賈を堂下に座らせ、前に芻(まぐさ)と豆を置き、馬のように食わせながら責めて言った」というものです。
ここでの「馬食」は、「馬のように口を食器に付けさせて食べさせる」という懲罰的な意味で使われています。転じて、「馬のように大量に食べる」という意味に変化したことになります。
人間にとって牛や馬は、昔から家畜として飼育されてきた身近な動物でした。言い換えれば、人々は牛や馬と共に生活してきたということです。だからこそ、彼らの様子を人に見立てた「牛飲馬食」という四字熟語が生まれたとも言えます。
牛飲馬食の類義語
続いて、「牛飲馬食」の「類義語」を紹介します。
「牛飲馬食」を言い換えた語はいくつかありますが、「同義語」というのはありません。この中だと、「鯨飲馬食」が意味としては最も近いと言えます。
「鯨飲馬食」は漢字を見てもわかるように、牛の字が鯨(くじら)に変わっています。この言葉は、牛よりも大きくてたくさん食べる鯨を表現しているので、「牛飲馬食」よりもさらに意味が強調された言葉となっています。すなわち、「牛飲馬食」では表現しきれないほど大量に食べたり飲んだりする場面で使うということです。
その他の四字熟語に関しては、健康に悪影響が出る意味合いを含ませるときに使います。例えば、「暴飲暴食」は食べすぎや飲みすぎのせいで体を壊し、健康を害するというネガティブな場面で使うのが適しています。
一方で、「牛飲馬食」や「鯨飲馬食」はネガティブな要素が含まれる四字熟語ではありません。単にその人がたくさん飲み食いする様子を表す意味として使われます。
牛飲馬食の英語訳
「牛飲馬食」を英語にすると次の二つの言い方があります。
「heavy eating and drinking(大量に食べたり飲んだりすること)」
「gorging and swilling (がつがつ食べたりがぶ飲みしたりすること)」
「heavy」は「多い・たくさん・大量」などを表す形容詞です。それを「eating」や「drinking」という名詞と合わせることで、たくさん食べたり飲んだりすることを表現できます。
また、「gorging」は「がつがつ食べることや暴食」、 「swilling」は「一気に飲んだりがぶ飲みしたりすること」を意味を表します。
例文だと、次のような言い方です。
She stopped heavy eating and drinking.(彼女は食べ過ぎや飲み過ぎを止めた。)
He finishes off gorging and swilling.(彼はたっぷり飲食をして1日を終える。)
牛飲馬食の使い方・例文
最後に、「牛飲馬食」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 昨日はひたすら牛飲馬食をして、久しぶりにストレスを発散した。
- お昼に牛飲馬食したので、もう晩ごはんを食べるのはやめておきます。
- 若い頃に比べると、もうむやみやたらと牛飲馬食はできなくなったよ。
- 先輩に奢ってもらえるのなら、今日は牛飲馬食してもよいと思った。
- 体型に似合わず牛飲馬食ぶりを見せる彼に、周囲は驚きを隠せなかった。
- 大好物の焼き肉を目の前にして、子どもたちは牛飲馬食な様子を見せた。
「牛飲馬食」は食事に関する四字熟語なので、様々な場面で使うことが可能です。学校や仕事、プライベートなど場面を問わず使うことができます。
いずれも個人もしくは集団が「たくさん食べること・たくさん飲むこと」という点では共通しています。
ただ、純粋にたくさん食べたり飲んだりする様子を表している言葉なので、ネガティブな要素は含まれていないという点は注意する必要があります。ネガティブな要素を伝える時は、先述したように「暴飲暴食」の方を使うようにします。
まとめ
以上、今回のまとめとなります。
「牛飲馬食」=牛や馬のようにたくさん飲んだり食べたりすること。
「語源・由来」=牛が大量の水を飲み、馬が大量の草を食べる様子から。司馬遷の『史記』。
「類義語」=「鯨飲馬食・暴飲暴食・爛腸之食・痛飲大食」
「英語訳」=「heavy eating and drinking」「gorging and swilling」
「牛飲馬食」は非常に使いやすい四字熟語であることが分かって頂けたかと思います。ぜひ新たな表現方法の一つとして文章の中で使ってみてください。