「へそで茶をわかす」ということわざを聞いたことがありますか?
へそもお茶もどちらもなじみ深い言葉です。ただ、実際にへそで茶を沸かしたことがある人などいないでしょう。
実はこのことわざには面白い由来があったのです。今回は、「へそで茶をわかす」の意味や語源、使い方などを含め詳しく解説しました。
へそで茶をわかすの意味・読み方
まず、この言葉の意味を調べると次のように書かれています。
【へそで茶(ちゃ)を沸(わ)かす】
⇒おかしくてたまらないこと、また、ばかばかしくてしようがないこと。多く、あざけっていう場合に用いる。へそ茶。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「へそで茶を沸かす」は「へそでちゃをわかす」と読みます。
意味は「おかしくてたまらないこと」「ばかばかしくてしょうがないこと」などを表したものです。主に相手がとんでもなくバカげた行動をとったような際に使われます。
例えば、学校一成績の悪い子が「自分は東大を目指す」などと宣言したとします。当然、周囲の人からしたら非常にばかばかしくておかしなことです。
このような場面では、「彼はへそで茶を沸かすことを言い出した」などのように用いることができます。つまり、「非常にばかばかしいことを言った」ということです。
「へそで茶を沸かす」は、笑いは表したことわざですが、ただの笑いではなく相手をバカにしたような笑いを表します。
言い換えれば、相手を軽蔑するような心情が含まれているということです。
なお、「へそ」は漢字だと「臍」と表記します。そのため、「臍で茶を沸かす」と書かれることもあります。意味自体はどちらを使っても全く変わりありません。
へそで茶を沸かすの語源・由来
「へそで茶をわかす」の語源は「へそを茶かす」が転じたものだと言われています。
実は「へそを茶かす」という言い方は、江戸時代の「浄瑠璃」に出てきます。
「浄瑠璃(じょうるり)」とは、三味線を伴奏としながら物語を語ることです。その物語の中で、「へそを茶化す」は「人のへそをバカにして笑いにする」という意味で使われています。
今の社会では、アイドルやモデルなどがへその見える格好を普通にしていますが、当時の人たちは、他人に肌を見せるという習慣がありませんでした。そのため、へそを見せるような変わった人は周りからバカにされていたのです。
そして、「へそを茶かす」が頻繁に使われる内にいつの間にか「へそで茶をわかす」という言い方が定着していきました。
その結果、現在では大笑いして腹がよじれる姿と湯がわきあがる様子が似ているため、「へそで茶をわかす」という慣用句が使われているのです。
つまり、元々の由来としては「お湯」や「お茶」などの意味は含まれていなかったことになります。
なお、「へそで茶をわかす」ではなく「へそが茶をわかす」と書く場合もあります。参考書やことわざ辞典などでは、このように、「へそが茶をわかす」と記述されているケースが意外と多いです。
どちらを使うか迷うところですが、結論としてはどちらを使っても構いません。なぜなら、意味としては、「人間がへそで茶をわかすのか」それとも「へそが自分で茶をわかすか」のわずかな違いだからです。
両方とも「ばかばかしいこと・おかしくてたまらないこと」には変わりありません。したがって、どちらを使っても問題ないのです。
へそで茶を沸かすの類義語
続いて、「へそで茶をわかす」の類義語を紹介します。
以上、慣用句と四字熟語の類義語を紹介しました。
最後の「失笑」の意味は注意が必要です。「失笑」とは「思わず笑ってしまう」という意味です。
よく間違われる意味として、「失笑」⇒「笑いも出ないくらいあきれる」がありますので気を付けて下さい。
基本的には、「あまりにおかしい様子・あまりにバカバカしい様子」などの意味を持つ語が類義語となります。おかしさやバカバカしさの最上級を表す時に、「へそで茶を沸かす」を使うと考えてください。
また、少しマイナーな慣用句だと「へそがくねる」「へそが宿替えする」「へそが入唐渡点(にゅうとうとてん)する」などもあります。
これら三つすべてが「へそで茶をわかす」と同じ意味なので同義語となります。
へそで茶を沸かすの英語訳
「へそで茶を沸かす」は、英語だと次のように言います。
「Pigs might fly.」
直訳すると、「豚が空を飛ぶかもしれない」という意味です。
当たり前ですが、豚が空を飛ぶなんてありえません。そんなありえないおかしな現象を皮肉った表現となっています。
英語では体の一部を使うことわざよりも、このように動物を使ったことわざに置き換えられることが多いです。
また、別の言い方だと、「Don’t make me laugh.」などもあります。簡単に訳すと「笑わせるな!」という意味です。
この言い方は、相手が面白いことを言って笑わせてきた時にも使えますが、バカバカしいことを言ってきた時にも使うことができます。
へそで茶を沸かすの使い方・例文
最後に、「へそで茶をわかす」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 学校一頭の悪い君が弁護士になるなんて。へそで茶をわかすようなものだ。
- 運動音痴の君がプロ野球選手を目指す?へそで茶をわかすことを言わないでくれ。
- カッパを実際に見ただって?ばかばかしい、へそが茶をわかすような発言はよしてくれ。
- 会社ですらまともに仕事ができないのに、起業するなんてへそで茶をわかすようなものだ。
- 明日生きるお金すらないのにお金持ちになる?へそが茶をわかすようなことはやめてくれ。
- 明日で世界が滅亡するだって?そんなマンガみたいなことを。へそで茶をわかすようなもんだ。
「へそで茶を沸かす」は、上記のように良い意味としては使われません。
ほとんどの場合、無謀なことに挑戦しようとする人や突拍子もないことを言ったりする人を軽蔑するような意味合いで用いられます。
したがって、使う場面としては相手がとてもバカげた言動をした時のみにしておくのが無難です。
ただ、とてもキャッチーなフレーズなため、最近では漫画やアニメ・映画などにもよく登場しているようです。このような場面では、一種のユニークさも含めた表現で使われることがまれにあります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「へそで茶をわかす」=おかしくてたまらないこと。ばかばかしくてしょうがないこと。
「語源・由来」=「へそを茶かす」が変化したもの。(昔は人のへそをバカにして笑いにしていたため。)
「類義語」=「噴飯物・片腹痛い・笑止千万・失笑噴飯」
「英語訳」=「Pigs might fly.」「Don’t make me laugh.」
「へそで茶をわかす」は「へそが茶をわかす」などと言ったりもします。基本的には相手をバカにする場面で使う言葉ですので、その使い方には十分注意するようにしましょう。