『最後の一句』は、森鴎外による有名な小説文です。中学国語の教科書にも載っているため、学校の授業で学んだり定期テストなどに出題されたりします。
ただ、本文中には意味の分からない言葉も多く出てきます。そこで今回は、『最後の一句』に出てくる重要語句や漢字の読み方を簡単にまとめました。
第一段落の言葉一覧
【元文(げんぶん)】⇒日本の元号の一つ。江戸時代、1736年から1741年までの間を指す。
【船乗り業(ふなのりぎょう)】⇒船に乗り込んで仕事をする人のこと。
【斬罪(ざんざい)】⇒首をきる刑罰。うちくび。
【高札(こうさつ)】⇒江戸時代、犯罪人の罪状などを記し、一般に告示するために広場などに高く掲げた板の札。
【市中(しちゅう)】⇒市の中。街の中。
【至る所(いたるところ)】⇒行く先々どこでも。あらゆる所。
【痛切(つうせつ)】⇒身にしみて強く感じること。
【交通(こうつう)】⇒人と人とのつきあい。
【絶つ(たつ)】⇒つながりを切る。
【女房(にょうぼう)】⇒妻のこと。
【媼(おうな)】⇒年をとった女。老女。
【慕う(したう)】⇒離れがたく思ってあとを追う。
【里方(さとかた)】⇒嫁の実家。
【赤子(あかご)】⇒赤ん坊。生まれて間もない子。
【有福(ゆうふく)】⇒富み栄えること。裕福。
【入牢(にゅうろう)】⇒牢に入れられること。「牢」とは「罪人などを閉じ込めておく所」を指す。
【失望(しつぼう)】⇒期待がはずれてがっかりすること。
【暮し向き(くらしむき)】⇒生活のようす。家計の状態。
【用に立つ(ようにたつ)】⇒役に立つ。
【生い立つ(おいたつ)】⇒成長する。
【乏しい(とぼしい)】⇒十分でない。足りない。
【ほどなく】⇒時があまりたたないうちに。まもなく。
【格別(かくべつ)】⇒特別。他との間に、はっきりした区別があること。
【しおれる】⇒気落ちして、しょんぼりする。元気がなくなる。
【争闘(そうとう)】⇒あらそいたたかうこと。闘争。
【和睦(わぼく)】⇒争いをやめて仲直りすること。和解。
【刻々(こくこく)】⇒時の流れのひと区切りひと区切り。
【歓迎(かんげい)】⇒喜んでむかえること。喜んで受け入れること。
【厄難(やくなん)】⇒災難。
【悔恨(かいこん)】⇒過ちを後悔して残念に思うこと。
【悲痛(ひつう)】⇒あまりに悲しくて心が痛むこと。
【何物(なにもの)】⇒どのような物。いかなる物。
【みつぐ】⇒金や物を与えて助ける。
【ろくろく】⇒ろくに。ろくすっぽ。(あとに打消しの語を伴い、物事を満足になしとげていないさまを表す。)
【繰言(くりごと)】⇒同じ事を繰り返して言うこと。特に不平や泣き事などをくどくどと言うこと。
【茫然(ぼうぜん)】⇒気抜けしてぼんやりしているさま。
【目をみはる】⇒目を大きく見開いて見る。
【器械的(きかいてき)】⇒自分の意思を失ったように、指令通りに動いたり、物事を繰り返したりするさま。
【たびたび】⇒何度も繰り返し行われるさま。
【裁縫(さいほう)】⇒布地を裁(た)って、衣服などに縫(ぬ)いあげること。
【床に入る(とこにはいる)】⇒布団などの寝床に入る。
【ようよう】⇒やっと。「ようやく」の音が変化した形。
【襖(ふすま)】⇒木で骨組みを作り、その両面に紙または布を張った建具。和室の仕切りに使う建具の一つ。
【陰(かげ)】⇒物の後ろや裏など、遮られて見えない所。裏側。
第二段落の言葉一覧
【北国通い(ほっこくがよい)】⇒北前船(きたまえぶね)、西回り航路のこと。上りでは、北陸以北の日本海沿岸→下関→瀬戸内海→大坂まで。下りではその逆の航路を取る。
【運送の業(うんそうのぎょう)】⇒運送業のこと。運賃を取り、旅客や貨物を運ぶ仕事。
【営む(いとなむ)】⇒生活のための仕事をする。経営する。
【居船頭(いせんどう)】⇒江戸時代、船に乗らない回船の所有者、すなわち船主。これに対して、居船頭から船長として雇われて、実際に船に乗り込む運航の責任者を沖船頭(おきせんどう)と呼んだ。
【元年(がんねん)】⇒年号の改まった最初の年。
【出帆(しゅっぱん)】⇒船が港を出ること。出港(しゅっこう)。
【航海(こうかい)】⇒船で海をわたること。
【風波の難(ふうはのなん)】⇒風と波による災難。「風波」とは「風と波」、「難」とは「災い・災難」を表す。
【難船(なんせん)】⇒風波などで船が破損や座礁をすること。積荷を捨てたり、船体・道具の一部を損じたりする場合を言う。
【流出(りゅうしゅつ)】⇒流れ出ること。
【港々(みなとみなと)】⇒方々の数ある港。
【~にはおよばない】⇒~する必要がない。~しなくともよい。ここでの「まい」は「~ないだろう」という否定の推量を表す助動詞。「及ぶまい」で「~する必要がないだろう」という意味になる。
【したてる】⇒作り上げる。
【損失(そんしつ)】⇒利益を失うこと。
【良心(りょうしん)】⇒善悪を判断し、正しく行動しようとする心の働き。
【人づて(ひとづて)】⇒直接にでなく、他人を通して話を伝えたり、聞いたりすること。
【金高(かねだか)】⇒金銭の量。金額。
【死罪(しざい)】⇒江戸時代の刑罰の一つ。斬首(ざんしゅ)の刑に処して、死体は試し斬 (ぎ) りの用に供され、財産も没収された。
第三段落の言葉一覧
【立ち聞き(たちぎき)】⇒立ち止まって他人の会話をこっそり聞くこと。盗み聞き。
【制する(せいする)】⇒人の言動などを押さえとどめる。
【願書(ねがいしょ)】⇒許可を得るために差し出す書類。
【奉行(ぶぎょう)】⇒平安時代から江戸時代にかけての武家における職名の一つ。江戸時代では、裁判をつかさどった寺社・町・勘定三奉行のうち、特に町奉行を指して言った。
【跡を取る(あとをとる)】⇒あとを継ぐ。家督(かとく)を相続する。
【御覧(ごらん)】⇒「御覧なさい」の略。自分の予想が当たったときに得意になってその結果を指し示す語。
【手習い(てならい)】⇒習字。文字を書くことを習うこと。
【清書(せいしょ)】⇒きちんと書くこと。
【おしおき】⇒仕置き(しおき)。江戸時代、刑罰に処すること。特に死刑にすること。
【実子(じっし)】⇒実際の自分の子。血のつながった自分の子。
【幾度も(いくども)】⇒何度も。
【一番鶏(いちばんどり)】⇒夜明け方に最初に鳴く鶏。丑の刻。午前二時頃。
【したく】⇒外出するために身なりを整えること。
【二番鶏(にばんどり)】⇒夜明けに一番鶏に次いで鳴く鶏。寅の刻。午前四時頃。
【霜の暁(しものあかつき)】⇒あけがたの霜。「暁」とは「太陽の昇る前のほの暗い頃。明け方」を指す。
【提灯(ちょうちん)】⇒照明具の一種。足元を照らすために持ち歩く。
【拍子木(ひょうしぎ)】⇒方柱形の短い二つの木を打ち合わせて鳴らすもの。夜回りの警戒に用いる。
【夜回り(よまわり)】⇒夜、警備のために所定の地域や建物内を見回ること。特に、冬の夜に火災防止のために拍子木などを打ちながら町内を見回ること。また、その人。
【町奉行(まちぶぎょう)】⇒江戸幕府の職名。老中に属し、江戸の町方の行政・司法・警察など民政全般をつかさどった。
【格好(かっこう)】⇒(年齢を表す語に付いて)年齢がだいたいそのくらいであること。ちょうどその年くらいのようすであること。
【容易(ようい)】⇒たやすいこと。わけなくできること。
【解しかねる(かいしかねる)】⇒理解できない。どう解釈していいか分からない。「解す」は「理解する」、「かねる」は「~できない・~することが難しい」という意味。
【上(かみ)】⇒朝廷・政府などの機関。
【貫木(かんのき)】⇒門の扉が開かないようにする横木。左右の扉の内側につけた金具に差し通して使う。
【我(われ)にかえる】⇒はっと気がつく。正気にかえる。
【詰所(つめしょ)】⇒特定の勤務の人が集まって詰めている所。
【詰衆(つめしゅう)】⇒江戸時代、将軍のそばに仕えた者。譜代大名(ふだいだいみょう)が任ぜられた。
【懐中(かいちゅう)】⇒懐(ふところ)の中。「懐」とは、衣服を着たときの胸のあたりの内側の部分を指す。
【書付(かきつけ)】⇒書き記したもの。ここでは、子供たちが用意した「願書」を指す。
【与力(よりき)】⇒江戸幕府における代表的な職名の一つ。江戸時代、諸奉行・大番頭(おおばんがしら)・書院番頭(しょいんばんがしら)などの支配下で、これらを補佐する役をした。主に警察・庶務・裁判事務などを担当。
【命乞い(いのちごい)】⇒殺されるはずの命が助かるように、頼むこと。
【同役(どうやく)】⇒同じ役目。また、その人。
【顧みる(かえりみる)】⇒振り返って見る。
【異議(いぎ)】⇒反対または不服であるという意見。
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