「周知徹底」という四字熟語をご存知でしょうか?主にビジネスにおいて使われ、「周知徹底を図る」「周知徹底に努める」などの使い方をします。
ただ、具体的にどう使えばよいのか分かりにくい表現でもあります。似たような言葉の「注意喚起」との違いも気になる所です。
そこで本記事では、「周知徹底」の意味や読み方、例文、同義語などを含め詳しく解説しました。
周知徹底の意味・読み方
最初に、この言葉を辞書で引いてみます。
【周知徹底(しゅうちてってい)】
⇒広くすみずみまで、きっちりと知れわたらせること。
出典:三省堂 大辞林
「周知徹底」は「しゅうちてってい」と読みます。意味は「広くすみずみまで、きっちりと知らせること」です。
例えば、日本では災害時に防災無線が流されます。これは非常時における大事な情報を広く国民に伝える義務があるためです。
特に地震などが起こった際には、その大きさや津波の有無、避難の場所などが近隣住民に対して細かく丁寧にアナウンスされます。
このような行為は、まさに広くすみずみまできっちりと知らせることです。よって、「周知徹底」だと言えます。つまり、「周知徹底」とは何かの情報を隅々まで徹底的に行き渡らせる行為を表す四字熟語ということです。
逆に言えば、同じ知らせる行為であっても特定の箇所だけに行き渡らせたり、大まかな内容を知らせたりするような際は「周知徹底」は用いません。この場合は、単に「知らせる」といった表現が適しています。
周知徹底の語源・由来
「周知徹底」は「周知」と「徹底」の二語から成る四字熟語です。
まず、「周知」とは「広く知らせること」を表します。「一周」や「周り」という言葉もあるように、「周」という字には「全体まで行き届かせる」という意味があります。この事から、「周知」は「広く知らせる・広く行き届かせる」などの意味になるわけです。
そして、「徹底」とは「すみずみまで行き届かせること」を表します。「徹」という字は訓読みだと「とおす」と読み、元は「貫き通す・一貫する」という意味を持っていました。
夜の間ずっと寝ないで起きておくことを「徹夜」と言いますが、「徹」にはこのように「最後までとことん貫き通す」という意味があります。そのため、「徹底」=「すみずみまで行き届かせること」となるわけです。
以上、両者を合わせることで、「広くすみずみまで知らせる」という現在の意味になるわけです。語源から考えても、「周知徹底」には「情報を徹底的に行き渡らせる」という意味が込められていることが分かるでしょう。
周知徹底の類義語
続いて、「周知徹底」の「類義語」を紹介します。
「周知徹底」を言い換えた語はいくつかありますが、全く同じ意味の語(同義語)というのはありません。
まず、「情報共有」は必ずしも隅々まで情報を知らせるわけではありません。ある特定の集団だけへ知らせる可能性もありますし、特定の誰か同士で情報を共有する場合もあります。
また、「情報拡散」は「思わぬところで勝手に情報が散らばり広がっていく」という意味合いが強い言葉です。例えば、秘密にしたかった悪い情報などがSNSで広まってしまった際に「情報拡散した」などのように使います。「周知徹底」はそうではなく、「自ら働きかけることで情報を伝えていく」という意味合いで使われます。
「注意喚起」については、「周知徹底」と同様にビジネスシーンで使われることが多い四字熟語です。「注意」は「気を付けること・用心すること」、「喚起」は「呼び起こすこと」なので、周囲に対して「○○を注意しなさい」「○○に用心しなさい」と呼び起こすような際に使われます。
ただ、「注意喚起」に関しても広く情報を知らせるとは限りません。例えば、会社内で特定の部下に対して注意を促したりする際にも「注意喚起する」などのように用います。「周知徹底」は同じ会社内であれば社員全員に注意を促すような際に使われます。この点が、「周知徹底」と「注意喚起」の違いだと言えます。
最後の「意識徹底」については、普段の文章ではそこまで使われるものではありません。文字通り、意識(考えや思考)を徹底するような時に使います。どちらかと言うと、「意識を徹底する」のように用いることの方が多いです。
周知徹底の対義語
「周知徹底」の明確な対義語と呼べるような四字熟語はありません。ただ、「周知」と「徹底」それぞれの反対語は存在します。
まず、「周知」は広く知らせる事なので「秘密」が対義語となります。「秘密」とは「人に知らせないこと」を表す言葉です。
そして、「徹底」は「中途半端でないこと」を表すので「半端」が対義語となります。その他、頭に「不」を付けて「不徹底」なども反対の言葉だと言えます。
周知徹底の英語訳
「周知徹底」を英語にすると、次の三つの言い方があります。
①「thoroughly notify(周知徹底)」
②「known to all(広く知られること)」
③「dissemination(普及・宣伝)」
①の「thoroughly」は「徹底的に・充分に」、「notify」は「通知する・知らせる」という意味です。二つの単語を合わせることで、「周知徹底」と同じ意味を表すことができます。
②の「known to~」は「~に知られている」という意味です。「known to all」と表記することで、「全てに広く知られている」という意味になります。
③の「dissemination」は「普及・宣伝」などの訳ですが、意訳して「情報の普及・情報の周知」を表す単語として使うことができます。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
We will thoroughly notify everyone of this information.(私たちはこの情報の周知徹底を図ります。)
By the rings they will wear, they will be known to all as husband and wife.(指輪を交わして、夫婦であることを全ての人に示します。)
We wish to promote dissemination of this information.(私たちはこの情報が周知され普及することを願っています。)
周知徹底の使い方・例文
最後に、「周知徹底」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 今後はすべての社員に対して社内規則の変更を周知徹底いたします。
- 火災時の避難経路をしっかりと把握するよう周知徹底をお願いします。
- 弊社では新入社員に対してコンプライアンスを周知徹底させています。
- 新しいシステムの導入に伴い、混乱が起こらないよう周知徹底に努める。
- 最近学校全体で校則を破る生徒が増えてきたので、周知徹底を図ることにした。
- 危険物の取り扱いに関して、万が一の事故が起きないように周知徹底を促す。
- 今後はこのようなミスが起こらないよう、社内全体に周知徹底いたします。
- 会社内で大幅なルール変更があったので、周知徹底を図るようにして下さい。
「周知徹底」は、上記のようにビジネスシーンで使われることが多い四字熟語です。主に社員一人一人に対して、大事なことや伝えなければいけない内容を広く行き届かせるような時に使います。
一番良く使われるのが、会社のトップあるいは上司から部下へ用件を伝達するようなシーンです。社内規則の大幅な変更や過去に犯したミスの再発防止策などは、広くすみずみまで社員に知らせなければいけません。
このような場面で、「漏れなくきちんと知らせる」という意味で「周知徹底」を使うのが適していると言えます。なお、言い回しとしては「周知徹底を図る」「周知徹底いたします」「周知徹底をお願いします」などが多いです。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「周知徹底」=広くすみずみまで、きっちりと知らせること。
「語源・由来」=「周知」は「広く知らせること」「徹底」は「すみずみまで行き届かせること」
「類義語」=「情報共有・注意喚起・情報拡散・意識徹底」
「英語訳」=「thoroughly notify」「known to all」「dissemination」
「周知徹底」は組織を管理している人、特に上級職の人はよく使う四字熟語です。ぜひ今後のビジネスシーンで積極的に使ってみてはいかがでしょうか?