「一日一生」という四字熟語をご存知でしょうか?
「一」という数字が入っているので、何となくのイメージは持てるかもしれません。有名人だと元プロ野球選手の松井秀喜さんが座右の銘に挙げていたそうです。
ただ、そもそもこの四字熟語は誰の言葉から来ているのかといった疑問があります。そこで本記事では、「一日一生」の意味や由来、例文、類義語などを詳しく解説しました。
一日一生の読み方・意味
まず、読み方ですが「一日一生」は「いちにちいっしょう」と読みます。
「いちにちいっせい」とは読まないので注意してください。「生」という字は「生涯」「生薬」「生姜」などの熟語があるように、「しょう」と読むのがポイントです。
そして「一日一生」の意味は、大きく分けて次の3つがあります。
①「一日は貴い一生なので、これを空費してはならない。」
②「一日を一生のように生きよ。明日はまた新しい人生である。」
③「一日一日を全生涯と思って生きなさい。」
「一日一生」は、辞書に正式に載せられている四字熟語ではありません。詳しい語源については後ほど解説しますが、比較的近年になって作られた造語だと言われています。
基本的なイメージとしては、①~③のいずれも「一日一日を大切にする」という点は共通しています。ただ、細かいニュアンスは異なるため、今回はそれぞれの意味の違いを解説していきたいと思います。
一日一生の語源・由来
まず、1つ目は「一日は貴い一生なので、これを空費してはならない。」という意味です。これは、「内村鑑三(1861年~1930年)」の『一日一生』という本が元になっています。
「内村鑑三」とは明治時代に活躍したキリスト教思想家・文学家などの肩書をもつ人物です。彼は自著『一日一生』の中で「一日」は「一生」と同じくらい大切であると説きました。
つまり、一日24時間と生涯約80年は等しく重要であると言ったわけです。例えば、学生時代の一日や社会人になってからの一日というのは、人生という長い期間で考えればわずかな時間にしか過ぎません。
しかし、生涯というトータルで考えれば、あの日の一日があったからこそ、自分という人生そのものがあったと痛感するようなことはよくあります。だからこそ、彼は「一日は生涯と同じである」「一日を無駄にしてはいけない」という教訓を私たちに伝えているわけです。
次に、2つ目の「一日を一生のように生きよ。明日はまた新しい人生である」という意味です。これは「酒井雄哉(1926年~2013年)」という天台宗の僧侶の本が元になっています。こちらも同じく『一日一生』というタイトルです。
彼は比叡山延暦寺の千日回峰行を2度満行した人物としても知られ、「一日は一生なので、今日が終わればまた明日が始まる」と説きました。要するに「一日一日が常に新しい人生である」⇒「だからこそ一日を大切にすべきである」と言っているわけです。
1つ目の意味とは違い、こちらの方が「過去のことは振り返らない」という前向きな意味が込められていることに気づくかと思います。
そして、最後の3つ目は「一日一日を全生涯と思って生きなさい」という意味です。これは「松原泰道(1907年~2009年)」という臨済宗の僧侶の言葉が元になっています。彼は同じく下記のような書籍を残しました。
『一日一生の生き方-人はどう生き、どう死すべきか-』
そして、「一日一日」は「全生涯」と同じくらい大切なので、「毎日を必死に生きることをしなさい」と説きました。1つ目の意味と似ていますが、こちらの方がより「一日に対して全力で立ち向かう」という強いイメージの言葉となります。
以上、3つの由来を紹介しました。年代から考えれば「内村鑑三」が最も古いので、「誰の言葉か?」と問われれば「内村鑑三」と言えるかもしれません。
ただ、古くは「西行法師」の漢詩に「一日一生」という言葉も残されているようです。時代で言うと平安時代の話です。ゆえに、誰の言葉が最初かという明確な由来がはっきりと残されているというわけではありません。
一つ言えるのは、いずれの人物も宗教学者であるということです。「内村鑑三」はキリスト教学者、「松原泰道」と「酒井雄哉」は仏教者です。したがって、各人物が宗教的な考えを追究した結果、「一日一生」という四字熟語が広まったということだけは確かだと言えるでしょう。
一日一生の類義語
続いて、「一日一生」の類義語を紹介します。
「一日一生」と似た意味の四字熟語は複数ありますが、いずれも「時間が大事である」という意味では共通しています。ただ、全く同じ意味の言葉(同義語)というのはありません。
他には、四字熟語以外だと「時は金なり」なども類義語だと言えます。「時は金なり」とは「時間はお金と同じくらい大切である」という意味のことわざです。人生は思っているほど短く、時間ほど大事なものはないという教訓を含んだことわざです。
一日一生の英語訳
「一日一生」は、英語だと次のように言います。
Live this day as if it were your last.
一つずつ説明すると、「live」は「生きる」、「this day」は「今日」、「as if were」は「まるで~かのように」、「your last」は「あなたの最後」という意味です。
直訳すると「あなたの最後であるかのように、今日を生きる」となります。英語では数字の「一」などを使うのではなく、このように間接的に一日の大切を説いた表現を用います。
例文だと、次のような言い方です。
You should live this day as if it were your last.(あなたは一日一生で生きるべきだ。)
一日一生の使い方・例文
最後に、「一日一生」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 私の座右の銘は一日一生です。学生時代からずっと変わりません。
- 「一日一生」、今年の抱負は一日の時間を極力大切にすることです。
- 一日一生の教えを元に、日々の人生を前向きに生きていくつもりです。
- 一日一生という生き方に憧れて、彼はついに出家することにしたようだ。
- 酒井雄哉の一日一生という言葉が、今までの悪い自分を変えてくれました。
- 一日一生の心構えで、ビジネスに対しても向き合っていこうと考えています。
- 一日を一生と同じくらい大事と思って生きること。それが「一日一生」である。
「一日一生」という四字熟語は、元々は宗教的な要素が含まれた言葉でした。しかし、現在では座右の銘や抱負などを述べる際に使われることが多いです。
人は人生において何かしらの目標を掲げます。しかし、多くの人はなかなかうまく行かず、その日一日を無駄にしてしまうということも多いはずです。そんな時に、「一日一日」を「一生」と同じくらい大切だと考え、この四字熟語を使うということです。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「一日一生(いちにちいっしょう)」=一日一日を大切にすること。
「語源・由来」=「内村鑑三・酒井雄哉・松原泰道」の書籍から。
「類義語」=「一寸光陰 ・永劫回帰・歳月不待・時は金なり」
「英語訳」=「Live this day as if it were your last.」
「人生」とは今日一日のことだと言えます。「一日一生」という言葉を知ったからには、ぜひ今後の人生でそれを体現して頂ければと思います。