「約款」と「定款」は、会社内の決まりごとや生命保険の契約などでよく見る言葉です。また、似たような言葉で「規約」が使われることもあります。
これらの言葉は、どう使い分ければいいのでしょうか?本記事では「約款」と「定款」の違い、さらに「規約」についても解説しました。
約款の意味
まずは、「約款」の意味からです。
【約款(やっかん)】
①条約・契約などに定められている個々の条項。
②保険や運送など不特定多数の利用者との契約を処理するため、あらかじめ定型的に定められた契約条項。保険約款・運送約款など。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「約款」とは「定型的に定めた個々の契約条項」を意味します。簡単に言うと「契約上の決め事」のことです。
最も使われる例としては、「保険の約款」が挙げられるでしょう。例えば、生命保険を結ぶ際には「保険料の額」「支払う条件」「年齢の条件」など契約上の決め事があります。
そして、実際にこれらの決め事を契約後のトラブル防止のために、あらかじめ資料などにまとめて顧客に渡しておきます。このような細かい契約上の決め事を「約款」と呼ぶわけです。
「約款」は、正式には「普通取引約款」と言います。保険の契約以外だと、スマホや不動産、クレジットカードなどの契約にも約款は使われています。
いずれにせよ、契約後の事後トラブルを防ぐために「約款」が存在すると考えてください。
定款の意味
続いて、「定款」の意味です。
【定款(ていかん)】
⇒公益法人・会社・協同組合などの社団法人の目的・組織・活動などに関する根本規則。また、それを記載した書面。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「定款」とは「会社などに関する根本規則のこと」を意味します。簡単に言えば、「組織内の決め事」のことを指します。
例えば、会社を設立する時には、「会社の名称」「会社の住所」「取締役の氏名」「事業の目的」などの項目を決める必要があります。
そして、「公証人役場」という所で認証を得て会社自体の登記を行います。その結果、実際に株式会社を運営することが可能となるのです。
「定款」は、記載する事項がある程度決まっています。具体的には、以下の3つの記載事項です。
①「絶対的記載事項」②「相対的記載事項」③「任意的記載事項」
これらの項目を記載することにより、初めて会社として事業を始められることになります。
約款と定款の違い
ここまでの内容を整理すると、
「約款」=契約上の決め事。「定款」=組織内の決め事。
ということでした。
比較して分かるように、どちらも「決め事」すなわち「ルール」であることに変わりはありません。しかしながら、両者はその決め事の種類が異なります。
まず「約款」は「契約する時のルール」を意味します。したがって、「企業と個人」あるいは「企業同士」が契約を結ぶ時に初めて使われる言葉となります。
一方で、「定款」は「組織を運営するためのルール」です。したがって、こちらは会社や協同組合、公益法人などに対して使われる言葉となります。
覚え方としては、「約款」は「契約する時の条項」、「定款」は「組織で定める条項」と考えると分かりやすいでしょう。※「款」は「条項」という意味です。
「約款」は、契約などの約束事を結ぶ時にしか使いません。対して、「定款」は会社を中心に組織で定める時に使います。
規約の意味
似たような言葉で「規約」があります。
【規約(きやく)】
⇒団体内で協議して決めた規則。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「規約」とは「団体内で協議して決めた規則」を意味します。
この説明だけだと「定款」と似ていますが、「定款」は組織を運営する上で絶対になくてはならないものです。一方で、「規約」の方はなくても構いません。
「規約」は「定款」よりも細かいルールを定めたものです。
例えば、一般社団法人であれば、「入会や脱退の方法」「会費の集め方」などが該当します。これらの細かいルールは、特になくても法的には問題ありません。
したがって、「規約」がない組織も当然あるということになります。
また、「規約」と「約款」との違いですが、「約款」はお互いが契約を結ぶことが前提にあります。一方で、「規約」は必ずしも契約を結ぶとは限りません。
場合によっては、不特定多数への決め事も「規約」に含まれることになります。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【約款の使い方】
- 保険商品は、約款に基づいて締結される。
- 私鉄会社は、各自、運送約款を定めている。
- 電車に乗る時は、運送約款が適用される。
- 約款に書かれている記載事項を変更した。
- 生命保険を結ぶ際に、個々の約款を確認した。
【定款の使い方】
- 定款の一部変更を、取締役会で話し合った。
- 会社の定款を作成する仕事を任された。
- 定款は会社内における憲法とも言われる。
- 法人を設立するため、定款が作成された。
- 絶対的記載事項は、定款に記載しなければいけない。
【規約の使い方】
- マンションの管理規約に違反する。
- サービスの規約をしっかりと確認する。
- 首相は連盟規約の改定について提案した。
- 会員は以下の規約に同意する必要がある。
- 利用規約の同意をしてからダウンロードする。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「約款」=定型的に定めた個々の契約条項。
「定款」=会社や公益法人などに関する根本規則。
「規約」=団体内で協議して決めた規則。
「違い」⇒「約款」は「契約上の決め事」を指し、「定款」は「組織内の大きな決め事」を指す。「規約」は「団体内で決めた細かい規則」を指す。
「約款」は契約を結ぶ時にしか使いません。また、「定款」は会社や団体の姿・存在理由などを示したものです。「規約」に関しては、団体内のルールをさらに細かく記したものと覚えておきましょう。