「狐につままれる」ということわざをご存知でしょうか?主に、突然の事や意外な事が起こった際に使われる言葉です。
ただ、似たような言い方で「狐につつまれる」という言い方を聞くこともあります。どちらが正しいことわざなのか気になる所です。
本記事では、「狐につままれる」の意味や語源、短文、類義語などを詳しく解説しました。
狐につままれるの意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【狐(きつね)につままれる】
⇒狐に化かされる。また、意外な事が起こって何が何だかわからず、ぽかんとする。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「狐につままれる」は、「きつねにつままれる」と読みます。意味は、「意外なことが起こって何が何だか分からず、ぽかんとすること」を表したものです。
例えば、会社の人事などではある日突然、異動が発表されることがよくあります。そんな時に、あまりに急な発表だと、わけが分からずぽかんとしてしまうことはあるでしょう。
このような場面では、「狐につままれたような気分だ」などのように言われることがあります。
つまり「狐につままれる」とは予想外のことが起こり、頭の中が真っ白になる状態を表したことわざということです。信じられない事が起きて、あ然とする様子を表した言葉と考えても構いません。
狐につままれるの語源・由来
「狐につままれる」は、古来から伝わるキツネのずる賢いイメージから生まれた言葉です。昔から、狐は人間を化かしたりだましたりする動物として知られていました。
例を挙げますと、日本民謡の『狐とタヌキの化かしあい・狐の嫁入り』、イソップ童話の『つるとキツネのごちそう』、グリム童話の『キツネとガチョウたち』といった物語です。これらの物語では、狐はずる賢いキャラクターとしてたびたび登場しています。
なぜここまで悪いイメージが広まってしまったかについては諸説ありますが、一つには「伝染病を媒介していたから」だと言われています。
狐はネズミを食べてくれるので、農家の人にとっては益獣という扱いも受けていました。ところが、その分エキノコックスなどのように伝染病を媒介してしまったので、昔から悪いイメージがついて回ったのです。
現在でもこの名残はまだあり、神社などでは鳥居のそばに狐の置物が置かれている所もあります。あれは、「狐には人を騙す力があるので、大切にしておとなしくしていてもらおう」という意味が込められていると言われています。
そのために、わざわざ神社に狐がまつられているのです。「狐につままれる」も、このようなきつねのずる賢いイメージから生まれたことわざということになります。
狐につつまれるは誤用か?
似たような言い方で「狐につつまれる(包まれる)」がありますが、この言い方は誤用です。全くの間違いなので注意してください。
「狐につままれる」は漢字だと「狐に抓まれる」と書きます。「抓む」とは「人をだます・愚弄する」などの意味です。
つまりここでの「つままれる」は、「だまされる」という意味で使われているのです。「物をつかむ」の「つまむ」とは、また別の意味です。
仮に「つつまれる」だと、「狐に包まれる(包囲される)」というよく分からない意味になってしまいます。このことわざは、「きつねに騙されること」からきたものなので、「つつまれる」という言い方はしないようにしてください。
なお、この誤用が広まってしまった理由は「つままれる」と「つつまれる」が似た言い方であったからだと思われます。
狐につままれるの類義語
続いて、「狐につままれる」の類義語を紹介します。
「狐につままれる」は「狐に騙されること」が本来の意味です。したがって、類義語は「信じられない様子」「ぽかんとする様子」「嘘みたいな様子」などを表した言葉となります。
この中でも、「狐にばかされる」は「狐につままれる」とほぼ同じ意味なので、同義語と言っていいでしょう。
狐につままれるの英語訳
「狐につままれる」は、英語だと次のように言います。
「to be bewitched by a fox(狐に魔法をかけられた)」
「to be deceived by a fox(狐にだまされた)」
「fox」は「狐」、「bewitch」は「~に魔法をかける」、「deceive」は「だます」という意味です。通常、英語で「だます」という意味の場合は「deceice」を用います。ただ、魔女文化のある英語圏では、「だます」以外に「魔法をかける」という意味の「bewitch」が使われることもあります。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
He seemed to be bewitched by a fox.(彼は狐につままれたようだった。)
She seemed to be deceived by a fox.(彼女は狐につままれたようだった。)
狐につままれるの使い方・例文
最後に、「狐につままれる」の使い方を例文で紹介しておきます。
- まさか彼がリーダーに選ばれるなんて狐につままれたような気分です。
- 思いも寄らない人物の発表に、全員が狐につままれた表情をしていた。
- 急な昇進通知を受けるなんて、彼は狐につままれたような気分だろう。
- 狐につままれたような彼女の顔が、現場の状況をすべて物語っていた。
- 突然の離婚話を切り出され、彼は狐につままれたような表情をしていた。
- 誕生日会でサプライズを仕掛けたが、弟は狐につままれたような顔をしていた。
「狐につままれる」は、例文のように様々な場面で使うことができます。ただ、いずれも共通しているのは、予想外な場面や思いがけない場面で使うということです。
普通では考えられないようなことが現実に起こったとき、人はあっけにとられたような表情をしてしまうことがあります。そんな時に、自分が想定していた状況と大きく違うことが起こったという意味で、「狐につままれる」を使うようにします。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「狐につままれる」=意外なことが起こって何が何だか分からず、ぽかんとすること。
「語源・由来」=狐のずる賢いイメージから。「つまむ」はだますという意味。
「類義語」=「寝耳に水・青天の霹靂・藪から棒・狐に化かされる」
「英語訳」=「to be bewitched by a fox」「to be deceived by a fox」
「狐につままれる」は、誤用しやすいことわざです。この記事により、ぜひ正しい使い方を学んで頂ければと思います。