「手前勝手」という四字熟語はビジネスでよく使われるものです。上司への対応、取引先へのメールなど様々な場面でその用途があります。
ただ、本来の使い方をご存知でないという人も多いのではないでしょうか?そこで本記事では、「手前勝手」の意味や使い方、例文、類義語・英語訳などをわかりやすく解説しました。
手前勝手の意味・読み方
まず、この四字熟語の意味と読み方を紹介します。
【手前勝手(てまえがって)】
⇒自分の都合のよいようにばかり考えたり行動したりすること。また、そのさま。自分勝手。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「手前勝手」は「てまえがって」と読みます。「てまえかって」とは読まないので注意してください。
意味は、「自分の都合のいいように考えたり行動したりすること」です。
周りのことを考えずに、自分を第一に優先するような人を表す四字熟語です。一言で、「自分勝手」などと言い換えても構いません。
自分以外の他人を対象にしたり、あるいは自分自身を対象にすることもできます。後に詳しく解説しますが、状況に応じてどちらを対象にするかがある程度決まってくる言葉だと言えます。
手前勝手の語源・由来
「手前勝手」という四字熟語は、「手前」と「勝手」の二つに分けることができる四字熟語です。
まず、「手前」には「自分の目の前、自分に近い方、腕前、生計」など複数の意味がありますが、ここでは「一人称の代名詞」として使われています。すなわち、「僕」や「私」などの「自分」を指しているのと同じということです。
そして、「勝手」には「他人のことは考えず、自分のことだけを考える」という意味があります。これはご存知のように、普段からよく使われている言葉なので分かりやすいでしょう。
つまり、「手前」と「勝手」を合わせると「他人ではなく自分のことだけを考える自分」という意味になります。転じて、現在のような「自分の都合のいいように考えたり行動したりする様子」を表す四字熟語になるということです。
ただし、「手前」という言葉には「私」や「僕」、「自分」とは異なり「謙遜する・へりくだる」などの意味が含まれています。そのため、現在ではビジネスで使われることが多いのです。
ビジネスでの使い方・例文
では、ビジネスでは「手前勝手」はどのように使えばよいのでしょうか?以下は、よく使われる実際の例文です。
【相手に対してお願いをするような場合】
- 手前勝手ではございますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
- 誠に手前勝手ですが、何卒ご了承頂きたくお願い申し上げます。
- 何卒手前勝手ですが、今回の件はどうかよろしくお願い致します。
- 大変手前勝手ではありますが、納期を早めて頂くことは可能でしょうか?
- 手前勝手なお願いとは承知の上ですが、先日の案件をご確認頂けないでしょうか?
上司や取引先などに何かをお願いする場合、手前勝手はよく使われます。ビジネスでは、無理とは分かっていながらもお願い事をしなければならない場面が多々あります。
そのような場面では、相手の気分を害さないことが重要です。そこで、「手前勝手ではございますが、~」「大変手前勝手ではありますが、~」のように書き出すわけです。
こちら側の身勝手さを素直に認めれば、相手にもそれが伝わるので、相手側としてもそこまで不快さを感じません。
その他、急な予定の変更をお詫びしたり、逆にこちらがお願い事をされたときに断るような使い方も可能です。
- 手前勝手な都合で今回のイベントを中止をすることになり、大変申し訳ございません。
- 手前勝手な都合で申し訳ありませんが、今回の予定は延期して頂くようお願い申し上げます。
- 手前勝手で恐縮ですが、今回のお取引はご遠慮願いたいです。申し訳ありません。
- 手前勝手で恐縮なのですが、来月以降にまたお話を聞かせて頂けると幸いです。
相手に対してお詫びをしたりお断りの連絡をするような場合は、冒頭で「手前勝手な都合で、~」「手前勝手で恐縮ですが~」などと書くのが一般的です。
ビジネスでは、特にメールなどで断りの連絡を入れることが多いです。そのような時に、すぐに「無理です」とは言わずに「手前勝手」というクッションを入れれば、相手への印象も変わってきます。
手前勝手の例文・用例
「手前勝手」は、一般的な場面、すなわちビジネス以外でも使うことができます。こちらの例文も確認しておきましょう。
- あいつの言い分は手前勝手なものばかりで、聞いていてあきれちゃうね。
- 手前勝手な発言をするのはいいが、それでは周りは君についていかないよ。
- ずいぶんと手前勝手な理由で断ったんだね。相手は怒らなかったのかい?
- もっともらしく偉そうに振る舞っているが、彼女の言動は手前勝手である。
- 何も根拠や理由がなくただ自分の言いたいことを言う。手前勝手もいい所だ。
- 自分から誘っといてキャンセルするなんて、なんて手前勝手な人間なのだろう。
「手前勝手」をビジネスで用いる場合は、自分のことをへりくだったり謙遜したりする意味合いで使うということでした。しかしながら、一般に使う際には、自分のことを謙遜したりするようなことはほとんどありません。
多くは、自分ではなく他人のずうずうしさや自分勝手さを嘆いたりする時に使います。したがって、仕事以外で使うような場合は、相手に対して否定的な意味合いを込めて使うと考えて問題ありません。
手前勝手の類義語
「手前勝手」の「類義語」は以下の通りです。
「手前勝手」の類義語はいくつかありますが、どれも「自分勝手な様子」を表すという意味で共通しています。
しかし、上記で紹介した類義語はビジネスで使われることはほとんどありません。この点が「手前勝手」との違いだと言えます。
他には、四字熟語以外だと、「身勝手」「自己中」「一方的」などの言葉も広い意味で類義語と呼べます。
手前勝手の英語訳
「手前勝手」は、英語だと次のように言います。
①「selfish(わがまなな・自分中心の)」
②「egoistic(わがままな・自己本位の)」
③「self-centered(利己的な・自己中心の)」
英語では「自分勝手さ」を表す単語はいくつかあります。まず①の「selfish」は「わがままさ」を意味する形容詞です。
②の「egoistic」は「selfish」とニュアンスは近いのですが、わがまま度が少し高く、悪い意味での利己的さを表すような時に使います。「egoistic」は、元々は自己を意味する「ego(エゴ)」から派生した単語です。
また、③の「self-centered」は、直訳すると「自分中心」という意味になります。文字通り自分を中心に考えてる人で、他の人に何かが起こっても気が付かない、もしくは周りの人を考えないような人に対して使われる表現です。
それぞれの例文も紹介しておきましょう。
He is a selfish man.(彼はわがままな男性である。)
She is so egoistic.(彼女はかなり自己本位である。)
All his arguments are self-centered.(彼の言い分は自己中心的なものばかりだ。)
まとめ
以上、本記事の内容をまとめておきます。
「手前勝手(てまえがって)」=自分の都合のいいように考えたり行動したりすること。
「語源・由来」=一人称の代名詞を表す「手前」とわがままさを表す「勝手」から。
「ビジネスの用例」=「手前勝手ではございますが、」「手前勝手な都合で、」など。
「類義語」=「勝手気儘・自由勝手・得手勝手・独断専行・利己主義」
「英語訳」=「selfish」「egoistic」「self-centered」
「手前」という言葉は、その人の「自己」を意味します。その「自己」が「勝手」なのでわがままに好き勝手に振る舞うことだと覚えておきましょう。