「委嘱」と「委託」
ビジネスではどちらもよく見る言葉です。
特定の相手と契約を結んだり、
業務を依頼する時によく使われていますね。
さらに似たような言葉で「嘱託」もあります。
これらの言葉は、一体どう使い分ければいいのでしょうか?
今回は「委嘱・委託・嘱託」の違いを詳しく解説しました。
さっそく、確認していきましょう。
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委嘱の意味
まずは、「委嘱」の意味からです。
【委嘱(いしょく)】
⇒一定期間、特定の仕事を他の人に任せること。委託。
[補説] 行政では、審議会・調査会などの委員に、民間人やその行政機関に属さない公務員を任じることをいう。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「委嘱」とは、
「特定の仕事を、一定期間人に任せること」を意味します。
この場合の「特定の仕事」とは、
専門的な内容を指すと考えてください。
例えば、以下のようなものです。
- 企業の監査役。
- 作詞・作曲。
- 非常勤講師。
簡単に言うと、
「普通の人ではできない仕事」ということですね。
このような専門性の高い仕事を一定期間プロに依頼することを
「委嘱」と言うのです。
また、辞書の補足に、
「民間人に行政の仕事を任せること」とありますが、
これは例えば「芸能人による一日警察署長」などが挙げられます。
よく芸能人が一日だけ警察官の手伝いをするというシーンを見るかと思います。
このように、行政(国)側が
民間人に一定期間だけ仕事を頼むことも「委嘱」と呼ぶわけです。
委託の意味
続いて、「委託」の意味です。
【委託(いたく)】
①自分の代わりを人や機関に頼みゆだねること。
②法律行為または事実行為(事務)などを他人または他の機関に依頼すること。
③取引で、客が商品仲買人または証券業者に売買を依頼すること。
出典:三省堂 大辞林
「委託」とは、
「人や機関に仕事の依頼をすること」を意味します。
例えば、以下のような使い方です。
- マンション管理を委託する。
- 機械販売を外部へ委託する。
- スタッフの増員を委託する。
「委託」は、主に①の意味として使うことがほとんどです。
ただし、まれに②のように
「法律行為などを依頼する」という意味で使う場合もあります。
この場合は、
弁護士などに仕事を頼むような時に使われます。
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委嘱と委託の違い
ここまでの内容を整理すると、
「委嘱」=特定の仕事を、一定期間人に任せること。
「委託」=人や機関に仕事の依頼をすること。
ということでした。
両者の違いを簡潔に言うと、
「委託は委嘱を含んだ言葉」だと言えるでしょう。
下記のように図で表すと、
「委託」という大きな項目の中に「委嘱」が入っているイメージです。
ここで、先ほどの辞書の説明を振り返ってみると、
「委嘱」⇒「委託」とは書かれていますが、
「委託」⇒「委嘱」とは書かれていません。
これは、「委託」の方が
大きな意味を持った言葉からですね。
「委託」の場合は、必ずしも「委嘱」とは限らないのです。
よって、「委託」の方は、人や会社・機関など
あらゆる第三者に仕事を依頼するような場合に使います。
一方で、小さい意味を持った「委嘱」は、
個人に特定の仕事を依頼するような場合に使うのです。
さらに補足すると、両者の違いは漢字にも表れています。
まず、「委託」の「託」は
「頼みにする」という意味があります。
一方で、「委嘱」の「嘱」は
右側が「属する」という意味です。
そして、お互いに共通する
「委」は「ゆだねる・まかせる」などの意味です。
ここから漢字本来の意味を考えると、
「委託」=頼み任せる。
「委嘱」=(特定の所に)属して任せる。
となります。
つまり、「委嘱」の方は、
「特定のポジションに就任してもらう」
という意味が含まれていることになります。
そのため、「委嘱」の方は一般的な仕事よりも、
専門的な仕事が中心となるわけです。
以上、まとめると、
「委嘱」=個人に専門的な仕事を頼むこと。
「委託」=人や会社に幅広い仕事を頼むこと。
となります。
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嘱託の意味
似たような言葉で、「嘱託(しょくたく)」があります。
「嘱託」の意味も確認しておきましょう。
【嘱託(しょくたく)】
①仕事を頼んで任せること。委嘱。
②正式の雇用関係や任命によらないで、ある業務に従事することを依頼すること。また、その依頼された人やその身分。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「嘱託」とは、
「仕事を頼んで任せること」を言います。
意味としては、「委嘱」とほぼ同じと考えて問題ありません。
ただし、「嘱託」の方はどちらかというと
②の意味で使われることが多いです。
この場合は、「嘱託社員」という使い方をします。
「嘱託社員」とは、「非正規の社員」のことを指し、
契約社員や派遣社員などと区別して使われます。
主に、定年後に退職した社員を再雇用した場合に「嘱託」を使います。
使い方・例文
では、最後にそれぞれの使い方を
例文で確認しておきましょう。
【委嘱の使い方】
- 政府からの委嘱を受けて、企業の監査役を務める。
- 予備校側から、非常勤講師として委嘱を受けた。
- 有名作曲家に、オリジナルの作曲を委嘱する。
- 地元の観光をPRするために、芸能人が委嘱された。
【委託の使い方】
- マンション管理を、他の会社へ委託する。
- 老人ホームの運営を、外部へ委託する。
- 健康食品の販売を、業者に委託する。
- 委託業者に対して、業務の報酬を支払った。
【嘱託の使い方】
- 定年後の社員を嘱託社員として再雇用する。
- A社は正規職員と嘱託職員に分かれて構成されている。
なお、「委託」という言葉は
「請負」や「委任」とも深く関わっています。
そのため、以下の記事も
確認しておくことをおすすめします。
これらの意味も理解しておけば、
全体像がとてもクリアになるでしょう。
まとめ
以上、内容を簡単にまとめると、
「委嘱」=特定の仕事を、一定期間人に任せること。
「委託」=人や機関に仕事の依頼をすること。
「嘱託」=(委嘱とほぼ同じ意味)
ということでした。
「委嘱」は専門的な仕事を頼み、「委託」はあらゆる仕事を頼むこと。と覚えておきましょう。
では今回は以上です。
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国語力アップ.com管理人
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