パラダイム 意味 例 わかりやすく 簡単に

「パラダイム」という言葉は、主に「パラダイムシフトする」「パラダイム転換する」などのように使います。

映画やドラマが好きな人は、一度は聞いたことがあるかもしれません。最近では現代文や心理学の用語としても登場しているようです。

このようによく使われている「パラダイム」ですが、一体どんな意味を持っているのでしょうか?今回は「パラダイム」の意味や使い方・例文などを簡単に分かりやすく解説しました。

パラダイムを簡単に

 

まず、「パラダイム」を辞書で引くと次のように書かれています。

【パラダイム】

ある時代に支配的な物の考え方・認識の枠組み。規範。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

アメリカの科学史家クーンが科学理論の歴史的発展を分析するために導入した方法概念。科学研究を一定期間導く、規範となる業績を意味する。のちに一般化され、ある一時代の人々のものの見方・考え方を根本的に規定している概念的枠組みをさすようになった。

出典:三省堂 大辞林

上記2つの辞書から引用しました。

パラダイム」とは簡単に言うと「ある時代における支配的な物の見方や考え方」のことです。

この説明だけだと分かりにくいため、補足を入れましょう。「支配的」とは「当たり前のこと・常識的なこと」だと考えて下さい。

例えば、中世以前のヨーロッパでは「太陽が地球の周りを回っている」という考えが当たり前でした。これを「天動説(てんどうせつ)」と言います。

しかし、時代がどんどんと進むにつれて、人々は「地動説(ちどうせつ)」が常識ということに気づき始めます。「地動説」とは「地球が太陽の周りを回っている」という考え方のことです。

ではなぜ「地動説」が常識と言われるようになったかと言うと、「明らかに地球は太陽の周りを回っている」ということが様々な実験により分かったからです。

具体的には、地球を空から見れる衛星などによって、科学的に実証することができたのです。

そして、「天動説ではどうも惑星の動きを説明できない」という結論がはっきりと出るようになりました。

こうなると、人々は今まで非常識とされていた考え方を逆に常識と認めざるを得ません。これが「パラダイム・シフト」と呼ばれる現象なのです。

「シフト(shift)」とは「移り変わる」、すなわち「物事の根本的な考え方が変わる」ということです。

ちなみに、「パラダイム・シフト」ではなく「パラダイム転換」と言う場合もあります。一見異なる言葉にも見えますが、どちらも同じ意味の言葉です。

パラダイムをさらに詳しく

パラダイム 詳しく 事例

では、「パラダイム」についてもう少し詳しく見ていきましょう。

「パラダイム 」は英語で「paradigm」と書き、元々は「模範」「」などと訳されていました。

ところが、アメリカの「トマス・クーン」という学者によって現在の意味になったのです。

彼は、1962年に「科学革命の構造」という本を刊行します。その本の一節に「パラダイム」という言葉が登場し、科学の歴史や思想を説明する中でこの言葉が有名になったわけです。

「クーン」は「科学は連続的には進歩しない」と主張しました。どういうことか言うと、「科学は革命のように非連続的に変化する」と述べたのです。

人間は生きていく上で、それまでの理論では到底説明できない現象や問題に直面します。先ほど説明した、「天動説」⇒「地動説」への変化もそうでしょう。

そんな時に、「以前と全く異なる考えによって新しい理論が生まれ、考え方の常識が一新されること」を彼は「科学革命」と呼んだのです。

つまり、「古いパラダイムが新しいパラダイムに代わる」ということです。

「パラダイムの変化」は、学問の根本的な枠組みが変わることを意味します。言いかえれば、「世界観が変わること」です。

その後、クーンの主張は多くの誤解釈があったため、後の改訂版では撤回が宣言されています。

しかし、現在でもこの意味から派生し、科学以外の様々な分野で「パラダイム」が用いられています。具体的には、「心理学」「哲学」などの分野です。

これらの分野では、「見方を変える」「固定観念を破る」といった意味でも使われています。

ビジネスでの使い方

パラダイム ビジネス 使い方

「パラダイム」は、ビジネスでも使われています。

ビジネスの場合は、「組織内での常識的な考え方」という意味で使われることが多いです。要するに、「それまで組織で当たり前と考えられていたルール」ということです。

例えば、ある企業が今までは「安いものを多く作って売ること」が利益につながると考えていたとしましょう。しかし、なかなか業績が上がらず壁にぶつかってしまったとします。

そんな時に、「安いものではなく逆に高いものを少しでも多く売ることが利益につながる」と考え直し、抜本的に発想を変えたとします。

このような場合に、「組織内の既存の考えを一新する」という意味で「パラダイムを変える」などと言うわけです。

ビジネスでは、今までやってきた既存のノウハウがあります。

しかし、いつまでも既存のノウハウを使っていては、ライバル企業に追い越されたり時代に取り残されたりと企業自体が遅れをとることになりかねません。

そのため、パラダイムを壊したりパラダイムそのものを変えたりすることが重要となってくるのです。

ただし、「パラダイム」を見直すことが重要だからと言って、何でもかんでも変えればいいというわけではありません。なぜなら、既存の見方や考え方を変えていくのは、簡単にできることではないからです。

「天動説」から「地動説」へパラダイムシフトが起きるまで、おおよそ100年近くもの月日が流れています。

パラダイムシフトという言葉は非常に便利ですが、ビジネスでは本当にそれが多くの人々の価値観を変えられるのかしっかりと精査する必要があるのです。

パラダイムの類義語

パラダイム 類義語 言い換え

続いて、「パラダイム」の類義語を紹介します。

常識(じょうしき)】⇒ある社会で広く認知されている考え方。
規範(きはん)】⇒行動や判断の基準となるもの。
定説(ていせつ)】⇒一般的に認められ、確定的だとされる説。
思考体系(しこうたいけい)】⇒考え方の基本的な枠組みのこと。
価値体系(かちたいけい)】⇒価値の基本的な枠組みのこと。

共通しているのは、「物事への支配的な考えや枠組み」を表すということです。

この中だと、「常識」や「定説」が意味も近く、比較的使われやすい言葉です。

また、「パラダイム・シフト」だと以下のような言葉も類義語と言えます。

  • 革命
  • 変革
  • 改革
  • 一新
  • 常識変化
  • 常識打破

これらの言葉のイメージとしては、「思考が180度変わる」と考えると分かりやすいです。

パラダイムの使い方・例文

 

最後に、「パラダイム」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。

  1. かつては地動説ではなく天動説が一つのパラダイムであった。
  2. パラダイムとは、科学者の行動の指針となるものである。
  3. パラダイムが異なれば、物の見方は正反対に変わるものだ。
  4. 理論の枠組みが劇的に変わることを、パラダイムシフトと呼ぶ。
  5. パラダイム転換により、近代科学は新しい常識へと変わっていった。
  6. 科学革命とは、古いパラダイムから新しいパラダイムへと代わることである。
  7. パラダイムチェンジは、世界の枠組みの根本的な変化を意味する。

 

「パラダイム」という言葉は、主に近代的なテーマを扱った文章に使われます。特に、大学入試現代文ではその傾向が強いです。

近代では、前の時代に比べて科学、宗教、テクノロジ-など多くのシステムが様変わりしました。そのため、「前の時代を支配していた考え方」を表す際に「パラダイム」は使われやすいのです。

その場合は「パラダイム」単体ではなく、「パラダイムシフト」「パラダイム転換」「パラダイムチェンジ」などのように後ろに何らかの言葉が付くことが多いです。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

パラダイム」=ある時代における支配的な物の見方や考え方。

パラダイム・シフト」=古いパラダイムから新しいパラダイムへ変化すること。

ビジネスの意味」=組織内での常識的な考え方

類義語」=「常識・規範・定説・思考体系・価値体系」など

「パラダイムシフト」の方は、一言で「常識変化」「180度変換」などと言い換えることも可能です。この記事をきっかけに、ぜひ「パラダイム」の正しい意味を覚えて頂ければと思います。