「ポストモダン」という言葉は、現代文の用語としてよく出てきます。「ポストモダン建築」「ポストモダン文学」などが主なものです。
ただ、具体的な意味や使い方が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回はこの「ポストモダン」についてなるべく簡単に分かりやすく解説しました。
ポストモダンの意味
まず、「ポストモダン」を辞書で引くと次のように書かれています。
【ポストモダン】
⇒近代を超えようとする芸術運動。近代の合理主義的傾向を否定する考え方。もともとは、機能主義・合理主義に対置する新しい建築という意味の近代建築用語。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「ポストモダン」とは「近代を乗り越えたり否定したりしようとする考え方」のことを意味します。また、単に「近代以降の時代」を指す場合もあります。
「近代」とは「およそ15世紀~20世紀中頃までの時代」のことです。
「ポストモダン」は英語で「postmodern」と言い、「post」には「後の」という意味があります。そして、「modern」とは「近代」という意味です。
つまり、「postmodern」を直訳すると「モダン(近代)より後の時代」となります。
ここから、「一つ前のモダンを乗り越える」という意味を込めて「ポストモダン」と言うようになったわけです。
ちなみに、「前近代」は英語で「premodern(プレモダン)」と言います。「pre」とは「前の」という意味です。
よって、これらの時代を整理すると「プレモダン(近代の前)」→「モダン(近代)」→「ポストモダン(近代の後)」という時代の流れがあったことになります。
ヨーロッパでは「前近代」→「近代」→「現代」という時代の流れがありました。
最初の「前近代」は神様や宗教を重視する時代、次の「近代」は個人や理性を重視する時代でした。
そして、「ポストモダン」はこの「現代」という時代を「近代が終わった後の時代」として位置付けた言葉なのです。
そのため、「ポストモダン」のことを単に「現代」と呼ぶ場合もあります。
ポストモダンの考え方
「ポストモダン」のことを、「脱近代」と訳す場合もあります。「脱近代」とは「近代を見直そうとする態度」のことです。
「見直そう」ということは、近代にも悪い一面があったということになります。
「近代」という時代は、神様よりも人間が主役になった時代でした。人間が主役というのは、つまり、「合理主義」や「ヒューマニズム」を推し進めることです。
「合理主義」や「ヒューマニズム」に共通しているのは、人間の「理性」を重視する考え方です。近代では、人間は理性があるからこそ賢くなれて、理性を発揮したからこそ世界が良くなったという歴史があります。
そして現在、テクノロジーや医学の進歩、ネットの普及など、昔では考えられないほど便利な時代となりました。このように、私たちは今でも「近代」という時代の恩恵を受けています。
しかし同時に、近代の裏には負の側面もありました。例えば、「環境問題」です。
人間は、自分たちの生活を重視しすぎた結果、たくさんの森林を伐採して自然に悪影響を与えたという事実があります。これは、見過ごせない問題だと言えます。
冷静に考えてみれば、近代という時代は人類史上ごく短い期間です。近代は、せいぜい200年~300年の間に過ぎません。
にもかかわらず、当時の人達は近代という時代を当たり前の価値観として生きてきました。それならば、「近代という時代をもう一度見直す必要があるのでは?」と考える人も増えました。
こうして生まれた考え方が「ポストモダン」なのです。
ポストモダンでは、「近代(モダン)」のことを「理性中心主義」として批判しました。
また、「前近代(プレモダン)」の中にも再評価するべきものがあると主張しました。具体的には、宗教や神様、自然などのことです。
これらの中にも一定の大事な要素があるので、ポストモダンの思想に取り入れました。そのため、ポストモダンには、様々な考え方が含まれています。
いずれも共通しているのは「近代を見直そう・乗り越えよう」という考え方です。
すなわち、近代を代表する「合理主義」「ヒューマニズム」「理性中心主義」などの問題点を改善していこうとする考えが「ポストモダン」だったわけです。
ポストモダン建築とは
「ポストモダン」は、建築の用語としても使われます。代表的なのが、「ポストモダン建築」です。
「ポストモダン建築」とは「モダニズム建築への批判から生まれた建築スタイル」です。
「モダニズム(近代)建築」とは、鉄やガラス、コンクリートなどを使った合理性を重視したつくりのことです。
合理性(住みやすさや便利さ)を追い求めた建築なので、装飾性やデザイン性などは重視していません。
そのため、当時の人達からは以下のような意見が起こってきました。
- 「確かに便利で住みやすいけど、なんか四角い箱みたいで味気ないのでは?」
- 「もうちょっとデザインや個性を重視した家にしてもいいんじゃないのか?」
要するに、「感情のない無機質な建築はいかがなものか」ということです。
「ポストモダン建築」とは、このような批判から生まれた言葉だったのです。
したがって、「ポストモダン建築」の特徴としては以下のような物が挙げられます。
- デザイン性を重視する。
- 装飾性を重視する。
- 個性や感性を重視する。
いずれも、モダニズム建築時代の反省が元になっているのが分かると思います。
以上のような経緯もあり、現在では「ポストモダン建築」=「モダニズム建築の対義語」という位置付けになるのが一般的です。
ポストモダン文学とは
「ポストモダン文学」とは「近代文学の特徴に反する特徴を持つ文学」のことです。
「近代文学」では、秩序性、建設性、普遍性、無矛盾性などを重視する作品がほとんどでした。これはすでに説明したように、近代では理性や合理性を重視していたためです。
しかし、「ポストモダン文学」では、このような価値観を作品には取り入れませんでした。
「ポストモダン文学」では、あえて物語の秩序をなくしたり矛盾を与えたりとそれまでの文学に反することを行いました。
言い換えれば、「作品自体から合理性を排除していった」ということです。
ただ、このポストモダン文学という言葉自体に明確な定義があるわけではありません。
西洋はもちろん、アメリカや日本にもポストモダン文学は広まりましたが、具体的にどの境界を持ってポストモダン文学と言えるかはっきりしていないのです。
そのため、哲学や建築と比較すると、文学の分野に関しては明確な範疇はないことになります。
ポストモダンの使い方・例文
最後に、「ポストモダン」の使い方を例文で紹介しておきます。
- ポストモダン思想によって、理性という概念は批判された。
- プレモダンの思想も取り入れたのが、ポストモダン哲学である。
- ポストモダン建築なため、家の色や形などが工夫されている。
- ニューヨークにあるAT&Tビルは、ポストモダン建築として有名だ。
- ポストモダン文学は、当時のヨーロッパに多大な影響を与えた。
- ポストモダンとは、「進歩主義」を見直そうとする考えである。
「ポストモダン」は、主に哲学などの思想、建物などの建築、小説などの文学において使われます。いずれも共通しているのは、「それまでの近代の考え方を見直して乗り越えようとする考え」ということです。
現代文のテーマとしては、それまでの理性中心主義への批判をした後に、このポストモダンを使って話を展開する場合が多いです。文章を読む時は、そういった流れを意識するのがよいでしょう。
なお、最後の「進歩主義」とは「人間の発展によって世界はどんどんよくなるはずだ」という考えのことです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「ポストモダン」=近代を乗り越えたり否定したりしようとする考え方。脱近代。
「ポストモダン建築」=モダニズム(近代)建築への批判から生まれた建築スタイル。
「ポストモダン文学」=近代文学の特徴に反する特徴を持つ文学。
大事なのは「ポストモダン」単体で覚えるのではなく、「モダン」や「プレモダン」と合わせて覚えておくことです。時代の流れを覚えておけば、「ポストモダン」の考えは理解しやすくなるでしょう。