「比喩」という言葉は、中学や高校の国語で学習します。特に小説文や詩などの文学作品ではよく使われています。
日常的な場面でも「比喩表現」「比喩的」などの言い方をよく聞くのではないでしょうか?ただ、この言葉は意味が分かりにくいと感じる人も多いようです。
そこで今回は、「比喩」の例文や種類、具体例、英語などをなるべく簡単に解説しました。
比喩の意味や効果
「比喩(ひゆ)」とは簡単に言うと「何かを他の何かに置きかえて表現すること」です。
例えば、「彼は太陽のように明るい子だ。」という一文は、「比喩」を使った表現だと言えます。
なぜなら、「彼の性格の明るさ」を「太陽」に置き換えて表現しているからです。もしも単に「彼は明るい」と言った場合、どれだけ明るいかが読み手には伝わりにくいです。
「比喩」を使い「太陽のように明るい」と表現することで、相手に彼のイメージをわかりやすく伝えられるという効果があるのです。
一般的には、「比喩」は「~のように」を使って表現することが多いです。ただし、場合によっては「~のように」を使わないで表現する場合もあります。
例えば、「人生はドラマだ。」という一文は、「~のように」を使わずに「人生」を「ドラマ」に置き換えています。
「ドラマ」というのは先のことや将来のことが分かりません。つまり、「人生は何が起きるか分からないものだ」ということを比喩を使って表現しているわけです。
このように、「~のように」などを使わない表現であっても、何かを他の何かに置き換えて表現した文であれば、それは「比喩」ということになります。
比喩表現の種類
「比喩」を使った表現はいくつか種類があります。以下の3つは、よく使われる代表的なものです。
- 「直喩法(ちょくゆほう)」
- 「隠喩法(いんゆほう)」
- 「擬人法(ぎじんほう)」
これらの言葉と「比喩」との関係をみていきましょう。まず、「比喩」という大きな項目の中に、上記の3つが含まれていると考えてください。
例えるなら、「スポーツ」という大きな項目の中に「野球」や「サッカー」「テニス」などが入っているようなイメージです。「食べ物」というカテゴリーの中に、「肉」や「魚」「野菜」が含まれていると考えても問題ありません。
つまり、「比喩」は広い意味を持った言葉ということです。
それぞれの意味を説明すると、以下のようになります。
- 「直喩法」⇒「~のようだ」等の語を使って他を例えること。
- 「隠喩法」⇒「~のようだ」等の語を使わないで他を例えること。
- 「擬人法」⇒人間以外の物を人間に例えること。
直喩法とは
「直喩法」とは「“~のようだ”等の語を使って他を例える技法」を意味します。
- 彼の存在はまるで光のようだ。
- 彼女の肌はまるで雪のようだ。
- あいつの心はガラスのように繊細だ。
- 筋トレで鋼のような肉体を手に入れた。
- まるできつねのようにずる賢い性格だ。
いずれも「~のようだ」等の言葉が使われていますが、「直喩法」はその他にもいくつか表現があります。
「~のごとく・~のごとき・~のごとし」
「~みたいな・~みたいに・~みたいだ」
これらの言葉を使った表現も「直喩法」に含まれます。
「直喩」は二つの事柄を比較して片方を他の何かに例えます。そして、例えることによって、読み手に対して物事を具体的に分かりやすく示すのです。
なお、「直喩」は「明喩(めいゆ)」と呼ぶこともあり、「英語」だとどちらも「simile」と言います。「simile」はラテン語の「simile(似ていること)」に由来します。
隠喩法とは
「隠喩法」とは、「“~のようだ”等の語を使わないで他を例える技法」を意味します。
- 彼女は天使だ。
- 彼は裸の王様だ。
- 恋は盲目である。
- 人生はドラマだ。
- 知識は力である。
「隠喩」は「まるで~のようだ」などの語を使わずに、「〇〇は××だ」と言い切ります。最初の例文であれば、「彼女は天使だ」と言い切るのです。
普通に考えれば、彼女は「人」であって「天使」ではありません。しかし、「隠喩」というのは本来イコールで結びつくはずのないものを言い切るのです。
つまり、言い切ることによって、逆に読み手に対して両者の関係性を暗示させるということです。「暗示」とは「はっきりと示さずに、それとなく暗に示すこと」を意味します。
この場合であれば、「彼女は普通の人とは思えないほど美しい存在」ということを暗に読み手に示すことができるのです。
「暗」に示すことから、「隠喩」のことを「暗喩(あんゆ)」と呼ぶ場合もあります。その他には、「英語」を使って「メタファー(metaphor)」と言い換えることもあります。
擬人法とは
「擬人法」とは「人間以外の物を人間に例える技法」を意味します。
- 空が泣いている。
- 草木がほほえむ。
- 小鳥が歌い出す。
- 北風がドアを叩く。
- 月が私達に語りかける。
上の例文は、いずれも主語が人ではありません。「北風」「草木」「小鳥」「北風」「月」、どれも人間以外の言葉です。
このように、人間以外の言葉をあたかも人間のように扱い、文章に深みや味わいを持たせる表現を「擬人法」と言うのです。
「擬人法」の「擬」という字は、「擬態」「模擬」などの言葉があるように「似せる」という意味があります。したがって、人でない物を人に似せたりする表現を「擬人法」と名付けているのです。
擬人法を使うことにより読者にイメージを伝えやすくできるのはもちろんですが、単調な表現を避けられたり文章に生命感を含ませたりすることができます。
その他の比喩表現
「比喩」の種類は、他にも重要なものがいくつかあります。
①「換喩(かんゆ)」
②「提喩(ていゆ)」
③「諷喩(ふうゆ)」
上記3つは直喩や隠喩に比べれば発展的な内容ですが、最近は比較的よく使われるケースが多いため解説しておきます。
換喩とは
「換喩(かんゆ)」とは、「ある言葉をそれと深い関連性のある言葉で置き換える技法」のことです。
例えば、「西洋人」のことを「青い目」と言ったり、「神社」のことを「鳥居」と言ったりするのは「換喩」だと言えます。なぜなら、どちらも関連性のある言葉で置き換えているからです。
「換」という字は「変換」の「換」と同様に、「何かを換(か)える」という意味があるためこのような使い方をします。
提喩とは
「提喩(ていゆ)」とは「全体と部分との関係に基づき、言葉を表現する技法」のことです。
例えば、「先週は友人とお茶をしてきました。」という一文は「提喩」を使っていると言えます。
この場合の「お茶」というのは、緑茶や紅茶、コーヒー、ジュースなどあらゆる飲み物が含まれています。すなわち、「お茶」という言葉一つで、その他の飲み物の意味も含んでいると言えます。
このような技法は、「全体」と「部分」の関係性を使って表現しているので、「提喩」と呼べるのです。
諷喩とは
「諷喩(ふうゆ)」とは「例えだけを提示して、その本義を間接的に推察させる技法」のことです。
次のように、ことわざや慣用句として使用されることが多く、隠喩のように暗示的に示す時に使います。
- 「朱に交われば赤くなる」
- 「燕雀(えんじゃく)安(いずくん)ぞ鴻鵠(こうこく)の志を知らんや」
前者のことわざは、「人は交わる友によって感化される」という意を間接的に表しています。後者のことわざは、「小人物に大人物の心は分からない」という意を悟らせています。
例えによって本義を推察させる技法であれば、それは「諷喩」ということになります。
比喩の類義語・似た表現
「比喩」と似ていますが、実際には異なる言葉もあります。
①揶揄 ②形容 ③象徴
これらの言葉は「比喩」と間違えやすいので特に注意が必要です。
まず、「揶揄(やゆ)」とは「対象を面白おかしく扱うこと」を意味します。主に皮肉めいた批判をして、対象を嘲笑的に扱うような時に使いま
【例】⇒「相手の顔を揶揄する。」「揶揄した絵画。」
「揶揄」と似たような言葉で「風刺」がありますが、「風刺」は対象が社会限定であるのに対し、「揶揄」は人・物・社会など対象が限定されません。
次に、「形容」ですがこれは「物事の姿・性質・ 様子などを言い表すこと」を意味します。
【例】⇒「形容しがたい味だ。」「今回の事件は形容しきれない。」
「形容」という言葉自体には、「比喩」のように何か大きな意味を含んでいるというわけではありません。したがって、上記のように文の中の一部として使います。
そして、「象徴」とは「抽象的な事物を具体的な事物によって表すこと」を意味します。
よくある使い方が、「ハトは平和の象徴」という表現です。「象徴」が抽象的なものを具体的なものに例えるのに対し、「比喩」は具体的なものを他の具体的なものに例えるという違いがあります。
比喩を使った例文
最後に、「比喩」を使った例文を確認しておきましょう。
【直喩を用いた文】
- 彼女はバラのように美しい人間だ。
- 天使のように純粋な笑顔にいやされる。
- 彼は虎のように恐ろしい性格の人間だ。
- 光陰矢の如し。
- 彼はもやしみたいに細い体つきをしている。
【隠喩を用いた文】
- 皆から好かれている彼女は、職場の花である。
- 東大主席卒業の彼は、人間コンピューターだ。
- あいつは鉄の心を持っている強靭な性格の持ち主だ。
- とても同じ人間の知能とは思えない。彼は宇宙人だ。
- この世は皆自分という役を演じている。つまり人生とは舞台である。
【擬人法を用いた文】
- 海が僕たちを呼んでいるような気がするね。
- 今日は本当に静かだ。風が静かに眠っているよ。
- 草花がおだやかに笑っている。心地よい気分だ。
- 春になって小鳥が歌い出すように賑やかになって来たね。
- ペンが走るように、スイスイと原稿を書くことができた。
主な用例を紹介しましたが、これらの例文はあくまで簡単なものです。実際にはもっと多種多様な表現方法があります。
それぞれの詳しい使い方については、下記の記事を参照してください。
まとめ
以上、今回は「比喩」について解説しました。
「比喩」=何かを他の何かに置きかえて表現すること。
「比喩の種類」=「直喩法」「隠喩法」「擬人法」「換喩」「提喩」「諷喩」
「比喩の類語」=「揶揄・形容・象徴」
「比喩」という言葉は様々な技法を含んだ大きな意味を持っています。文章を書く人であれば必須の表現であるため、これを機に内容を理解しておきましょう。