侵入 浸入 進入 違い 使い分け

「しんにゅう」と漢字で書く場合、いくつかの表記の仕方があります。

侵入」「浸入」「進入

どれも漢字検定や大学受験などでよく出題されています。ただ、実際には間違える人が非常に多いようです。

そこで本記事では、「しんにゅう」の違いについて詳しく解説しました。

侵入の意味・使い方

 

まずは、「侵入」の意味からです。

【侵入(しんにゅう)】

他の領分を侵して強引に入り込むこと。「賊が侵入する」「不法侵入」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

侵入」とは「他の領分を冒して強引に入り込むこと」です。

自分の領域ではない場所に強制的に入っていくことなので、原則として否定的な意味として使います。

  • 泥棒が家へ不法侵入する。
  • ゴキブリが室内に侵入する。
  • 隣の木の枝が自宅へ侵入してきた。

「侵入」の「侵」という字は、「侵(おか)す」とも読める漢字です。「侵す」とは、他者の権利を不当に侵害したり他人の土地に不法に入り込んだりといった意味です。

「侵略」「侵攻」などの熟語があるように、「侵」には「奪い取る」「不当に入り込む」などの意味があります。したがって、他の領域に許可なく強引に入り込むようなときに「侵入」を使うわけです。

浸入の意味・使い方

 

次に、「浸入」の意味です。

【浸入(しんにゅう)】

水などが入り込むこと。「船体の割れ目から海水が浸入する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

浸入」とは「水などが入り込むこと」を意味します。「浸入」は主に、海や川、雨などの水が入るべきでない所に入るようなときに使います。

  • 海水が小屋の中まで浸入してきた。
  • 豪雨で河川の水が家まで浸入した。
  • 雨水が車の中まで浸入してきた。

先ほど紹介した「侵入」も「入るべきでない所に入る」という意味は持っています。

しかし、「浸入」の場合は、部首が「海」や「池」などと同じ「氵(さんずい)」なので、「水が入り込む」という特徴があります。

「浸」という字は、「浸水」「浸透」などの熟語があるように、水の意味を持った言葉となります。そのため、「浸入」に関しても「水が入り込んでいく」という意味になるのです。

進入の意味・使い方

 

続いて、「進入」の意味です。

【進入(しんにゅう)】

人や乗り物などがその場所へ進み入ること。「列車が駅の構内に進入する」「車両進入禁止」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

進入」とは「人や乗り物などが、ある場所へ入っていくこと」です。

「進入」は文字通り「進んで入る」と書くので、何かが動きながら進んで入って行くようなときに使います。そして、このときに入る場所というのは、「入って当然の場所」や「入るべき場所」を対象とします。

  • 車が交差点に進入する。
  • 電車が駅の構内へ進入する。
  • 関係者以外、進入禁止。

「進入」は、「侵入」や「浸入」とは異なり、相手に被害を与えたり困らせたりする行為ではありません。なぜなら、入って当たり前の所にしか入らないからです。

このように、本来入ってもおかしくないものが入ることを「進入」と言うわけです。

侵入・浸入・進入の違い

侵入 浸入 進入 違い

以上の事から、それぞれの意味は次のように定義することができます。

侵入」=人や動物、植物などの生き物が(強引に)入り込むこと。

浸入」=水などの液体が(入るべきでない所に)入り込むこと。

進入」=人や車などが(入ってもおかしくない所に)入ること。

「侵入」と「浸入」は、どちらも無理矢理入り込むことです。ただ、「侵入」の方は人や動物などの生き物が強引に入り込むことを意味します。

対して、「浸入」の方は生き物ではなく液体が入り込むという特徴があります。これは部首が「水」を表す「サンズイ」であることからも分かるかと思います。

そして、最後の「進入」に関しては「強引に入り込む」「無理矢理入り込む」などの意味はありません。「進入」は入ってもおかしくない所、すなわち「入って当然とも言えるべき所」に入るときに使います。

しんにゅうの使い分け・問題

 

では、最後にそれぞれの使い方を問題で確認しておきましょう。以下の「シンニュウ」はどの漢字を使えばよいでしょうか?

  1. 海賊船が領海内にシンニュウしてきた。
  2. 飛行機が滑走路にシンニュウする。
  3. 泥水が建物の中にシンニュウしてきた。
  4. 台風で家の中まで水がシンニュウしてきた。
  5. 何者かが部屋へシンニュウした痕跡があった。
  6. 道路にはシンニュウ禁止の看板が掲げられていた。
  7. 夏の夜に窓を開けると、蚊がシンニュウしてくる。
  8. 船体の傷から徐々に海水がシンニュウしてきた。

 

正解は、

1.侵入 2.進入 3.浸入 4.浸入 5.侵入 6.進入 7.侵入 8.浸入

となります。

実際の入試などでは、「侵入」と「浸入」の違いが特によく出題されます。なぜなら、この2つは意味や字面が似ていて互いを混同しやすいためです。

「侵入」は、人や生き物が相手の許可を得ずに入ってはいけない領域に入ること、対して「浸入」は自然災害や人為的被害などで水がどこかへ入り込むことだと覚えておきましょう。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

侵入」=人、動物、植物などの生き物が(強引に)入り込むこと。

浸入」=水などの液体が(入るべきでない所に)入り込むこと。

進入」=人や車などが(入ってもおかしくない所に)入ること。

使い分けのポイントは、漢字本来の意味から覚えておくことです。「侵入」は「侵略」「侵攻」などのように、不当に許可なく入って行くようなイメージ。「浸入」は「さんずい」がついているので、「水」が入って行くイメージ。「進入」は「進んで入る」と書くので物理的に進んで入り込むイメージ。このように覚えておけば違いを忘れにくいでしょう。