ビジネスや政治において出す案を、「素案」「草案」「原案」などと言います。また、場合によっては「たたき台」「骨子案」などと言ったりすることもあります。
これらの言葉はどのように使い分ければいいのでしょうか?本記事では、「素案」「草案」「原案」の違いについて詳しく解説しました。
素案の意味
まずは、「素案」の意味からです。
【素案(そあん)】
⇒ごく大まかな案。
出典:三省堂 大辞林
「素案」とは「大まかな案のこと」を言います。例えば、「素案を示す」「素案を考える」などのように用います。
「素案」は「初期段階の案」という点がポイントです。
「素」という字は「素材」「素朴」などがあるように「手を加えていない」という意味があります。そして、「案」とは「考え」や「計画」という意味です。
つまり「まだほどんど手を加えていない考えや計画」のことを「素案」と言うわけです。
どんなに大きな計画でも、まずは元となる考えが必要です。そのため、「最初に大まかな案を練っていく」という意味で「素案」を使うのです。
なお、「素案」よりも大ざっぱな案のことを「骨子案(こっしあん)」と言います。「骨子案」は、ビジネスの企画書などでよく使われる言葉です。
草案の意味
次に、「草案」の意味です。
【草案(そうあん)】
⇒規約などの文章の下書き。草稿。
出典:三省堂 大辞林
「草案」とは「文章の下書きのこと」を意味します。例えば、「草案を練る」「憲法草案」などのように用います。
「草案」は「素案をさらに詳しく説明したもの」と考えると分かりやすいです。
「素案」は、「大ざっぱな案」のことでした。この「素案」をさらに具体的なものへ改良した案が「草案」なのです。
こちらも語源を確認しておくと、「草案」の「草」は「草原」「雑草」などがあるように「やわらかい植物」を意味します。
言いかえれば、「まだ発達しきれていない状態」ということです。ここから、文章を完成させる前の下書きのことを「草案」と呼ぶようになったわけです。
原案の意味
続いて、「原案」の意味です。
【原案(げんあん)】
⇒討議・検討を加えるための最初の案。修正案などに対していう。
出典:三省堂 大辞林
「原案」とは「最初の案のこと」を意味します。例えば、「原案を提出する」「原案を修整する」などのように用います。
「原案」は「最終案の一歩手前の案」と考えると分かりやすいです。辞書の説明だと「最初の」と書かれていますが、これは「案を提出した時点の」という意味だと考えてください。
会議などで案を提出しても、必ずしもその通りに賛成されるわけではありません。場合によっては、修正されたり否決されたりすることもあります。そんな時に、「最初の案に戻る」という意味で「原案」を使うわけです。
多くは「修正案」に対して使う言葉なので、「原案」=「修正案の対義語」と覚えても構いません。
素案・草案・原案の違い
ここまでの内容を整理すると、
「素案」=大まかな案。「草案」=文章の下書き。「原案」=最初の案。(最終案の一歩手前)
ということでした。
つまり、「案」というのは「素案」⇒「草案」⇒「原案」の流れで練ることになります。
分かりやすい例を出しますと、「学校教育でのペーパーレス化」を目的とした案を出すとします。
まず、「素案」よりも前に「骨子案」が必要ということでした。そのため、「どのようにペーパーレス化するのか?」というざっくりとした骨組みを決めます。
今回は、「タブレットを使って印刷物をゼロにする」という概要にしたとします。
次に、大まかな案として「素案」を出していきます。例を挙げますと、次のようなものです。
- いつから始めるのか?
- 何年生を対象とするのか?
- 費用はいくらまで出すのか?
「素案」は、初期段階の案なので、そこまで詳しく決める必要はありません。あくまで、完成までの素材を集める段階と考えればよいです。
続いて、「草案」です。「草案」というのは「文章の下書き」のことでした。そのため、今まで出した情報を集めて文章を作成していきます。
東京都の中学生を対象に、ペーパーレス化を行う。
タブレット費用が20億ほどかかるが、年間5億円のコスト削減が期待できる。
来年の4月1日開始を予定とする。
「草案」は「素案」よりも詳しく説明することが重要なため、なるべく具体的に文章を書くようにします。
最後に、「原案」です。「原案」は「最終案の一歩手前の案」なので、最終的に議題に出せる状態までしっかりと仕上げていきます。もちろん、誤字・脱字などがあってはいけません。
来年の4月1日から、東京都の中学生を対象にペーパーレス化を行います。導入費用としては、タブレットだけで20億ほどかかる試算です。
しかし、同時に年間5億円のコスト削減効果が期待できます。自宅からタブレットを持ってこれる人は、持ってきてもらう予定です。
これで最終的な案を作成することができたことになります。必ずしも決められた型があるというわけではありませんが、一般にビジネスなどで案を出す場合はこのような流れとなります。
なお、場合によっては、「たたき台」という言葉を使うこともあります。
「たたき台」とは、簡単に言うと「試案」のことです。「とりあえずの案」「試しに出した案」などの意味でよく使われます。
主に企業が企画書などを正式に作る前段階の概要を作る際に、「たたき台をつくる」などのように言います。「たたき台」に関しては、「素案」とほぼ同じような意味だと考えて問題ありません。
使い方・例文
「素案」「草案」「原案」の使い方を、例文で確認しておきます。
【素案の使い方】
- まず最初に、会社の事業計画の素案を作成した。
- 骨子案を元に、素案をこちらへ提出してください。
- 文部科学省は、新学習指導要綱の素案を発表した。
- 午後の会議で使うプレゼンの素案をまとめよう。
- 必要な資料を元に、簡単な素案を作成しました。
【草案の使い方】
- 作成した素案を元に、具体的な草案を作成した。
- 夏に行われるイベントの草案を作成する予定です。
- 午後の大事な会議に備えて、草案を作成しておきます。
- 政府によって憲法草案が作成され、国民投票に出された。
- 市が合併したので、新しい条例の草案が作成された。
【原案の使い方】
- 原案を会議に提出し、返答を待つことにした。
- 原案を最終確認し、わずかに修正を加えた。
- 内閣で原案を二回修正した後、最終案が決定した。
- 原案が出されたが、国会で反対多数で否決された。
- 原案通り、新しく改正された法律が可決されたようだ。
例文のように、「素案」「草案」「原案」は主にビジネスで使われる言葉となります。ただし、最近では政治関連のニュースでも登場することが多いです。
国会では日々、議員が案を出しています。法律などはまさに案を練った結果生まれるものです。そのため、法律や憲法、条例などに対しても使われる言葉と覚えておくとよいでしょう。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「素案」=大まかな案。「草案」=文章の下書き。「原案」=元になる案。
「違い」⇒「素案」は「初期段階の案」を指し、「草案」は「素案を具体的なものへ改良した案」を指す。「原案」は「最終案の一歩手前の案」を指す。「骨子案」⇒「素案」⇒「草案」⇒「原案」の順で進める。(たたき台は「素案」と同じ意味)
ビジネスでは企画を練ることは避けて通れません。今後、会議などで案を出す人は大まかな流れを示すこれらの言葉を理解しておきましょう。