意見や考えを述べる際の立場のことを「観点」もしくは「視点」と言います。どちらもビジネスや政治においてはよく使われる言葉です。
ただ、この二つの使い分けに迷うという人も多いようです。そこで今回は、「観点」と「視点」の違いについて詳しく解説しました。
観点・視点の意味
まず、それぞれの意味を調べると次のように書かれています。
【観点(かんてん)】
⇒物事を考察・判断するときの立場。見地(けんち)。
出典:三省堂 大辞林
【視点(してん)】
①物事を観察する立場。観点。
②遠近法で、投射線(視線)が集まる画面の特定の一点(目の位置)。
出典:三省堂 大辞林
「観点」と「視点」は、辞書では同じような意味として載せられています。この二語について、国語辞典などで明確な違いに触れるものは少ないです。
どちらも「物を見たり考えたりする時の立場」という意味は共通しています。一般的には、次の語が後ろにつくこと多いようです。
- 「〇〇から」
- 「〇〇に立つ」
- 「〇〇がない」
- 「〇〇を変える」
- 「〇〇を示す」
この中でも、「〇〇から」「〇〇に立つ」の二つが用例としては多いです。また、ごく一部の辞書では「視点」=「視線の注がれるところ」という意味を補足しているものもあります。
いずれにせよ、物事を考察したり判断したりする際に「観点」や「視点」を使うわけです。では、大まかな意味が分かったところで両者の使い分けを詳しくみていきたいと思います。
観点と視点の違い・使い分け
「観点」と「視点」の使い分けは、次の①~③で行うことになります。
①思想や世界観など抽象的な見方⇒「観点」を使う。
②叙述・描写・撮影などの芸術作品⇒「視点」を使う。
③基準となる位置が移動する場合⇒「視点」を使う。
上記3つの要素以外は考えなくて構いません。まず、分かりやすいように両者の例文を比較すると次のようになります。
【観点の使い方】
- 教育的観点から説明する。
- 国際的な観点に立つ。
- 環境保護の観点に立つ。
【視点の使い方】
- 若者の視点から描いた絵。
- 大人の視点から記録する。
- 視点を変える必要がある。
「観点」は、抽象的な見方をする場合に使います。簡単に言うと、具体的な形がないものに対しては「観点」を使うわけです。
逆に、「視点」の方は叙述や描写・撮影などの芸術作品に対して使います。例えば、「絵・写真・景色」といったものです。また、「視点を変える」「視点を据える」など元の位置が移動するような場合も「視点」を使います。
なぜこのような使い分けになるのかと言いますと、それは両者の由来に関係しているためです。
「観点」は「point of view」の訳語として明治初期に作られた言葉と言われています。
「view」には「見方・考え方」などの意味があります。ここから、「観点」は「物事を広く考察する見方」として使われるようになったわけです。
一方で、「視点」の方は「point of regard」の訳語として作られました。
元々は、絵画の遠近法にて地平線上の一点を指すことがこの言葉の由来と言われています。
「regard」は「じっと見る・注視する」などの意味が基本です。転じて、「視点」は「物事を注視する見方」として使われるようになったわけです。
整理すると、
「観点」=物事を考察する立場。「視点」=物事を注視する立場。
となります。
つまり、「観点」は「考え方」を指すのに対し、「視点」は「見方」を指すということです。位置が移動する時に「視点」を使うのも、美術用語の名残りがあるからだと言えます。
観点と視点の使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を具体的な例文で紹介しておきます。
【観点の使い方】
- 教育的な観点から、義務教育の必要性を議論する。
- 軍事的な観点から考えると武器は必需品と言える。
- プロと素人ではそもそもの観点が違うので話にならない。
- 専門家の観点から言えば、増税すべきではありません。
- 民主主義の観点に立って、政治や経済について語る。
【視点の使い方】
- この小説は若者の視点から描かれた作品である。
- 少女二人の視点から、次々と真相が語られていく。
- 子供たちの成長を、親の視点で記録しています。
- 視点を変えて、少子化問題について考えていきましょう。
- 数学の問題は、視点を変えて解く必要があるだろう。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「観点」=物事を考察する立場。(考え方)
「視点」=物事を注視する立場。(見方)
「使い分け」⇒「観点」は思想や世界観など抽象的な対象に使い、「視点」は叙述・描写・撮影などの芸術作品に使う。また、位置が移動する場合にも使う。
ポイントは漢字の成り立ちにあると言えるでしょう。どちらも、「物を見たり考えたりする時の立場」という意味は含んでいます。しかし、「視点」の方は元々美術の用語として生まれたので、芸術品などの創作活動について使う場面が多いということです。