「百家争鳴」という四字熟語をご存知でしょうか?元は中国の春秋戦国時代を由来とするものですが、最近ではビジネスでも用いられることが多くなりました。
ただ、具体的な起源や詳しい成り立ちなどが気になる言葉でもあります。そこで今回は、「百家争鳴」の意味や読み方、語源、例文などを含め詳しく解説しました。
百家争鳴の意味・読み方
最初に、基本的な意味と読み方を紹介します。
【百家争鳴(ひゃっかそうめい)】
⇒数多くの学者や知識人が、それぞれの思想や見解に基づき意見を戦わせ、大いに議論を繰り広げること。
出典:実用日本語表現辞典
「百家争鳴」は、「ひゃっかそうめい」と読みます。
意味は「数多くの学者や知識人が、それぞれの意見を戦わせて自由に議論すること」です。
例えば、テレビの討論番組では様々な知識人が集まり、熱い討論が交わされることがあります。政治家や作家、経済学者、教育評論家、大学教授、ジャーナリストなどはよく出演している人達です。
これらの学者や知識人が集まり、ああでもないこうでもないとそれぞれの意見を交わし合うことは、まさに「百家争鳴」だと言えます。
現代では、テレビ以外にもネットやSNSなどでの討論も当たり前のように行われるようになりました。これらの討論に関しても例外ではありません。
多くの知識人により自由に様々な議論が行われていれば、それは「百家争鳴」ということになります。
百家争鳴の語源・由来
「百家争鳴」の由来は、中国の春秋戦国時代にまでさかのぼります。
まず、「百家」ですがこれは「諸子百家」の「百家」から来ています。「諸子百家」とは、春秋戦国時代に現れた学者や学派を総称した言葉です。
「諸子」は、孔子や老子、荘子、墨子、孟子などの学者、「百家」は儒家・道家・墨家・名家・法家などの学派を指します。
当時は多くの学者たちが、国同士の抗争による混乱を治めようと論争を繰り広げました。それらの学者や学派を合わせて「諸子百家」と言ったのです。
そして、「争鳴」ですがこれは「活発に議論すること」という意味です。「(議論などで)争う」と「鳴く(主張する)」を合わせることにより、「お互いが自由に議論する様子」を表しています。
つまり、この2つを合わせることにより「色々な立場の人たちが議論を繰り広げること」という意味になったわけです。
そして、「百家争鳴」をさらに有名にさせたのが、中国共産党のスローガンの1つである「百花斉放百家争鳴」です。
「百花斉放百家争鳴(ひゃっかせいほうひゃっかそうめい)」とは、1956年、中国共産党の創立メンバーの一人である毛沢東が唱えた政治運動のことです。
毛沢東と言えば中国の政治家として有名ですが、彼は中国共産党に対する批判を広く呼びかけました。その時のスローガンの中に「百家争鳴」が含まれていたのです。
「百家争鳴」の前に付けられた「百花斉放」は、「学問や芸術など色々な活動が、自由・活発に行われること」を意味します。
こちらも当時の中国ではよく使われていました。以上の事から考えますと、「百家争鳴」は「百花斉放」と共に使われるようになった結果、四字熟語として広まるようになったことが分かります。
百家争鳴の類義語
「百家争鳴」を言い換えた言葉はいくつかありますが、「同義語」というのはありません。この中では、「議論百出」が比較的近い意味の言葉だと言えます。
ただ、「百家争鳴」は主に知識人や学者など賢い人を対象とするのに対し、「議論百出」はもっと幅広い一般的な層の人を対象とします。
百家争鳴の英語訳
「百家争鳴」の英語訳は次の通りです。
①「a lively discussion(活発な議論)」
②「everyone can express one’s own opinion」
①の「lively」は「元気な・活発な」などの意味を持つ形容詞です。「議論」を意味する「discussion」と合わせることで、「百家争鳴」と訳すことができます。
また、②は直訳すると「すべての人が自分自身の意見を述べられる」という意味です。こちらも自由に議論を交わすことなので、「百家争鳴」と同じ意味の表現となります。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
We had a lively discussion.(私たちは活発な議論をした。)
It was a time when everyone could express his own opinion.(当時は百家争鳴の時代であった。)
補足として、「百花斉放百家争鳴」の英語訳もご紹介しておきます。
「Hundred Flowers Campaign(百花斉放百家争鳴)」
「campaign」には「(政治などの)運動」という意味もあるので、「百の花の運動」⇒「百花運動」という訳になります。
百家争鳴の使い方・例文
最後に、「百家争鳴」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 有識者が集まった今回の議論は、自由な発言が飛び交い百家争鳴の状態だった。
- 今朝のニュース番組では、最新の事件について専門家たちが百家争鳴していた。
- 春秋戦国時代の中国では、孔子や孟子などの知識人が百家争鳴を繰り返していた。
- 国会での百家争鳴は結構だが、話す内容はちゃんと中身のあるものにしてもらいたい。
- 近所のスポーツバーからは、スポーツ好きの客たちの百家争鳴する声が聞こえてくる。
- 百家争鳴することは大事だが、感情的になりすぎないよう注意しなくてはいけない。
- 色々なことを発信できるネット社会の現代は、まさに百家争鳴の時代である。
「百家争鳴」は、例文のように「学者や専門家などの知識人が自由に議論をする」という意味で使われることが多いです。ただ、必ずしもこのような用例で使われるとは限りません。
例えば、近所の居酒屋やスポーツバーなどでお客が自由に議論することも「百家争鳴」です。また、場合によってはネットの世界でそれぞれの考えを持った人が意見を交わし合うことなども当てはまります。
本来の語源から考えると、「百家争鳴」は難しい問題について頭の良い人達だけで議論するというイメージを持つかもしれません。
しかし、どんな話題、どんな人であろうと、様々な議論を皆が自由に展開することであればそれは「百家争鳴」ということになります。
まとめ
以上、今回のまとめとなります。
「百家争鳴」=数多くの学者や知識人が、それぞれの意見を戦わせて自由に議論すること。
「語源・由来」=「百家」は「多くの学派」、「争鳴」は「活発に議論すること」。中国春秋戦国時代に、国々の抗争を治めようと数多くの学者たちが議論したことから。
「類義語」=「議論百出・談論風発・百花繚乱・百花斉放・賛否両論」
「英語訳」=「a lively discussion」「everyone can express one’s own opinion」
自分の思想や意見を自由に言えるのは、当たり前のようで非常に幸せなことです。色々なことを「百家争鳴」しながら、より良い社会を目指していきたいものです。