「はらわたが煮えくり返る」という慣用句があります。
人間の感情を表す際によく使われ、「はらわたが煮えくり返る思いだ」などのように用います。ただ、「はらわた」とは具体的に何を指しているのかという疑問を持つ人も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、「はらわたが煮えくり返る」の意味や語源、使い方、類義語などを詳しく解説しました。
はらわたが煮えくり返るの意味・読み方
最初に、この慣用句を辞書で引いてみます。
【はらわたが煮えくり返る(はらわたがにえくりかえる)】
⇒腹が立って怒りをこらえることができない。
出典:三省堂 大辞林
「はらわたが煮えくり返る」は、漢字だと「腸が煮えくり返る」と書きます。
意味は「腹が立って怒りをこらえることができない様子」を表したものです。
例えば、あなたが長年付き合っている親友から裏切られてしまったとします。信頼していた友人から裏切られると、やり場のない怒りが湧いてくるのは当然です。
まして、長年の友人ともなるとあまりに衝撃が大きいですし、恨んでしまうほどの怒りが湧いてくるでしょう。このような場面では、「はらわたが煮えくり返る思いだ」などのように言われることがあります。
つまり、「はらわたが煮えくり返る」とは普通では考えられないほどの激しい怒りを表した慣用句ということです。怒りの最上級を表す慣用句と考えても問題ありません。
ちなみに、「はらわたが煮えくり返る」ではなく、「はらわたが煮え返る」と表現する場合もあります。どちらの言い方でも意味自体は全く同じと考えてください。
はらわたが煮えくり返るの語源・由来
「はらわた」とは「大腸や小腸のこと」を指します。元々、「わた」には「曲がりくねって入り組んだ所」という意味がありました。
現在では「わた」のことを、瓜などの中にある種子を包む綿を指したりもしますが、元々は「わた」は曲がりくねったモノを指していました。そこから転じて、「はらわた(腹わた)」のことを「人間の腸全般」を指すようになったのです。
人体模型などを見ても分かるように、小腸や大腸はヘビのように曲がりくねっています。そのため、「腹の中にある曲がりくねったもの」という意味で「はらわた」と言っていたのです。
話を戻しまして、ではなぜ小腸や大腸が煮えくり返るのかと言いますと、それは中国由来の陰陽五行説に由来しているためです。「陰陽五行説」とは、世の中のすべて(人間の体ももちろん含まれる)は、陰と陽、五行(木・火・土・金・水・)に分けられるという説です。
古代から中国では、内臓の調子は人間の精神と密接に関わりがあると信じられてきました。現在の日本の医学でも、それは言われていることです。ストレスがたまると、胃が荒れたりするのはまさに中国由来の医療から来ています。
そして、人間の内臓のどの部分が怒りと関わっているかと言いますと、これが「小腸(五行だと火)」なのです。つまり、「腸が煮えくり返る」とは人間の怒りを象徴した箇所(腸)が、鍋のようにぐつぐつ煮えたぎる様子を例えて生まれたことになります。
単に腹が立ったからという単純な話から来ているわけではありません。「腸」は怒りという感情と深く結びついているため、このような慣用句が生まれたということです。
はらわたが煮えくり返るの類義語
続いて、「はらわたが煮えくり返る」の類義語を紹介します。
以上が主な類義語となります。いずれも「激しく怒る様子」を表した言葉なので、「はらわたが煮えくり返る」の同義語だと考えて問題ありません。
この中でも比較的よく使われるのが、「堪忍袋の緒が切れる」です。我慢できる袋がパンパンになり、遂にはひもが切れてしまうほどに達することに由来する慣用句です。
はらわたが煮えくり返るの英語訳
「はらたわたが煮えくり返る」は、英語だと次の二つの言い方をすることが多いです。
「be furious(激しく腹が立つ、はらわたが煮えくり返る)」
「blood boil(血が沸騰するほどの怒り)」
「furious」は「激怒した・怒り狂った」という意味の単語です。強い怒りを表す言葉なので、「はらわたが煮えくり返る」と同じ意味として使うことができます。
また、「blood」は「血」、「boil」は「沸騰する、煮えたぎる」という意味の単語です。「blood boil」=「血が沸騰する」となり、「体中の血が沸騰するほどの激しい怒り」という意味で使うことができます。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
My mother would be furious if she knew it.(もし母がそれを知ったら怒り狂うだろう。)
It made my blood boil to hear that.(私はそれを聞いてはらわたが煮えくり返った。)
はらわたが煮えくり返るの使い方・例文
最後に、「はらわたが煮えくり返る」の使い方を例文で紹介していきます。
- 彼のあまりに偉そうな態度に、はらわたが煮えくり返る思いをした。
- 大切な友達をバカにされて、はらわたが煮えくり返るくらい悲しいです。
- はらわたが煮えくり返り、体中に力が入って思わず相手を殴りそうになった。
- 恋人に浮気を繰り返され炊いたことを思い出すと、はらわたが煮えくり返る気持ちだ。
- 大好きだった人に悪口を言われていたなんて、はらわたが煮えくり返るほどの思いです。
- 信じていた人にお金を騙しとられて、はらわたが煮えくり返るほどの怒りを感じています。
「はらわたが煮えくり返る」は、激しい怒りを感じた時や怒りがどうしようもなく収まらない時などに使います。
基本的には、相手に裏切られたり傷つけられたりといった普通では考えられないような事態がまず起こります。その後に、相手へのやり場のない怒りを表現するために、この慣用句を使うといった流れです。
注意すべきは、日常生活のちょっとした怒りなどに対しては使わないということです。この場合は、単に「腹が立った」「怒った」などと言います。
「はらわたが煮えくり返る」は、本当に非常識で誰もが怒り狂うようなことをされた時に初めて使う表現となります。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「はらわたが煮えくり返る」=腹が立って怒りをこらえることができない様子。
「語源・由来」=人間の怒りを象徴した箇所(小腸)が鍋のようにぐつぐつ煮えたぎる様子から。陰陽五行説が由来。
「類義語」=「怒髪天を衝く・怒り心頭に発する・堪忍袋の緒が切れる」
「英語訳」=「be furious」「blood boil」
腹が立って仕方がないという経験は、誰しもあるかと思います。その中でも「はらわたが煮えくり返る」は、怒りの最上級を表す慣用句です。表現の幅を広げるためにもぜひ積極的に使ってみてはどうでしょうか?