「舌先三寸」という四字熟語をご存知でしょうか?使い方としては、「舌先三寸な奴だ」「舌先三寸口八丁だ」などのように言います。
この「舌先」ですが、具体的に何を指しているのかが分かりにくいです。「口先」という言葉は聞いたことがありますが、「舌先」はなかなか聞いたことがありません。
そこで今回は、「舌先三寸」の意味や語源、短文などを含めなるべくわかりやすく解説しました。
舌先三寸の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【舌先三寸(したさきさんずん)】
⇒口先だけの巧みな弁舌。うわべだけのうまい言葉で、心や中身が備わっていないこと。
出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)
「舌先三寸」は「したさきさんずん」と読みます。
よくある読み間違えとして「したさきさんすん」がありますが、正しくは「さんずん」です。「さんすん」とは読まないので注意してください。
そして意味ですが「舌先三寸」とは「口先だけが上手いこと・うわべだけの上手い言葉のこと」などを表します。
例えば、あなたがとても話の上手い詐欺師に騙されてしまったします。最初は商品などを買うつもりはなかったものの、いつの間にか巧みな話術に騙されて高額なツボを買ってしまいました。
このような時に、「舌先三寸で丸め込まれた」などと言うわけです。
「舌先三寸」は、ズル賢い人に騙されたり話が上手い人に言いくるめられたりするようなときに使われます。
したがって、基本的にはあまり良くない意味として使う四字熟語です。状況にもよりますが、多くは詐欺師やペテン師などを対象とします。
なお、「舌先三寸」は「先」という部分を省略して「舌三寸」と言うこともあります。「舌三寸」と表記しても意味自体は全く同じと考えて構いません。
舌先三寸の語源・由来
「舌先三寸」の「舌先」は、文字通り「舌の先っぽのこと」です。そして、「三寸」とは「約9センチの長さ」を意味します。
日本古来からある「尺貫法」という測り方だと、「一寸(いっすん)」=「約3センチ」という定義があります。したがって、「三寸」とは「約9センチほどの長さ」を意味することになります。
つまり、「舌先三寸」を直訳すると「約9センチの小さな舌」ということになります。
ここから、「小さな舌」⇒「中身や内容が伴わない」⇒「口先だけうまいことを言う」という意味に変わっていったということです。
なお、人間の舌の長さは約7センチが平均なので、厳密に言うならば、9センチの舌は小さいサイズには該当しません。
ではなぜこの四字熟語が広まったかと言いますと、「寸」は昔から小さなものの例えとして使われていたからです。
例えば、「一寸先は闇」「一寸の虫にも五分の魂」など「寸」が入った言葉は他にも多くあります。これと同様に、「舌先三寸」も「三寸」という言葉が一人歩きし、いつのまにか小さな舌を例えるようになったと言われています。
口先三寸・胸三寸との違い
「舌先三寸」と似た言葉で「口先三寸」と「胸三寸」があります。
まず前者の方ですが、結論から言いますと「口先三寸」という言葉は存在しません。
文化庁が発表したデータによりますと、正しい方の「舌先三寸」を選択した人が23.3%、間違った方の「口先三寸」を選択した人が56.7%だそうです。
単純計算だと、日本人の2人に1人以上が間違えている計算になります。「口先」という言葉自体は、「舌先」よりも比較的よく使われています。そのため、多くの人が混同しているのでしょう。
仮に「口先三寸」だと、「口の先が約9センチ」というよく分からない意味になってしまいます。なので、いずれにせよ誤った言葉だと言えます。
また、「胸三寸(むねさんずん)」ですが、こちらは正式に存在することわざ(慣用句)です。
「胸三寸」とは「胸の中・心の中の考え」という意味です。使い方としては「胸三寸に納める」のように言い、主に自分の考えを心の中に秘めるような時に使います。
なお、「胸先三寸」という言葉は存在しません。これは「舌先三寸」と「胸三寸」が混ざって使われた誤用ですが、間違って使わないように注意する必要があります。
舌先三寸の類義語
続いて、「舌先三寸」の「類義語」を紹介します。
いずれの言葉も「口がうまい・口先が達者」などの意味が共通しています。
三つ目の「口八丁」については簡単に補足をしておきましょう。「八丁」とは「八つの道具を巧みに使いこなすこと」を表します。
この事から、「口八丁」=「口が達者」という意味になったと言われています。現在では、「舌先三寸口八丁」などのように両者を合わせて使われる場合も多いです。
舌先三寸の対義語
「舌先三寸」の対義語は、四字熟語だと該当するものはありません。
ただ、一般的な語だと「訥弁(とつべん)」が反対語に当てはまります。「訥弁」とは「なめらかでないしゃべり方」という意味です。
こちらは主に口下手な人に対して使う言葉です。使い方としては「訥弁な話し方にイライラする」などのように用います。
舌先三寸の英語訳
「口先三寸」は、英語だと次のように言います。
「glib tongue」
「glib」は「うわべだけの」、「tongue」は「舌」という意味です。両者を合わせることで、「glib tongue」=「口達者・口が軽い」という意味になります。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
She has a glib tongue.(彼女は口先三寸である。)
That entertainer has got a glib tongue.(あの芸人は口先三寸である。)
舌先三寸の使い方・例文
最後に、舌先三寸の使い方を例文で紹介しておきます。
- 彼は舌先三寸で詐欺師のような男なので注意した方がいい。
- 舌先三寸の巧みな話術に騙されて、高い商品を買ってしまった。
- あいつの舌先三寸のような中身のない話は本当にうんざりするよ。
- 本当は買いたくなかったが、営業マンの舌先三寸の言葉に丸め込まれた。
- 舌先三寸の言葉に惑わされず、自分で考えて判断するようにしなさい。
- 彼女の発言は舌先三寸ばかりなので信用できない。許してはダメだよ。
舌先三寸は、日常生活からビジネスまで幅広く使われています。世の中には話が上手い人や弁が巧みな人が必ずいます。
誰しも一度は話のうまさにだまされたという経験はあるかと思います。舌先三寸とはそのような相手にだまされたりする時に使う四字熟語ということです。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「口先三寸」=口先だけが上手いこと。うわべだけの上手い言葉のこと。
「語源・由来」=「三寸ほどの小さな舌」は、中身や内容が伴わないため。
「誤用表現」=「口先三寸・胸先三寸」
「類義語」=「冗舌・巧言・口達者・口巧者・二枚舌」など。
「英語訳」=「glib tongue」
舌先三寸の「三寸」は、9センチという長さを示したものです。ただ、現在の意味として使われるようになったのは小さいものの例えとして「寸」が元々使われていたからだと言えます。