「自体」と「事態」は、どちらも「じたい」と読む漢字です。「考え方自体を改める」「事態が収束する」
このようによく使われている言葉ですが、両者は一体何が違うのでしょうか?今回は「自体」の「事態」について詳しく解説しました。
自体の意味
まず、「自体」の方の意味を調べると、次のように書かれています。
【自体(じたい)】
⇒そのもの本来の性質。それ自身。地体。多く名詞の下に付いてその意を強める。
出典:三省堂 大辞林
「自体」とは、簡単に言うと「それ自身・そのもの自身」という意味です。
例えば、「肉自体は好きだが、カレーは好きじゃない。」などのように使います。この場合は、「肉そのものは好きだけども、カレーは苦手」という意味です。
「自体」は、「人やモノ・物事」など幅広い対象に使います。また、原則として名詞の後につく言葉だと考えてください。
- 「考え方自体」
- 「あの人自体」
- 「スマホ自体」
つまり、名詞の後に続き、その名詞の性質を伝えるような時に「自体」を使うわけです。
なお、辞書の説明には「自体」=「地体」とも書かれています。「地体(じたい)」とは「モノ本来の性質・本質」という意味です。こちらはあまり使う言葉ではありませんが、覚えておいて損はないでしょう。
事態の意味
続いて、「事態」の意味です。
【事態(じたい)】
⇒事のありさま。成り行き。多く、深刻で好ましくない状態をいう。
出典:三省堂 大辞林
「事態」とは「物事の様子・成行き」という意味です。例えば、以下のように使います。
- 事態が収束する。
- 事態が収まる。
- 事態が急変する。
「事態」は、「状況」や「状態」など周りの様子も含めた対象に使うのが特徴です。その中でも特に、悪い状態に対して使います。
具体的には、「人間」であれば「ケガや病気」、「会社」であれば「経営不振」、「自然現象」ならば「大雨や台風」といったことです。
このように、「事態」とは何かしら良くない状態にある時に使われる言葉となります。
自体と事態の違い
ここまでの内容を整理すると、
「自体」=それ自身・そのもの自身。
「事態」=物事の様子・成行き。(特に好ましくない状態。)
ということでした。
両者の違いを簡単に言うなら、「自体」は「性質やあり方」を表し、「事態」は「状況や状態」を表す、となります。
「自体」は、対象そのものが持っている性質のことです。例えば、「肉」であれば「やわらかい」、「人」であれば「短気・温和」などの性質を指します。この時に、対象以外の性質は含まないのがポイントです。
一方で、「事態」の方は「対象の状況や状態」を指します。「状況」や「状態」というのは、そのものだけではなく周りの様子なども含めた広い言葉です。したがって、こちらは対象の周囲も含めた様子という意味になるのです。
さらに、「事態」の「事」という字は「事件」や「事故」などのように悪い出来事に対して使われています。そのため、「事態」も同様に好ましくない状況に対して使うのです。
まとめると、
「自体」=そのもの自身の「性質・あり方」を指す。
「事態」=周囲も含めた対象の「悪い状況・状態」を指す。
となります。
ところで、「自体」とよく似た言葉で「自身」があります。これは、「自分自身」「彼女自身」「自身の気持ち」などの使い方があります。
意味としては「自体」とほぼ同じですが、「自身」の方が「モノではなく人に対して使われる」という点が若干異なります。一方で、「自体」の方は人というよりはモノや物事に対して使われます。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で確認しておきましょう。
【自体の使い方】
- 問題自体の難易度は、それほど高くはないようだ。
- 体を動かすこと自体、久しぶりのことなので疲れました。
- 作品の内容自体に、疑問を感じる人がいたのは事実だ。
- 計画自体が、台無しになってしまった。非常に残念だ。
- 卵一つ一つの値段自体は、それほど高いものではない。
【事態の使い方】
- 人間の真価は、非常事態になったときに発揮される。
- 大雨と強風が重なり、事態はどんどん悪化していった。
- どうやら彼は最悪の事態に直面してしまったようだ。
- 不測の事態に備えて、しっかりと準備しておくつもりです。
- 事態対処法命令が、政令によって出されることになった。
「自体」は「そのもの」と言い換えられることが多いです。一方で、「事態」の方は「出来事」と言い換えられる場合が多いです。迷った場合は、この2つを当てはめてみてしっくりくる方を選択するのもよいでしょう。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「自体」=それ自身・そのもの自身。
「事態」=(周囲も含めた)物事の様子・成行き。(特に好ましくない状態。)
「違い」⇒「自体」は「そのもの自身の性質やあり方」を指し、「事態」は「周囲も含めた対象の悪い状況・状態」を指す。
どちらもよく使われており、混同しやすい言葉です。この記事をきっかけに、ぜひ使い分けできるようになればと思います。