ビジネスでは、「請負」や「委任」「委託」などの言葉がよく使われます。特に会社と会社の契約が行われる際には使われる機会が多いです。
これらの言葉には、どのような違いがあるのでしょうか?今回は、「請負」と「委任」「委託」の違いについて詳しく解説しました。
請負の意味
まずは、「請負」の意味からです。
【請負(うけおい)】
①請け負うこと。依頼人と日限・報酬等を定めて仕事を引き受けること。また、その仕事。
②当事者の一方(請負人)がその仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約する契約。請負契約。
③保証すること。請け合うこと。
出典:三省堂 大辞林
「請負」とは「完成を条件に、仕事を引き受けること」を意味します。
よくある使い方が「請負契約」です。「請負契約」とは「仕事の完成を条件に、報酬を支払う契約」のことです。
例えば、A社という建築会社がいたとしましょう。A社は家を建てる仕事が主な業務ですが、全部の仕事を自社だけで行おうとすると大変効率が悪いです。そこで、B社と「5か月以内に家を完成させる」という条件で「請負契約」を結びました。
仮に、契約通りにB社がちゃんと家を完成できれば、A社はB社に報酬を払います。一方で、もしもB社が期限内に家を完成できない場合、A社はB社に報酬を払いません。このような契約を「請負契約」と呼ぶのです。
会社同士で請負契約をしたとしても、その背後には必ず顧客がいます。その顧客に対して「頑張ったけど、間に合いませんでした」などと主張しても話にならないでしょう。
そもそもが契約違反ですからね。つまり、「請負」とは仕事を完成させることが必須条件になるということです。
ここが大事なポイントだと言えます。どんなに頑張って働いても、その仕事を完成できなければ、「請負契約」としては成立しないのです。
委任の意味
続いて、「委任」の意味です。
【委任(いにん)】
①仕事などを、他人にまかせること。委託すること。
②当事者の一方(委任者)が相手方(受任者)に一定の事務の処理を委託し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「委任」とは「仕事の実行を任せること」を意味します。
例えば、弁護士に裁判の代理をしてもらうような場合に、「弁護士と委任契約を結ぶ」などのように言います。裁判などの難しい問題は、法律の専門家に任せたほうがいいです。そのため、弁護士に仕事をすべて任せるという意味で、「委任」を使うわけです。
ここで大事なのは、「委任」は必ずしも仕事の完成を条件にはしていないということです。裁判というのは、いくら頑張ったとしても敗訴してしまう場合があります。(仕事の未完成)
別の言い方をすると、「裁判の代理」は仕事の完成を約束できるようなものではないということです。しかし、このような場合でも委任契約を結んだからには、弁護士に対してちゃんと報酬を払わなくてはいけません。
そのため、「委任契約」などは一般に「依頼したことをできる限りやってください」という契約内容がほとんどです。そこには当然、仕事の完成の有無などは条件に入らないことになります。
委託の意味
最後に、「委託」の意味です。
【委託(いたく)】
①ゆだね任せること。人に頼んで代わりにやってもらうこと。
②契約などの法律行為やその他の事務処理を他人に依頼すること。
③客から取引所の取引員に注文を出すこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「委託」とは「第三者に、仕事の依頼をすること」を意味します。
この場合の「仕事」とは「幅広い種類の仕事」のことだと考えて下さい。そして、その依頼方法は「請負」か「委任」のどちらかに分かれます。
これを簡単に式で表すと、「委託」≧「請負」or「委任」となります。つまり、「委託」という大きな項目の中に「請負」と「委任」が含まれるということです。
したがって、「委託契約」という言葉だけだと「請負」なのか「委任」なのかは判断できないことになります。分かるのは、「仕事をお願いする契約」ということだけです。
請負・委任・委託の違い
ここまでの内容を整理すると、
「請負」=完成を条件に、仕事を引き受けること。
「委任」=仕事の実行を任せること。
「委託」=第三者に、仕事の依頼をすること。
ということでした。
「委託」については「仕事を依頼すること全般」という意味なので問題ないでしょう。混同しやすいのは、「請負」と「委任」です。
この二つを区別する方法は、すでに説明した通り、「仕事を完成させるかどうか」ということになります。
「請負」は、仕事を必ず完成させることが求められます。例えば、「家の完成」のような具体的な結果を要求し、その結果に対してお金を払うのです。
一方で、「委任」は、頼んだ仕事を行ってくれることが求められます。この時に、仕事の完成は必ずしも求められているわけではありません。
以上、まとめますと次のようになります。
「請負」=仕事の完成が条件で、完成した場合にお金を払う。
「委任」=仕事の実行が条件で、完成しなくてもお金は払う。
「委託」=「請負」と「委任」を含む大きな意味を持った言葉。
基本的には上記のような理解で問題ありません。
あえて付け加えるなら、「請負」は家や建物のように、「モノの完成」という仕事を引き受けます。対して、「委任」の方は弁護士による裁判などのように「人の行為」という仕事を引き受けます。
また、「請負契約」に関する契約書は2号文書となるので、原則として収入印紙が必要となります。一方で、「委任契約」は原則、収入印紙は必要ありません。ただし、契約書が7号文書に該当する場合は収入印紙が必要となります。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を実際の例文で確認しておきます。
【請負の使い方】
- そのハウスメーカーは、地元の大工さんと請負契約をしている。
- 自動車メーカーは、各部品メーカーと請負契約を結んでいる。
- 土木工事の請負業者によって、道路を新設しているようだ。
- 電気工事の請負業者がきて、エアコンの取りつけをしてくれた。
【委任の使い方】
- 病院で治療してもらうために、委任契約を結ぶ。
- 今回は弁護士と委任契約を締結することとなった。
- その建築会社は、不動産仲介会社と委任契約を結んだ。
- A社は販売においてB社と委任契約を結んでいる。
【委託の使い方】
- 化粧品の委託販売業者が、訪問してきた。
- マンションの運営を、管理会社に委託する。
- 管理会社に委託された清掃員によって、掃除が行われる。
補足すると、病院での診察行為は、全て「委任」となります。なぜなら、手術に成功しようが失敗しようが、同じ診察代を取られるからです。
また、不動産の仲介なども「委任」の代表例と言えるでしょう。建築会社は建物の建築は自社で行い、その後の販売は不動産会社に任せることが多いです。
そのため、建築会社は「必ず家を売ることが条件ではなく、できる限りの販売活動をお願いします」という意味で「委任契約」を結ぶわけです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「請負」=完成を条件に、仕事を引き受けること。
「委任」=仕事の実行を任せること。
「委託」=仕事全般の依頼をすること。
「請負」は完成を条件に報酬を払い、「委任」は未完成でも報酬を払います。「委託」に関しては、請負と委任を含んだ言葉と覚えておきましょう。