今回ご紹介するのは、「遣らずの雨」という慣用句です。
あなたは、こんな経験はないでしょうか?
「友人や恋人と過ごしていて、帰ろうと思った時に雨が降ってきた。」
「でも、内心まだ帰りたくないと思っていたので、雨が止むまでもう少しいよう。」
「遣らずの雨」は、こんな時に使える慣用句です。
それでは以下に、意味や使い方・類語などを解説していきます。
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遣らずの雨の意味
まずは、基本的な意味です。
【遣らずの雨(やらずのあめ)】
⇒訪れてきた人が帰るのを引き止めるかのように降り出した雨。
出典:三省堂 大辞林
「遣らずの雨」とは、
「帰ろうとする人を引き止めるかのように降ってくる雨」のことを言います。
例えば、以下のような使い方です。
そろそろ帰ろうとしたら遣らずの雨が降ってきた。おかげで少し長く彼女と会話ができたよ。
このように、
「帰ろうとしている所にちょうど雨が降ってきて、引き止められる」
という状況の時に使うことができます。
出先で雨が降ると憂鬱な気分になりますよね。
しかし、
まだ帰りたくない時、もう少し一緒にいたい時などは、
雨が降ってくれたおかげで長居ができます。
そんな時に「遣らずの雨」という表現を使えば、
情緒溢れるロマンチックな雰囲気を伝えられるのです。
遣らずの雨の語源
次に、「遣らずの雨」の語源を見ていきましょう。
「遣らず」というのは
「遣る」を否定した言葉ですが、この「遣る」には
「物や人を遠くに移動させる」という意味があります。
今でこそ「やる」という言葉は、
「行う」「与える」など様々な意味がありますよね。
しかし、昔は
「物や人を遠くに行かせる」という意味で使われていたのです。
現在でもその名残はあるため、
別の所から人を配属させることを「派遣」などと言います。
ここにも「遣」という字が使われていますね。
つまり、この「遣る」を否定した「遣らず」が
「人を遠くへ行かせない」という意味になり、
「遣らずの雨」=「人を遠くへ行かせない雨」となったわけです。
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遣らずの雨の類語
続いて、「遣らずの雨」にちなんで、
雨を使ったことわざを紹介したいと思います。
【雨晴れて笠を忘る(あめはれてかさをわする)】
⇒苦しい時に受けた恩を、その時が過ぎると忘れてしまうこと。
雨が晴れると持っていた傘を忘れてしまうように、
「苦しい時が過ぎてしまえば、昔の恩のことは忘れてしまう」という意味のことわざです。
【雨降って地固まる(あめふってじかたまる)】
⇒いざこざや揉め事が起こった後は、かえって前よりも良い状態になること。
「雨が降ることで地面に水が染み込み、その後太陽の光によって水が蒸発することで、以前より固くしっかりとした地面になる」という現象からきています。
「喧嘩や話し合いをした後に、以前よりも仲が深まる」
という意味でよく使います。
【雨だれ石を穿つ(あまだれいしをうがつ)】
⇒コツコツと地道に頑張れば、いつか実を結ぶ。
「雨だれのような小さな力でも、長い年月が経てばいつか石に穴を開けること」から来ています。
以上、3つのことわざを紹介しました。
日本は、世界で2番目に雨の多い国だそうです。
そんな日本だからこそ、雨にまつわることわざや
雨を表現する言葉がたくさんあるわけですね。
遣らずの雨の英語
続いて、英語を紹介します。
「遣らずの雨」を英語にすると、次のようになります。
「rain as if to prevent the guest from leaving(客が離れることを防ぐかのような雨)」
「as if~」は「~かのような」という意味です。
上記の英語は、「遣らずの雨」の意味を英語に直訳した形になるので、説明的な表現になります。
ですので、日本語の意味のように情緒溢れるイメージではありません。
「遣らずの雨」は、日本語独特の曖昧で美しい言い回しということが分かりますね。
また、もう少しくだけた言い方だと、以下のような言い方もできます。
「stay a little longer(もう少し一緒にいて)」
「a little longer」は「もう少し長く」という意味です。
こちらはもっと簡易的な表現ですね。
では、以下にそれぞれの例文を紹介していきます。
It began to rain as if to prevent you from leaving.
(あなたを引き止めるかのように雨が降りだした。)
You can stay with me a little longer ,can’t you?(もう少し一緒にいてもいい?)
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遣らずの雨の使い方・例文
最後に、「遣らずの雨」の使い方を例文で見ていきましょう。
- 遣らずの雨が降ったおかげで、久々に彼女と長く話ができた。
- 遣らずの雨が降ってきたので、もう少しここで本を読むことにしたよ。
- 帰りたそうな彼の姿を見て、遣らずの雨が降ればいいのにと思った。
- もっと一緒に居たかったので、遣らずの雨が降ってきてラッキーだった。
- 友人が帰ろうとしたら雨が降ってきたので、「遣らずの雨だね」と言って長居してもらった。
- 雨の中帰ろうとする彼に「遣らずの雨だから」と、もう少し一緒にいてもらった。
「遣らずの雨」は、基本的に良い意味で使う慣用句と考えてください。
多くは、
「雨が降ってくれたおかげで、まだもう少し一緒に居られる」
「雨が降ってきたことだし、せっかくだからもう少しここにいよう」
などのように、その人のポジティブな心情を表す時に使います。
また、どちらかというと
女性よりも男性が帰る時に使うことが多いです。
この場合は、恋人や大切な誰かに対して
「少しでも長く引き止めておきたい」という気持ちを、
雨に重ね合わせるような時に使います。
最も分かりやすいのが昔の小説などですね。
昔の小説では、直接的な表現を使わずに
あえてこういった慣用句を使いロマンチックな雰囲気を醸し出すことが多いのです。
まとめ
いかがでしたか?
内容を簡単にまとめると、
「遣らずの雨」=訪れてきた人が帰るのを引き止めるかのように降りだした雨。
「語源」=人を遠くへ行かせない雨。(「遣らず」は「遣る」を否定した言葉。)
「雨を使ったことわざ」=「雨晴れて笠を忘る・雨降って地固まる・雨だれ石を穿つ」など。
「英語」=「rain as if to prevent the guest from leaving」「stay a little longer」
ということでした。
「遣らずの雨」は、帰り際のシーンを情緒的に表現できる素敵な言葉です。
「まだ帰りたくない、もっと一緒にいたい」
そんな時にたまたま降ってきた雨を味方につけて、
ぜひこの慣用句を使ってみてください。
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国語力アップ.com管理人
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