「反復法」という技法をご存知でしょうか?
文章を書くプロのライターや小説家、新聞記者などがよく使っているものです。中学の国語であれば、短歌や俳句などの「詩」を中心とした文学作品にも用いられています。
そんな「反復法」ですが、具体的にどのように使えばよいのかという疑問があります。そこで今回は、「反復法」の意味や例文、効果などを簡単にわかりやすく解説しました。
反復法の意味
まず、「反復法」を辞書で引くと次のように書かれています。
【反復法(はんぷくほう)】
⇒修辞法の一。同一または類似の語句を繰り返すもの。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「反復法」とは簡単に言うと「同じ言葉もしくは似た言葉を繰り返した表現」のことです。
別名、「繰り返し」「畳句(じょうく)」「リフレイン」などとも呼ばれています。
例えば、以下のような文は「反復法」を使っていると言えます。
①「助けて。助けて。」
②「会いたい。会いたい。」
①は「助けて」というセリフを繰り返しています。2回同じ言葉を発することで、「強く助けを求めている」という切迫した状況が伝わってきます。
また、②に関しては、その人の「会いたい」という願望が読者にひしひしと伝わってきます。
このように、同じ語句やセリフを繰り返す表現法を「反復法」と呼ぶのです。
「反復法」は「修辞法(しゅうじほう)」の一種で、「修辞法」とは文章やスピーチなどに豊かな表現を与えるための技法のことです。
したがって、文章だけでなく、スピーチなどにも使えるのが「反復法」ということになります。
反復法の例文
「反復法」は、単に同じ語句を繰り返すというわけではありません。
実はその種類によっていくつかのパターンがあります。以下によく使われる技法を紹介しました。
畳語法・畳句法
「畳語法(じょうごほう)」とは「同じ言葉を繰り返す技法」、「畳句法(じょうくほう)」とは「同じフレーズを繰り返す技法」を表します。
主に勢いや激しさの程度を強調するような時に使うもので、「反復法」の中では最もよく使われる技法です。
【畳語法の例】⇒「熱い熱いお湯。」「高く高く飛ぶ。」
【畳句法の例】⇒「本当に嫌だ。本当に嫌だ。本当に嫌だ。」
例文のように、「熱い」「高く」という語句を繰り返すのが「畳語法」、「本当に嫌だ」というフレーズ(セリフ)を繰り返すのが「畳句法」です。
首句反復・結句反復
「首句反復(しゅくはんぷく)」とは「隣り合った文や節の先頭の箇所だけを繰り返す技法」のことです。
【例】同じ町、同じ島、同じ学校で育った仲間たち。
【例】人民の、人民による、人民のための政治。
例文では「同じ」や「人民」という語句を節の先頭で繰り返しています。
一方で、「結句反復(けっくはんぷく)」とは「連続する文や節の最後に同じ語を繰り返す技法」のことです。
【例】昨日もカレー。今日もカレー。明日もカレー。
【例】見た目は良し。品質は良し。値段も良し。
【例】犬が走り、猫が走り、人が走り、今日もにぎやかです。
上の例文では、文や節の最後に「カレー」「良し」「走り」という語が来ているのが分かるでしょう。このように、終わりの部分に繰り返し同じ言葉が来るのが「結句反復」なのです。
「首句反復」と「結句反復」は、どちらも特定の箇所(始めや終わり)を繰り返すような技法です。両者はお互いが正反対の意味を持つので、「反対語」同士の関係ということになります。
前辞反復
「前辞反復(ぜんじはんぷく)」とは「文の最後にある語句を用い、次の文の最初でそれを繰り返す技法」のことです。
【例】⇒昨日より今日。今日より明日。
【例】⇒もう季節は秋。秋ですね。
【例】⇒運転は楽しい。楽しいからこそ注意する。
見て分かるように、「文末で使った言葉」と「次の文頭で使った言葉」が一致しています。
「前辞反復」とはこのように、文と文をしりとりのごとく反復させる技法を表します。
隔語句反復
「隔語句反復(かくごくはんぷく)」とは「文の先頭の語句を最後で再び繰り返す技法」のことです。
【例】⇒王は逝去された、万歳新王!
【例】⇒やっと目標を達成できた、やっと。
文の最初と最後というのは、文中で特に強く強調される2つの箇所です。
そこに同じ語句を置くことにより、読み手にインパクトを与えることができます。
回帰反復
「回帰反復(かいきはんぷく)」とは「しばらく間をおいてから、前に出てきた言葉を繰り返す技法」のことです。
【例】⇒忘れない。いつか大人になっても。 泣いて笑って傷つきながら必死で走った、あの頃のこと…。いつか大人になっても。
「回帰反復」を使う目的は、脇道にそれた文の流れを元に戻すことです。
文章を書いていると話が脱線してしまうことがあります。
そこで、「回帰反復」を使い前の語句を繰り返すことにより、再び同じ話の展開に持っていくことができます。
同語反復
「同語反復(どうごはんぷく)」とは「ある言葉を表すのに同じ言葉もしくは似た言葉を繰り返す技法」のことです。
【例】⇒力とはパワーである。
【例】⇒善人とは善い人である。
【例】⇒未成年の中学生だ。
「同語反復」は別名「トートロジー」とも言い、同義語や、類義語、関連語を表すような時に使います。
「力」を英語で言い換えると「パワー」、「善人」を形容詞と名詞に分けると「善い人」になり、「未成年」は学生だと「中学生」が当てはまるということです。
反復法の効果
「反復法」の効果はどのようなものがあるでしょうか?以下に、代表的なものを3つ挙げました。
①強調できる
1つ目は、「強調できる」という点です。
「反復法」を使うことにより、文章の一部分を強調することができます。
例えば、「もっと頑張りたい。」という一文があったとしましょう。
しかし、この一文だと、どれだけ頑張りたいのかは相手には分かりにくいです。
そこで、「もっともっと頑張りたい」と言うことで、「この人は本当に頑張りたいのだな」ということが相手に伝わりやすくなります。
単に2回同じ言葉を繰り返すだけですが、「反復法」により、文の中で強調したい部分を相手に伝えることができるのです。
②リズムを整える
2つ目は、「リズムを整える」という点です。
「反復法」を上手く使えば、文章に一定のリズムを作り出すことができます。
【例】⇒「自由に生き、自由に稼ぎ、自由に遊ぶ。」
これが例えば、「自由に生きて稼いで遊ぶ。」だと何となくリズムが悪い文となってしまいます。そこで同じ語句を繰り返すことにより、文章に一定のリズムを加えるのです。
文章というのは、一種の音楽と同じような性質を持っています。そのため、音数を無視して書き進めるのではなく、一種のリズムを加えることで読者の心に響くようにできるのです。
③注意喚起する
3つ目は、「注意喚起する」という点です。
「反復法」を使うことにより、相手に強く注意喚起することができます。
【例】⇒絶対に約束は守ってね、絶対に。
上の例文は「隔語句反復」の一種です。
「絶対に」という語句1つだけでも、相手に対しては十分注意を呼びかけることができます。
しかし、さらに反復させることにより、「必ず約束を守らなければいけない」ということを強く相手に呼びかけられるのです。
同じ言葉を繰り返すことで、聞き手はその言葉が脳に定着します。さらに、読者の記憶にも残りやすくなり、結果的に相手への注意喚起につながるのです。
反復法の注意点
「反復法」は便利な表現技法ですが、使う際に注意点があります。
それは、当たり前のことですが、「使いすぎない」ということです。
「反復法」をあまりに使いすぎると、強調の度合いが薄れてしまうということが起こります。
何でもかんでも同じ言葉を反復すると、読者からすると「この人はどんな内容でも繰り返すのだな?」と思われてしまいます。
そうすると、肝心なところで強調したい表現を使ったとしても、相手にとっては「印象に残らない」という事態になりかねません。
「反復法」は確かに魅力的な技法ですが、それは「通常の文章の中に上手く取り入れたら」という条件付きの話です。
通常の文章ではない反復法が異常に多い文章などでは、その役割を発揮できなくなってしまいます。
「反復法」を使う際は、「本当に強調したい部分のみ」「本当に注意喚起したい箇所だけ」といった意識で使うようにしてください。
そうすれば、読者の記憶に残るような深みのある文章にすることができるはずです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「反復法」=同じ言葉もしくは似た言葉を繰り返した表現。(繰り返し・畳句・リフレイン)
「反復法の種類」=「畳語法・畳句法・首句反復・結句反復・前辞反復・隔語句反復・回帰反復・同語反復」
「反復法の効果」=①「強調できる」②「リズムを整える」③「注意喚起できる」
「注意点」=使いすぎない。(強調の度合いが薄れてしまうため)
一言で「反復法」と言ってもその種類は豊富です。状況によってどの反復法を用いるか判断した上で、実際に使って頂ければと思います。