「余念がない」という慣用句があります。
初めて聞いた人は、「余念とは何だろう?」と疑問に思うのではないでしょうか。実際に、この「余念」の意味を分かりにくいと感じる人は非常に多いようです。
そこで今回は、「余念がない」の意味や語源などについて詳しく解説しました。後半では類語や同義語・英語訳なども紹介しています。
余念がないの意味
最初に、この言葉を辞書で引いてみます。
【余念がない(よねんがない)】
⇒あることに専心していて、他のことを考えない。没頭する。一心になっている。
出典:三省堂 大辞林
「余念がない」とは「あることに専心していて他を考えない・没頭する」などの意味を持ちます。簡単に言うと、「一つのことに集中して、他を考えない」ということです。
分かりやすい短文を紹介しますと、次のようになります。
大学教授である彼は、日々の研究に余念がない。
この場合はつまり、「彼が日々の研究以外に気を取られていない」ということです。
具体的に言いますと、遊びや娯楽などに目もくれず常に研究を繰り返したり、帰宅後の自由な時間ですらずっと研究をしたりといったことです。
このように、「余念がない」とは他の物事のことを一切考えず、その事だけに集中している様子を表す慣用句ということになります。多くは良い意味として使われます。
なお、「余念がない」は「余念が無い」「余念無い」「余念も無い」などと表記する場合もあります。漢字や言い回しがわずかに異なりますが、意味自体は同じと考えて問題ありません。
余念がないの語源・由来
「余念がない」の「余念」とは、簡単に言うと「余計な考え」という意味です。
「余」という字は「余る」などとも書くように、「余っていること・余計なこと」という意味があります。そして、「念」という字は、「念じる」「想念」などがあるように「考え・思い」を表します。
そのため、「余念」はその人の「余計な考え」を表すのです。
この「余念」を「ない」と否定することで、「余計な考えがない」=「他のことを考えない」という意味になるわけです。
人間は選択肢がたくさんあると、「あれもやりたい」「これもやりたい」と意識が分散してしまいます。
あちこちに意識が飛ぶと、当然一つ一つに向けるエネルギーは小さくなってしまいます。そうならないためにも、やるべきことを一つに決めて集中して物事に当たります。
一点集中された作業は、当然成果が上がって周りからも評価されやすくなります。したがって、「余念がない」は基本的に良い意味として使われるのです。
余念がないの類義語
続いて、「余念がない」の類義語を紹介します。
- 集中する
- 没頭する
- 夢中になる
- 必死になる
- 入れ込む
- 熱を入れる
- 熱中する
- 神経を注ぐ
- 精進する
「余念がない」の類義語はいくつかありますが、「集中する」と「没頭する」は言い換えとしては最適です。この両者に関しては「余念がない」の同義語だと考えて構いません。
また、「余念がない」はエネルギーを集中させることなので、その結果気持ちが高ぶることもあります。そのため、「熱中する」「必死になる」なども類義語と言っていいでしょう。
補足すると、似たような言葉で「予断を許さない」があります。
「予断(よだん)を許さない」とは「この後の展開がどうなるか分からない」という意味の慣用句です。主に社会情勢などに使うことが多いですが、全く意味が異なる言葉なので注意してください。
余念がないの対義語
逆に、「余念がない」の対義語としては次のような言葉が挙げられます。
- 手を抜く
- 手抜きする
- 適当にする
- いい加減にする
- 気が散る
- 雑念が生じる
- 雑念がある
- 邪推する
- 悪意に満ちた
「余念がない」は「一つのことに集中する」という意味の言葉ですので、反対語は「一つに集中しない」といった意味を持つ言葉となります。
この中だと「手を抜く」「適当にする」などは反対語としてかなり近い意味だと言えます。その他、頭の中に余計な考えがあることから「雑念がある」「邪推する」「悪意に満ちた」なども広い意味では反対語に含まれます。
余念がないの英語訳
「余念がない」は、英語だと次のように言います。
「be absorbed in(熱中する・打ち込む)」
「devote oneself to(心を入れる・身を入れる)」
「absorb」は「~を夢中にさせる」、「devote」は「~を捧げる・専心する」という意味の動詞です。ただ、両者とも単体で使うことは少なく、熟語の一部として用いられることの方が多いです。
例文だと、それぞれ以下のように言います。
He was absorbed in his reading.(彼は読書に余念がない。)
She devotes herself to her work.(彼女は自分の仕事に余念がない。)
余念がないの使い方・例文
最後に、「余念がない」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 彼は現在大学に通っており、古典文学の研究に余念がない。
- モデルという仕事は、美の追求に余念がない人達の集まりである。
- いよいよ本番が近づき、生徒たちは練習に余念がないほどであった。
- きれい好きな彼女は、暇さえあれば掃除に洗濯と余念がない人物である。
- 株式投資家の彼は情報収集に余念がない。だから成功できるのだろう。
- 今回の合宿は、みな自分磨きに余念がない人が集まってきたようだ。
- 受験生なので、夏休み中は余念なく勉強に取り組むつもりです。
「余念がない」は、その人の意識の方向性を一つに定めた言葉です。したがって、前に「~に」とつくことが多いです。
一般的には、「準備」「練習」「研究」「情報収集」など人がやるべき作業・行いなどが前にきます。その後で、「一つの物事に集中する」という意味でこの言葉を使うわけです。
また、最後の文のように「余念なく」などのように副詞的な使い方がされることもあります。この場合は、「余計な考えをせずに」という意味での用例だと考えて下さい。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「余念がない」=あることに専心していて他を考えない・没頭する
「語源・由来」=「余計な考えがない」⇒「他のことを考えない」
「類義語」=「集中する・没頭する・夢中になる必死になる・熱中する」等。
「対義語」=「手を抜く・いい加減にする・気が散る・雑念が生じる」等。
「英語訳」=「be absorbed in」「devote oneself to」
人生というのはやるべきことがたくさんあります。すべてのことに時間を注いでいたら、大変効率が悪いと言えるでしょう。そんな時は余念のない行動で一つの物事に集中してみてはどうでしょうか?