土木や上下水道の工事などをすることを、「敷設」もしくは「布設」と言います。建築業界に務めている方であれば、よく目にする言葉でしょう。
ただ、この二つはどのように使い分ければよいのかという問題があります。そこで本記事では、「敷設」と「布設」の違いについて詳しく解説しました。
敷設と布設の意味
まず、「ふせつ」の意味を辞書で引くと次のように書かれています。
【敷設/布設(ふせつ)】
⇒広い範囲に設置すること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
上記のように、「敷設」と「布設」は同じ項目として載せられています。つまり、辞書としての意味はほぼ変わらないということになります。
意味は、「広い範囲に設置すること」です。この場合の「設置」とは、主に土木や建築の現場で使われる言葉となります。
【例】
- 鉄道をふせつする。
- 電線をふせつする。
- 側溝をふせつする。
- 水道管をふせつする。
- ガス管をふせつする。
- 下水道をふせつする。
- 排水管をふせつする。
- ケーブルをふせつする。
このように、何らかの工事をして機械や設備などを備え付けることを「ふせつ」と言うわけです。
敷設と布設の違い・使い分け
「ふせつ」の大まかな意味は理解できました。では、「敷設」と「布設」はどう使い分ければよいのでしょうか?
結論から言いますと、原則として「敷設」の方を使うのが正しいです。ただし、例外もありますのでその辺の詳細を解説していきたいと思います。
まず、「敷設」の「敷」という字は、「一面に伸ばす」「広く行き渡らせる」などの意味があります。これは「座敷」「風呂敷」などの言葉からも分かるかと思います。
一方で、「布設」の「布」は「一面にしく」「広く行き渡らせる」などの意味があります。こちらは、「布教」「散布」などの言葉からも想像できます。
そして、両者に共通する「設」は、「備え付ける・置く」という意味です。
ここからそれぞれの意味を比較すると、
「敷設」=一面に伸ばして備え付けること。「布設」=一面にしいて備え付けること。
となります。
つまり、漢字の語源・成り立ちを見ても、意味自体にほとんど差はないということです。
ではなぜ「敷設」の方を使うべきなのかと言いますと、その理由は過去の歴史に起因しています。
元々、「布設」という字は古くから使われていた漢字ではありませんでした。本来は「敷設」を使っていたのを後から簡単にするために「布設」を追加したのです。
このように難しくて画数の多い漢字を簡易的な漢字にするのはよくあることです。似たような例だと、「附属」⇒「付属」が挙げられます。
以上のような理由により、現在では元からある漢字の「敷設」の方を使っているということです。
ちなみに、新聞やテレビなどの報道機関でも「敷設」を使うことで統一しているようです。これは混乱を避けるためと、漢字本来の字義に沿っているためだと思われます。
使い分けの例外は?
基本的には、「敷設」の方を使えば問題ありません。ただし、この使い分けには例外があります。
それは役所が定める条例などです。特に各市区町村が定める「水道法」などでは「布設」が優先的に使われています。
具体的には、以下のような記述です。
- 水道の布設監督者は~
- 水道の布設工事の基準は~
- 水道の布設に関しては~
つまり、これらの水道法に関する説明では「布設」の方が使われているということです。理由については詳しくは分かりませんが、おそらくは慣習的なものでしょう。
条例というのは、法律に比べて基準がゆるいです。そのため、漢字の由来などは気にせず、ある程度自由に決めているのだと思われます。
以上まとめますと、
「敷設」=報道機関ではこちらで統一。「布設」=水道法など一部の条例のみ。
となります。
なお、ハウスメーカーや工務店などはその地域の水道法に沿って家を建てます。したがって、契約書や見積書などには「水道の布設工事費は~」「水道管の布設については~」などと記すことが多いようです。
敷設・布設の使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【敷設の使い方】
- 新しい物件にエアコンの敷設工事を依頼した。
- 道路に穴をあけて、都市ガスの敷設工事をする。
- 地下トンネルを敷設するのに約2年ほどかかった。
- 電話線が故障したので、業者に敷設工事をしてもらう。
- 鉄道敷設法とは、国が建設すべき鉄道を定めた法律である。
【布設の使い方】
- 水道の布設監督者は、水道法によって基準が定められている。
- ハウスメーカーに水道の布設費用を見積もってもらった。
- 前面道路の水道管は、布設年度が比較的新しいものである。
- 水道管が破裂してしまったので、新しく布設してもらった。
- 水道の布設工事について、管轄の水道局について問い合わせた。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「敷設・布設」⇒広い範囲に設置すること。
「違い」=「敷設」は「一面に伸ばして備え付けること」を表し、「布設」は「一面にしいて備え付けること」を表す。
「使い分け」⇒原則として「敷設」を使い、「布設」は水道にのみ使う。
一般に使う際には「敷設」を使います。その他、新聞やテレビなどのメディアでも「敷設」を使うことで統一しています。ただ、水道法など水道に関する場面では「布設」を使うようにしてください。