「秩序」という言葉は、「秩序を保つ」「秩序を乱す」などのように用います。特に、中学国語や高校現代文の文章にはよく出てくる語です。
ただ、よく目にするにも関わらず、言葉のイメージがつかみにくいと感じる人も多いです。そこで今回は、「秩序」の意味や対義語を、具体例を使いなるべく簡単に分かりやすく解説しました。
秩序の意味・読み方
まず、「秩序」の意味を辞書で引くと次のように書かれています。
【秩序(ちつじょ)】
①物事を行う場合の正しい順序・筋道。
②その社会・集団などが、望ましい状態を保つための順序やきまり。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「秩序」とは簡単に言うと「順序や決まり」のことです。
一般に「秩序」は、「社会や集団が望ましい状態を保つための決まり」という意味で使われることが多いです。分かりやすい例としては、「交通ルール」が挙げられます。
私たちが生活している社会は、交通ルールという決まりごとがあります。もしも交通ルールがなければ、交差点や横断歩道は大混乱になってしまうでしょう。
当たり前のことですが、社会はみんなが交通ルールを守ることによって動いています。このように、交通ルールがしっかりと整備された社会を「秩序が保たれた社会」などと言います。
もう一つ、「秩序」の例を挙げましょう。
組織や集団で生活するには、ルールが必要となります。例えば、「校則」です。
「校則」とは以下のような学校のルールのことを指します。
- 制服を着ること。
- 髪はそめないこと。
- アルバイトは禁止。
- バイク通学は禁止。
このような様々なルールに従ってこそ、生徒は学校に通うことが許可されています。
ところが、ある生徒が何度注意されても制服を着ずに私服で学校へ来たとします。そんな時、制服を着ない生徒のことを「学校の秩序を乱す生徒」などと言うわけです。
人が社会で生きていくためには、必ず「秩序」が必要とされます。逆に言えば、「秩序」がない社会は皆が好き勝手に行動するので、一種のむちゃくちゃな社会とも言えるのです。
秩序の対義語
「秩序」の「対義語」は、「混沌」と言います。意味は以下の通りです。
【混沌(こんとん)】
①天地がまだ開けず不分明である状態。
②すべてが入りまじって区別がつかないさま。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
この場合の「混沌」は、②の意味を覚えておけば問題ありません。
すなわち、「物事が入り混じって区別がつかない様子」という意味です。言いかえれば「順番やルールなどがなく、めちゃくちゃな状態」ということです。
「混沌」の分かりやすい例は、スポーツの順位が挙げられるでしょう。例えば、プロ野球というスポーツは毎年4月~10月までの長い期間で試合をします。
そのため、9月や10月などの終盤になると各チームの順位がはっきりすることがほとんどです。
ところが、場合によってはシーズン終盤になっても複数のチームが上位を争い、最後の最後まで順位が分からない時があります。
そんな時、「優勝の行方は混沌としている」などと言うわけです。つまり、「順位がはっきりせず、複数のチームが上位に入り混じっている状態」ということです。
もう一つ例を挙げましょう。日本だけでなく世界にもルールがあります。世界のルールは「国際法」と呼ばれ、世界共通の法律のことを指します。
しかし、そんな国際法に反して好き勝手をする国が現れたとします。例えば、ミサイルを撃ち込んだりテロ行為をしたりといったことです。
こういったケースでよく使われるのが、「世界情勢が混沌とする」という言い方です。意味としては、「世界のルールなどが破られ、めちゃくちゃな状態になる」ということです。
秩序の類義語
「秩序」の「類義語」は、以下のような語が挙げられます。
- 順位
- 順番
- 規律
- 規範
- 整頓
- マナー
- ヒエラルキー
- コスモス
「秩序」は意味によって大まかに二つの類義語に分かれます。
順位や順番が正しければ「秩序正しく並べる」のように使います。また、規律や規範・マナーなどが守られていれば「秩序を守る」のように使います。
最後の「コスモス」はギリシャ語で「(秩序のある)宇宙」という意味です。
古代のギリシャ人は、宇宙が生まれる前の状態を「カオス(無秩序な状態)」と名付けました。
そして、宇宙というものが誕生して以来、「宇宙」は「秩序ある運行に基づいている」と考えられてきました。この事を「カオス」と対立する概念として、「コスモス」と名付けたのです。
花の名前である「コスモス」も、秩序のある形をしているのが由来と言われています。
秩序=整った状態
「秩序」は「整った状態・整然とまとまっている状態」という意味で使われることもあります。
この場合は主に、高校国語・現代文の用語として使われ、すでに述べた「コスモス」と同じ意味になります。
「コスモス」の対義語は「カオス」なので、「カオス」と対比されながら使われるのが特徴です。
「秩序(コスモス)」=物事が整然としてまとまっている状態。
「混沌(カオス)」=物事が入り混じって区別がつかない状態。
現代文では、「言語」を扱った文章で「秩序(コスモス)」がよく登場します。
内容としては、「人間は言語を用いることで、世界を秩序あるものとしてとらえることができるようになった」というものが多いです。
例えば、高校に入学したばかりの頃は、多くの生徒が校舎のどこにどんな教室があるのか分かりません。
自分がいる教室以外にどこに行っていいのかまったく分からないので、頭の中は混沌とした状態です。
ところが、音楽の授業で音楽室へ行ったり、化学の実験で理科室へ行ったり、学校行事の際に生徒会室へ行ったりすることでだんだんと校舎の様子が分かってくるようになります。
そして、ある程度の期間が過ぎると、校舎の大部分が秩序を持ったものとして頭の中で整理されます。
つまり、混沌としていた状態が「音楽室」「理科室」「生徒会室」などの言葉によって、秩序を持った状態に整理されたと言えます。
このような内容を論じた文章で、「秩序(コスモス)」が使われるのです。
ポイントは、「言語によって秩序を作る」ということです。
本人の頭の中に秩序ある世界が元々あり、そこに後から名前を付けたというわけではありません。最初は混沌とされた頭の中に、言葉を用いることで「秩序」を形作るのです。
人間は他の動物とは異なり、本能が弱く、理性が強い生き物です。
そのため、言語を用いることで世界と直接的な関係を結び、頭の中を整理しているのです。
秩序の英語訳
「秩序」は、英語だと次の2つの言い方をします。
①「order(順序・秩序)」
②「discipline(規律・統制)」
①の「order」は「順序・順番」などの訳です。野球の打順の事を「オーダー」と呼ぶのも同じ意味です。
②の「discipline」は「規律・統制」という訳です。「discipline」は「訓練・修練・しつけ」などの訳もありますが、ここでは「組織内での規律」という意味で使われています。
どちらの単語も使えますが、「order」の方が「(社会の広い)秩序」という意味で幅広く使うことができます。「discipline」の方は「order」よりも秩序の対象が狭いイメージの単語です。
例文だと、次のようになります。
We must keep law and order.(私たちは法と秩序を守らなければならない。)
He disturbed the order in this village.(彼はこの町の秩序を乱した。)
You should keep discipline in the classroom.(あなたはクラス内の規律を守るべきだ。)
秩序の使い方・例文
最後に、「秩序」と「混沌」の使い方を具体的な例文で紹介しておきます。
【秩序の使い方】
- 学校の秩序を乱すような行為はあってはならない。
- 社会の秩序を保つためには、法の整備が必要である。
- 自衛隊は秩序を厳格に守らなければいけない組織である。
- マニュアルに書いてあった通り、秩序正しく商品を並べた。
- 古代人の宇宙完成イメージは、秩序あるコスモスであったと言われている。
- 世界は言語によって分節されるのであり、あらかじめ秩序があるわけではない。
【混沌の使い方】
- ゲーム差2.0以内に上位4チームが入り、優勝の行方は混沌としている。
- この八百屋は色々な野菜や果物が不規則に並べられており、混沌としている。
- 言葉が使われるより前の世界は、秩序はなく混沌とした世界であった。
一般的な文章においては、「秩序」は「決まり」もしくは「順序」という意味で使われます。言い回しとしては、「秩序を守る」「秩序を乱す」「秩序がある」などが多いです。
一方で、現代文においては「整った状態(コスモス)」という意味で使われます。その際は、「混沌」とセットで使われるのが基本です。
たいていの場合、「混沌とした世界に言葉を与えることにより、人間は秩序ある社会を作れた」という内容の文章が書かれます。社会に秩序をもたらすきっかけとなるような話は、入試では頻出のテーマなので覚えておくとよいでしょう。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「秩序」=順序や決まり。整った状態・整然とまとまっている状態(コスモス)。
「対義語」=「混沌(カオス)」(物事が入り混じって区別がつかない様子)
「類義語」=「順位・順番・規律・規範・コスモス」など。
「英語訳」=「order(順序・秩序)」「discipline(規律・統制)」
「秩序」という言葉は、幅広い文章において使われています。これを機にぜひ正しい意味を理解して頂ければと思います。