誰かからうわさ話を聞いた。
そうした場面で、
「風の便りに聞いたけれど~」などと言いますね。
でも、「なぜ風という言葉を使うの?」と
疑問に思う人も多いのではないでしょうか?
実は「風の便り」は、日本に古くからある慣用句です。
使い方を学ぶとあなたの表現力をより磨くことができるでしょう。
今回は、「風の便り」の意味や語源・使い方などをご紹介します。
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風の便りの意味
まずは、基本的な意味です。
【風の便り(かぜのたより)】
⇒どこからともなく伝わってくる知らせや噂。 ふとした機会。
出典: 三省堂 大辞林
「風の便り」とは、
「どこからともなく伝わってくる知らせ・噂」という意味です。
例えば、次のような使い方をします。
「彼が結婚したことを、風の便りで何となく聞きました。」
例文では、彼が結婚したことを、
「本人ではなく他の人から何となく聞いた」
ということを表していますね。
このように、
「どこからともなく、いつの間にかやってくるような噂のこと」を
「風の便り」と言うわけです。
補足すると、「風の便り」は基本的に
「聞く」という動詞と合わせて使うと考えてください。
【例】⇒「風の便りに聞くと~」。
「風の便り」は「知らせ・噂話」を意味しますが、
「聞く」という動作までは含んでいません。
したがって、
「噂を聞く」という意味で両者をセットで使うわけですね。
風の便りの語源
続いて、「風の便り」の「語源」を確認しましょう。
まず、「風」とは「空気の流れ」を意味します。
具体的な形はないけども、常にふわふわと移動しているモノ、
それが「風」ですね。
そして、「便り」とは「知らせ・手紙」という意味です。
「郵便」などの言葉もあるように、「便」という字は
何かを知らせるような時に使うのです。
以上、2つを組み合わせると、
「どこからか吹いてくる風が運んできた知らせ」という意味になります。
転じて、「人から伝わってきた噂」を表すわけです。
つまり、この言葉は
「出所の分からない噂が風のように運ばれてきた様子」
を表した言葉だったわけですね。
あなたも、風に乗って遠くの音が聞こえたり、
花の香りに気づいたりした経験はありませんか?
私も風が吹くことで普段は気にしない季節の変化を知る時があります。
そういう意味では、
風は自然界の様子を伝える「郵便屋さん」とも言えますね。
実は、「風の便り」という表現は、平安時代からありました。
「花の香を風の便りにたぐへてぞ鴬さそふしるべにはやる」
(どこからか匂う梅の花の香を、風の使者に連れ添わせて、鴬を招く道しるべとして送りますよ。)
出典:『古今和歌集』巻第一・春歌上
これは、紀友則(きのとものり)の和歌です。
「風の便り」が、古典作品にも使われた
とても伝統ある美しい日本語表現だということが分かりますね。
ちなみに、
間違った使い方に「風の噂」があります。
これは「風の便り」と「うわさ」が結びついた誤用です。
すでに確認したように、
「風の便り」自体に「噂」という意味が含まれているため、
「風の噂」だと「噂の噂」となり重複表現になってしまいます。
間違える人が非常に多い表現ですので、気を付けましょう。
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風の便りの類語
続いて、
「風の便り」の類語です。
【人伝(ひとづて)】
⇒人から話を聞いたり、伝えたりすること。
「伝」は「づて」と読みます。
【風聞(ふうぶん)】
⇒噂。噂として聞くこと。
「風」に乗って届いた噂を「聞く」という意味です。
【仄聞(そくぶん)】
⇒噂などで少し耳に入ること。
「仄」という字は、「かすかに・わずかに」を表します。
【又聞き(またぎき)】
⇒話を聞いた人から、さらに聞くこと。
「又」とは、「前にあったことがもう一度繰り返されること」を意味します。
全部で4つ紹介しました。
どの言葉も、「他の人から話を聞く」といった表現です。
「風の便り」は、
「風に吹いて遠くの出来事を知らせる様子」からできた言葉でした。
したがって、
「出所の分からない話を耳に挟む」
という意味の言葉が類語となりますね。
風の便りの英語
続いて、「英語訳」です。
「風の便り」は英語だと次のように言います。
「①rumor(噂)」
「②A little bird told me.(鳥は噂を広める。)」
「rumor」は、「噂」を意味します。
2つ目の「A little bird told me.」は聞き慣れないフレーズですが、
「A little bird」は「小さな鳥」、「told me」は「私に伝える」という意味です。
聖書では、「小さな鳥」が話を伝えるということが信じられてきました。
なので、
「鳥が伝える」で「噂を広める」
という意味になるわけです。
例文だと、それぞれ以下のような言い方をします。
The rumors are surely true.(その噂はきっと本当ですよ。)
A little bird told me that you got married last week.
(風の便りで、あなたが先週結婚したと聞きました。)
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風の便りの使い方・例文
では、最後に「風の便り」の使い方を
例文で確認しておきましょう。
- 風の便りがないのは、元気な証拠です。
- 風の便りに、彼女が就職した理由を聞いたよ。
- 今日はあなたの誕生日だと、風の便りで聞きました。
- 風の便りで聞いたけど、アメリカに留学したって本当?
- 入院していると風の便りに聞きましたが、体調はいかがですか?
- 新人賞を受賞したと風の便りに聞いたので、お祝いを贈りますね。
「風の便り」は、
良い意味でも悪い意味でも使うことができますが、
どちらかと言うと良い意味で使うことの方が多いですね。
良い意味の場合は、
「結婚」「就職」「出産」など明るい話題に対して使います。
この場合は、
文章全体に柔らかくて上品な印象を与えられるのが特徴と言えるでしょう。
逆に、悪い意味の場合は、
「病気」「死」「浮気」など良くない話題に対して使います。
こちらは、
突然の訃報を人づてに聞いてしまったような時に使いますね。
いずれにせよ、
人の話題というのはいつの時代も尽きませんので、
「風の便り」は様々な場面で使える言葉です。
ただ単に、「噂で聞いたんだけど~」という言い方だと
何となく悪いイメージのみで捉えられてしまいます。
なので、
相手に穏やかな印象を与えるためにも
良い噂の時は「風の便り」を使ってみてください。
まとめ
以上、今回の内容をまとめると、
「風の便り」=「どこからともなく伝わってくる知らせ・噂」
「語源」=「風が吹いて、遠くの出来事や知らせを伝える様子」から。
「類語」=「伝聞」「人伝」「仄聞」「又聞」
「英語」=「rumour」「A little bird told me.」
となりますね。
「風の便り」は「他人から聞いた噂話」を表す時に使うと、
上品な文章に仕上げる事ができます。
誰かから明るい知らせを聞いたとき、ぜひ使ってみましょう。
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国語力アップ.com管理人
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