和魂洋才 意味 使い方 語源 由来 英語 類語

「和魂洋才」という四字熟語を調べると、「福沢諭吉」「森鴎外」「佐久間象山」など様々な歴史上の人物が浮かび上がってきます。

実際に「和魂洋才」には、明治時代の思想が色濃く含まれています。もしも意味を理解できれば、当時の時代背景などもよく知ることができるでしょう。

本記事では、「和魂洋才」の意味や由来、使い方、類義語などを詳しく解説しました。

和魂洋才の意味・読み方

 

最初に、基本的な意味と読み方を紹介します。

【和魂洋才(わこんようさい)】

心には日本人としての大和魂をもち、西洋の学問を活用すること。日本の精神と西洋の進んだ学問を兼ね備えること。

出典: 学研 四字辞典熟語

和魂洋才」は「わこんようさい」と読みます。

意味は「日本の精神を持ちつつも、西洋の優れた部分を取り入れること」です。

主に日本人が西洋のノウハウ(やり方)を取り入れるような時に使われます。例えば、日本の寿司職人というのは素晴らしい技術を持っていますが、海外でも活躍するには西洋の知識や技術も取り入れなければいけません。

簡単なものだと、魚の種類やネタの保存方法、現地の気候といったものです。これらの西洋の知識も合わせれば、日本の寿司の技術も当然向上していきます。

そこで、「心は日本人でありながら、知識は西洋から取り入れる」という意味で海外の食文化も取り入れたとします。このような場面では、日本の精神と西洋の学問を兼ね備えているので、「和魂洋才」と言うことができるのです。

和魂洋才の語源・由来

 

「和魂洋才」は、「和魂」と「洋才」から成る四字熟語です。「和魂」は「大和の魂」、そして「洋才」は「西洋の才能」と書きます。

すわなち、「和魂洋才」の元々の意味は「大和魂でありながら、西洋の才能を取り入れること」となります。この事から、「日本固有の精神で西洋の知識を取り入れる」という意味になるわけです。

元々、「和魂洋才」という四字熟語は明治時代に西欧の文化が入ってきた時に生まれました。

当時は江戸時代の鎖国が終わった後の時代でした。それまでの日本は西洋の知識は一切使わず、独自の精神で文化を発達させてきました。

ところが、ペリー来航により日本は開国を余儀なくされます。その結果、西洋の知識や技術を受け入れざるを得ない状況になったのです。

この事から考えますと、元々の由来としては日本側が積極的に西洋を取り入れたのではなく、「やむをえず西洋文化を取り入れた」という時代背景があったことが分かります。

もしも西洋の言い分を聞かなかった場合、最悪戦争になっていた可能性もあります。ところが、「西洋の全てを受け入れる」というのは日本側のプライドも許さないでしょう。

そこで、「心だけは日本人を保つ」という意味でこの言葉を使っていたのです。酷な言い方をすると、一種の負け惜しみから生まれた言葉なのかもしれません。

なお、「和魂洋才」のモデルになった四字熟語が「和魂漢才(わこんかんさい)」だと言われています。

「和魂漢才」とは「日本の精神を持ちつつも、中国の学問を取り入れること」です。こちらは起原がもっと古く、10世紀の平安時代に生まれた言葉です。

当時の学者である菅原道真は、「大和を大事にしつつも、中国の学問を取り入れるべき」と主張しました。実際にこの四字熟語が世に広まっていたからこそ、明治時代に「和魂洋才」が誕生したとも言えます。

和魂洋才の類義語

和魂洋才 類義語 対義語

続いて、「和魂洋才」の「類義語」を紹介します。

和洋折衷(わようせっちゅう)】⇒日本風と西洋風をうまく取り合わせること。「折衷」とは「程よく調和させること」を表す。
脱亜入欧(だつあにゅうおう)】⇒欧米諸国の文化を採り入れ、近代化を進めたこと。※明治維新以降の日本の風潮を指した言葉。
神仏習合(しんぶつしゅうごう)】⇒日本古来の神と外来宗教の仏教を合わせたもの。「神」は「神道」、「仏」は「仏教」を表す。
換骨奪胎(かんこつだったい)】⇒先人の詩や文章を借用し、独自の作品にすること。「換骨」は「骨を換える」、「奪胎」は「子宮(胎児の宿る場所)を奪う」という意味。

この中では「和洋折衷」が意味としては最も近く、なおかつよく使われる四字熟語です。

「和洋折衷」を例えるのは難しいですが、身近なものだと「あんぱん」がイメージしやすいでしょう。「あんぱん」は日本のあんこを西洋由来のパンで包んだものです。

見た目は西欧だけども中身は日本の料理なので、「和洋折衷」と言う事ができます。

食べ物以外にも衣服や建物・インテリアなど西洋の技術を取り入れたものは他にも多くあります。むしろ、現代では日本の技術のみという文化は逆に珍しいと言えます。

和魂洋才の対義語

 

逆に、「和魂洋才」の「対義語」としては次のような言葉が挙げられます。

大和魂(やまとだましい)】⇒日本流の精神や知恵、才覚などを指した言葉。
純血主義(じゅんけつしゅぎ)】⇒純粋な血統・血筋を保つ考え方。

「大和魂」は儒教や仏教などの海外の思想が入ってくる前の日本人古来の伝統的な精神を示したものです。また、「純血主義」は異なった血や文化が混ざっていない考え方のことを表します。

どちらも海外の文化が入ってないことを表す言葉なので、反対語だと言えます。

その他、「対義語」に近い言葉としては「中体西用(ちゅうたいせいよう)」があります。「中体西用」とは、中国の儒学を中心とする伝統的な学問主体とし、一方で西洋の技術や文明も利用するべきであるとする考え方です。

和魂洋才の英語訳

 

「和魂洋才」は、「英語」だと次のように言います。

Japanese spirit with Western learning

一つずつ説明すると、「spirit」=「魂・心」、「western」=「西洋の」、「learning」=「知識・技術」という意味です。前置詞「with」は、ここでは「~を合わせて・含んで」などの意味で考えれば問題ありません。

例文だと、以下のように使います。

In the Meiji period, “Japanese spirit with Western learning” was born.
(明治時代に和魂洋才が生まれた。)

海外では、西洋と日本が混合した文化というのはあまりなじみがありません。そのため、英語で表現するときは両者の時代背景も付け加えて説明しておくとよいです。

和魂洋才の使い方・例文

 

最後に、「和魂洋才」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 明治時代を象徴する言葉が、和魂洋才である。
  2. 近代国家の成立は、和魂洋才があったからこそである。
  3. 鎖国の解禁により、日本は和魂洋才の思想を享受した。
  4. クリスマスやハロウィンは、和魂洋才の考えが元にある。
  5. 近代になり、日本は和魂洋才の精神で経済を発展させた。
  6. 和魂洋才を大事にして、日本人としての自尊心を守る。
  7. 森鴎外の軌跡をたどったのが、『和魂洋才の系譜』である。

 

すでに説明した通り、「和魂洋才」は「明治以降の日本の精神が強く含まれた言葉」ということでした。したがって、本来の使い方としては「日本人としての精神を堅持するような場面」で使うのが適切だと言えます。

ただし、実際には必ずしもこのような使い方をするとは限りません。

最近では、「和魂洋才」は「日本の精神と西洋の知識を調和させる」というポジティブな意味で使われることも多いです。そのため、現在では「和と洋を混合させる」という「和洋折衷」に近い意味として覚えておくのがよいでしょう。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

和魂洋才」=日本の精神を持ちつつも、西洋の優れた部分を取り入れること。

語源・由来」=「大和魂」と「西洋の才能」を合わせるため。「和魂漢才」が元。

類義語」=「和洋折衷・脱亜入欧・神仏習合・換骨奪胎」

対義語」=「大和魂・純血主義」

英語訳」=「Japanese spirit with Western learning」

「和魂洋才」は、一見すると簡単な四字熟語と思われたかもしれません。しかし、実際は日本と西洋の複雑な歴史の中で生まれた四字熟語です。この記事をきっかけに、正しい意味と使い方を覚えて頂ければと思います。