「疾風勁草」という四字熟語をご存知でしょうか?
一般的には、「疾風勁草を知る」もしくは「疾風に勁草を知る」などのように用います。見慣れない言葉かもしれませんが、座右の銘にしている人もいるくらいです。
本記事では、「疾風勁草」の意味や語源、例文、類義語などを解説しました。
疾風勁草の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【疾風勁草(しっぷうけいそう)】
⇒逆境や不運に見舞われた時にこそ、その人の真の強さがわかるというたとえ。意志や志操が堅固な人をさしていう。
出典:学研 四字辞典熟語
「疾風勁草」は、「しっぷうけいそう」と読みます。
意味は「逆境や困難にあったときこそ、その人の真の強さが分かる」ということです。
例えば、あるスポーツチームが試合で大敗してしまったとしましょう。
しかし、選手たちは負けても落ち込んだりはせず、敗北を謙虚に受け止めました。そして、次の試合に向けてさらにきつい練習をすると誓いました。
このような時に、「選手たちの姿は、疾風勁草であった」などと言うわけです。つまり、試合に負けたことにより逆に彼らの本当の姿が分かったということです。
人間という生き物は、困難にぶつかると弱さが出やすいです。そして、弱さが出た時に初めて本性が表れます。
しかしながら、その本性が周囲の人にとって感心するものであれば、周りからも見直されるはずです。疾風勁草とは、そのような「人間の良い一面・本当の姿」が垣間見れたときに使われる四字熟語ということです。
疾風勁草の語源・由来
「疾風勁草」の「疾風(しっぷう)」は「速く吹く風」を指します。言いかえれば、「強風や嵐」のことです。
「疾」という字は「疾走」などがあるように、「速度が速い」という意味があります。したがって、この場合は「速く吹く風」を表すのです。
そして、「勁草(けいそう)」とは「強い草」という意味です。「勁」は見慣れない漢字ですが、ここでは「ぴんと張りつめて強い」という意味で使われています。
以上、両者を合わせることで、「疾風勁草」=「強風でも立っているほど強い草」となります。
普通は、強風が吹くと弱い草は風で倒されてしまいます。しかし、強い草はしっかりと土に根付いているので簡単には倒されません。この事から、「疾風勁草」は困難にあった時の強さを表す言葉として使われるようになったわけです。
元々この四字熟語は、『後漢書(ごかんじょ)』の「王覇伝(おうはでん)」の故事が由来となっています。以下、実際の引用文です。
「潁川(えんせい)の我に従ひし者の皆逝く、而して子独り留まりて努力す、疾風に勁草を知る。」
簡単に訳すと、「私に従ってきた者は皆逃げて、今ではお前一人だ。疾風の中に勁草があるように、困難の時こそ真の強さが分かる。」となります。
これは、後漢の「光武帝」が「王覇」に放ったセリフです。
当時、光武帝に従っていた部下達は形勢が悪くなると皆一斉に逃げ出しました。しかし、そんな絶体絶命の状況でも王覇だけは最後まで残って周囲に真の強さを表明しました。
この時の何とも勇ましい逸話が、現在の疾風勁草の正式な由来ということになります。
疾風係争の類義語
類義語の場合は、信念や志、節操などがある様子を表す言葉となります。この中では、「歳寒松柏」が意味としては最も意味が近いです。
なお、慣用句だと「疾風に勁草を知る」があります。これは「疾風勁草」と同じ意味なので、同義語といってよいでしょう。
疾風勁草の対義語
逆に、「対義語」としては以下の言葉が挙げられます。
【窮途末路(きゅうとまつろ)】⇒困難や逆境により、行き詰まってしまうこと。「窮途」は「途中で行き詰まること」、「末路」は「道の終わり」を表す。
反対語の場合は、困難があったときに逃げ出したり投げ出したりするような言葉を指します。類義語が良い意味で使われるのに対し、対義語の場合は良い意味としては使われません。
疾風勁草の英語訳
「疾風勁草」は、英語だと次のように言います。
「Harsh winds tell us hardy weeds.」
「harsh」は「荒い」、「wind」は「風」、「hardy」は「丈夫な」、「weed」は「雑草」という意味です。「tell」はここでは「見分ける」という意味で使われています。
よって、直訳すると「荒い風は私たちに丈夫な雑草を見分けさせてくれる」となります。転じて、「困難によって、真価を見分けられる」という意味になるわけです。
その他には、「In a calm sea every man is a pilot.」などの表現も可能です。「calm」は「穏やか」、「pilot」は「運転士・水先案内人」といった意味です。
直訳すると「穏やかな海ではすべての人が水先案内人になれる」という一文になります。逆に言えば、荒れた海においてはごく限られた者しか水先案内人になれないことを示唆した表現です。
疾風勁草の使い方・例文
最後に、「疾風勁草」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 会社倒産は悲劇だったが、社員の疾風勁草を知ることができた。
- 疾風勁草のように、困難な時こそ的確に物事へ対処すべきである。
- 自分にトラブルが起きた時こそ、疾風勁草のごとく真価が分かる。
- 逆境に直面したことで彼は評価され出した。まさに疾風勁草である。
- 普段は目立たない人だが、疾風勁草のようにたくましかったので見直した。
- 今は苦しいが、疾風勁草と考えよう。もっと長期的に人生を見つめ直すべきだ。
疾風勁草は、例文のように日常日常からビジネスまで幅広く使うことができます。困難や苦難というのは誰しも一度は訪れるものなので、比較的使う機会は多い四字熟語だと言えます。
過去の苦しみを克服した人は、「難になったときに人の真価が問われるということを知っています。そのため、座右の銘としても使っている人もいるようです。
もしもあなたが今後の人生で、逆境を克服したいと考えているのであれば、この四字熟語を座右の銘にするのもよいかもしれません。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「疾風勁草」=逆境や困難にあったときこそ、その人の真の強さが分かる。
「語源・由来」=「強風でも立っているほど強い草」から。後漢の光武帝が放ったセリフ。
「類義語」=「歳寒松柏・雪中松柏・志操堅固・冬夏青青・勁草之節」
「対義語」=「敵前逃亡・窮途末路・責任放棄」
「英語訳」=「Harsh winds tell us hardy weeds.」
生きていく上で困難から避けることはできません。もしも困難に直面したときは、良くも悪くもその人の本性は表に出ます。そんな時に、真の強さが分かったという意味で疾風勁草を使うわけです。