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詩 種類 分類 用語 形式 内容 文体

 

」というのは、いくつかの種類に分けられています。よく聞くのが「自由詩」「定型詩」などの詩です。

ただ、分類の仕方により、それぞれ異なる名前がついているため違いが分かりにくいです。そこで今回は、「詩」の種類や分類の仕方についてなるべく簡単に分かりやすく解説しました。

詩の種類や分類とは

 

まず、「詩」というのは大まかに言うと次の3つに分類することができます。

①「用語(ようご)」・・・文語詩・口語詩(2種類)

②「形式(けいしき)」・・「自由詩・定型詩・散文詩(3種類)

③「内容(ないよう)」・・「叙情詩・叙事詩・叙景詩(3種類)

それぞれ3つの中に個別の名前が付いた詩の名前があります。

「用語」は2種類、「形式」と「内容」は3種類です。

したがって、「詩」というのは「2×3×3=18」で全部で18種類あるということになります。

つまり、18種類あるうちのどの詩に当てはまるかを頭の中で理解するのが重要となってくるということです。

例えば、「用語」が「口語詩」で「形式」が「自由詩」、「内容」が「叙情詩」であれば、その詩は「口語自由詩の叙情詩」となります。

では、大まかな分類が分かった所でそれぞれの詳細をみていきましょう。

詩の用語上の種類

詩 用語上 種類

文語詩とは

 

「詩」は用語上、「文語詩(ぶんごし)」と「自由詩(じゆうし)」に分けることができます。

文語詩」とは「文語体で書かれた詩」を意味し、簡単に言うと「昔使われていた文体で書かれた詩」のことです。

例えば、下記の詩は宮沢賢治(1869年~1933年)の作品ですが、「文語詩」に当てはまります。

いたつきてゆめみなやみし、(冬なりき)誰ともしらず、

そのかみの高麗の軍楽、 うち鼓して過ぎれるありき。

その線の工事了りて、 あるものはみちにさらばひ、

あるものは火をはなつてふ、 かくてまた冬はきたりぬ。

出典:『いたつきてゆめみなやみし(宮沢賢治)』

見て分かるように、私たちが普段使っているような文体ではありません。

文の終わりである語尾が「し」「き」「ふ」「ぬ」など、古語(昔の文体)によって記されています。

このように、今現在使われていない文体で書かれた詩を「文語詩」と言うのです。

口語詩とは

 

一方で、「口語詩」とは「口語体で書かれた詩」のことを意味します。「口語体」とは現在使われている話し言葉のことです。

つまり、私たちが普段から使っている言葉により書かれた詩を「口語詩」と言うのです。

以下、「口語詩」の例となります。

私が両手をひろげても、

お空はちっとも飛べないが

飛べる小鳥は私のやうに、

地面を速くは走れない。

私がからだをゆすっても、

きれいな音は出ないけど、

あの鳴る鈴は私のやうに

たくさんな唄は知らないよ。

鈴と、小鳥と、それから私、

みんなちがって、みんないい。

出典:『私と小鳥と鈴と』(金子みすゞ)

「口語詩」は、先ほどの「文語詩」のように語尾が「し」「き」「ふ」「ぬ」などになっていることはありません。

普段から使われている「い」「よ」のような自然な語尾となっています。

このように、現在使われている話し言葉に基づく文章で書かれた詩を「口語詩」と呼ぶのです。

詩の形式上の種類

詩 形式上 種類

 

次に、「形式上」の種類です。

「詩」は「自由詩(じゆうし)」「定型詩(ていけいし)」「散文詩(さんぶんし)」の3つの形式に分けることができます。

自由詩とは

 

自由詩」とは「音数に一定の形がない詩」のことです。

別の言い方をすれば、「特定のリズムを持っていない詩」と考えれば分かりやすいでしょう。

例えば、以下のような詩は「自由詩」だと言えます。

誰にもいわずにおきましょう。

朝のお庭のすみっこで、 花がほろりと泣いたこと。

もしも噂がひろがって 蜂のお耳にはいったら、…

わるいことでもしたように 蜜をかえしに行くでしょう。

出典:『露』(金子みすゞ)

上記の詩は、特定のリズムや音数があるというわけでなく、自由な音数で書かれています。

そのため、「自由に書かれている」という意味で、「自由詩」と呼んでいるのです。

なお、現在の日本の詩の多くがこの「自由詩」に当てはまります。

定型詩とは

 

定型詩」とは「音数に一定の形を持つ詩」のことです。

分かりやすい例としては、「短歌」や「俳句」が挙げられるでしょう。

「短歌」や「俳句」は詩の一部であり、さらに「定型詩」の中に含まれます。

【短歌の例】

ひむがしの 野にかぎろひの 立つ見えて かへり見すれば 月かたぶきぬ

読み方:ひむがしの のにかぎろひの たつみえて かへりみすれば つきかたぶきぬ

作者:柿本人麻呂

【俳句の例】

菜の花や 月は東に 日は西に

読み方:なのはなや つきはひがしに ひはにしに

作者:与謝蕪村

短歌は「五・七・五・七・七」の31文字から成り、俳句は「五・七・五」の17文字から成るという特徴があります。

どちらの詩も一定のリズムをとって形成されています。

このように、一定の形式を持つ詩のことを「定型詩」と言うのです。

その他、五音と七音を繰り返す「五七調」や、七音と五音を繰り返す「七五調」なども「定型詩」に含まれます。

「定型詩」は音数やリズムを持つので、「自由詩」の反対語ということになります。

散文詩とは

 

散文詩」とは「散文形式で書かれた詩」のことです。

「散文」とは「普通の文章」を意味し、今この瞬間に書かれている文章も「散文」だと言えます。

「散文」は、短い語句によって書かれ、すぐには改行しないのが特徴です。

【散文詩の例】

電車と機関車と衝突(しょうとつ)した。噛(か)み合ったまま庭の築山(つきやま)をころがってゆき、電車は池におっこちた。機関車は躑躅(つつじ)の根で止まって、ちょっとの間、ゼンマイのから音をたてていた。

出典:『兄弟』(丸山薫)

見て分かるように、ほぼ普通の文章と変わらないことが分かるかと思います。

つまり、見かけは普通の文章と変わりませんが、実際は詩であるようなものを「散文詩」と言うのです。

詩の内容上の種類

詩 内容 種類 一覧

 

最後は、「内容上の種類」です。

「詩」は、その内容つまり中身によって「叙情詩(じょじょうし)」「叙事詩(じょじし)」「叙景詩(じょけいし)」の3つに分けることができます。

叙情詩とは

 

叙情詩」とは「作者の感情や心情、思いなどが込められた詩」のことです。

「叙情」の「」は「のべる」という意味を表し、「」は「感情」などの言葉があるように「心の中の気持ち」を表します。

したがって、詩を書いた作者自身の気持ちを述べたような作品を「叙情詩」と言うのです。

【叙情詩の例】

東海の 小島の磯の 白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる

(読み方:とうかいの こじまのいその しらすなに われなきぬれて かにとたわむる)

出典:『我を愛する歌』(石川啄木)

上記の作品は、石川啄木の『我を愛する歌』という「叙情詩」です。

「泣きぬれて~たはむる」という表現には、青春の甘酸っぱさや作者の感傷的な思いが伝わってきます。

また、「我を愛する歌」と題されているように、自分自身に対する陶酔感が込められています。

このような、作者の思いやメッセージが込められた作品が「叙情詩」の大きな特徴です。

「叙情詩」の有名な詩人としては、他に「三好達治」「中原中也」「高村光太郎」などが挙げられます。

叙事詩とは

 

叙事詩」とは「歴史上の人物や出来事などを書いた詩」のことです。

主に神話や事件、伝説、英雄の事跡などをテーマとしたものが多く、その中には作者の心情のようなものは含まれません。

現存する世界最古の叙事詩は『ギルガメシュ叙事詩』ですが、古代においては『イリアス』や『オデュッセイア』『労働と日々』が有名です。

また中世においては、『ベーオウルフ』『ニーベルンゲンの歌』『ローランの歌』などもあります。

日本では、古来から『古事記』や『日本書紀』『万葉集』、『平家物語』などが叙事詩の性質を持っていますが、これらを韻文とする学説は定まっていません。

そのため、日本には元々「叙事詩」は存在しなかったという説もあります。

いずれにしろ、「叙事詩」に近い性質を持つ作品は歴史の流れの中でほぼすべてが小説へと変わっていきました。

そのため、現代ではほとんど見ることがない詩が「叙事詩」だと考えて問題ありません。

叙景詩とは

 

叙景詩」とは「自然の風景などを写生的・客観的に描写した詩」のことです。

「写生的(しゃせいてき)」とは、「ありのまま」「そのまま」という意味です。

すなわち、自然の風景をありのままに描いた詩を「叙景詩」と呼ぶのです。

「叙景詩」は、主に山や川・海・空・雲などの風景を描くことが多く、作者の心情は含みません。

また、仮に風景を表す言葉が出てきたとしても、必ずしも「叙景詩」になるというわけでもありません。

【例】

あんず咲く さびしきいなか

川ぞいや 家おちこち

入り日さし 人げもなくて

麦畑に ねむる牛あり

出典:『水彩風景』(佐藤春夫)

上記の詩は、「川」という自然の風景が書かれていますが、「さびしき」という作者の心情も含まれています。

つまり、「のどかな田舎に流れる川」という意味では「叙景詩」ですが、「人がいなくて物寂しい」という意味では「叙情詩」とも言えるのです。

一般には、作者の心情が含まれた時点で、それは「叙情詩」に分類されることが多いですが、必ずしもそうとは限りません。

詩の内容によっては、明確に分けることができないという場合もあります。

このように、一種の曖昧な定義を持った言葉が「叙景詩」ということになります。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

【詩の種類・分類】

①「用語」・・・「文語詩・口語詩(2種類)

文語詩」=文語体で書かれた詩。

口語詩」=口語体で書かれた詩。

②「形式)」・・「自由詩・定型詩・散文詩(3種類)

自由詩」=音数に一定の形がない詩

定型詩」=音数に一定の形を持つ詩

散文詩」=散文形式で書かれた詩

③「内容」・・「叙情詩・叙事詩・叙景詩(3種類)

叙情詩」=作者の感情や心情、思いなどが込められた詩

叙事詩」=歴史上の人物や出来事などを書いた詩

叙景詩」=自然の風景などを写生的・客観的に描写した詩

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。