「よい」という言葉は、様々な漢字の種類があります。
「彼は成績が良い」「あの人は性格が善い」
また、その他にも「好い・佳い・吉い」なども使われています。これらの漢字はどのように使い分ければいいのでしょうか?
今回は、「よい」の違いについて詳しく解説しました。
良いと善いの意味
まず、「よい」の意味を調べると次のように書かれています。
【良い/善い】
①品質的に上等である。
②美的にすぐれている。美しい。
③能力的にすぐれている。優秀だ。
④身分・家柄が高い。経済的に恵まれている。
⑤倫理・道徳にかなっている。正当だ。
⑥規範・標準に合っている。適格である。
⑦人柄が好ましい。善良だ。
⑧親密だ。むつまじい。
⑨目的にかなっている。ふさわしい。好都合だ。
⑩めでたい。吉である。
⑪利益になる。得だ。
⑫快い。快適だ。
⑬十分だ。整っている。
⑭さしつかえない。かまわない。
出典:三省堂 大辞林
「よい」には、上記のように多くの意味があります。「三省堂 大辞林」によると、「良い」と「善い」は一つの項目として載っているようです。
つまり、辞書の意味としては同じということになります。
主な使い方としては、
- 質がよい。
- 成績がよい。
- 性格がよい。
などがあります。
このように様々な使い方ができる「よい」ですが、厳密に言うと使い分けすべき言葉となります。辞書の記述がすべてではないということです。
良いと善いの違い・使い分け
両者の使い分けを簡単に言うと、
「良い」=すべての「よい」に使える。
「善い」=道徳的に「よい」場合のみ使える。
となります。
「良い」の方は「物事が他のものより優れている」という意味です。
したがって、使い方としては、次のようにすべての「よい」に対して使うことができます。
- 品質が良い。
- 頭が良い。
- 調子が良い。
- 良い文章。
- 良い手つき。
一方で、「善い」とは「道徳的に正しい」という意味です。簡単に言うと「悪に対する善」ということです。
したがって、使い方としては次のように道徳的・倫理的な場面限定となります。
- 善い性格の人物。
- 行儀が善い大人。
- 彼は心が善い。
- 善い行いをする。
以上の事から考えますと、良いは善いを含んだ言葉である事が分かると思います。例えるなら、スポーツという大枠に野球が含まれるようなイメージです。
そのため、基本的には意味の範囲が広い方である「良い」を使えば問題ありません。もしも「善い」を使う場合は、限定的な意味になるということを覚えておきましょう。
好い・佳い・快い・宜い・吉いの意味
「よい」にはその他の漢字もあります。以下は代表的なものです。
- 「好い」⇒(例)香りが好い。
- 「佳い」⇒(例)佳い年を迎える。
- 「快い」⇒(例)機嫌が快い。
- 「宜い」⇒(例)ちょうど宜い。
- 「吉い」⇒(例)運が吉い。
いずれも古くからある言葉ですが、現在はほぼ使われていません。常用漢字に記載されているのは、「良い」と「善い」のみです。
したがって、これらの「よい」は使う場合はすべてひらがなで書くのが望ましいです。ただし、それぞれの本来の意味は微妙に異なりますので、念のため意味を確認しておきましょう。
好いの意味
「好い」の「好」には「人やモノのことが好き」という意味があります。
元々この漢字は「女性が子供を抱く姿」を表す象形文字でした。この事から、「感じがよい様子」を表す言葉として昔からよく使われていたのです。
したがって、「好い」の意味は「良い」とほぼ同じ意味だと考えて問題ありません。
佳いの意味
「佳い」の「佳」という字は、「美しい・優れている」などの意味があります。
現在でも美しい女性のことを「佳人(かじん)」と呼んだりしますし、「佳人薄命」などの四字熟語が使われることもあります。
この事から、「美」を表すよい意味として「佳い」が使われていたのです。具体的には、「美しい年」のことを「佳い年」と言ったり、姿勢のきれいな人のことを「佳い姿勢」などと形容していました。
快いの意味
「快い」の「快」という字は、「心地よい」などの意味があります。
元々この漢字は、「えぐり取る」という意味の「夬」と「心」を表す「忄(りっしんべん)」を組み合わせた象形文字でした。つまり、「悩みなどを取り除いた様子」というのが本来の意味なのです。
ここから、人の気分や気持ちがよい状態のことを「快い」と言っていたわけです。現在では「快い」は「よい」とは読まず、「快(こころよ)い」と読むのが一般的です。
宜いの意味
「宜い」の「宜」には、「よろしい」という意味があります。
元々、「宜」という字は「まな板の上に肉片をのせる」という意味として使われていました。これは昔の戦の前に作る料理の行程で行われていたものです。
この事から、「宜」=「状況に合っている・ほどよい」という意味として使われ、現在の「よい」とほぼ同じ意味として使われていたということです。
主な使い方としては、「ちょうど宜い時期」「始めても宜い」などのように使います。
吉いの意味
「吉い」の「吉」という字は、「大吉」「吉方」などの言葉があるように、「運が良い」という意味があります。
この事から、おめでたい様子を喜んだり祝ったりするような時に昔から使われていました。具体的には、「運勢が吉い」「幸先の吉いスタート」などの使い方です。
このように、人の運勢や縁起を表すような時に「吉い」はよく使われています。
「よい」の使い方・例文
最後に、「よい」の使い方を改めて例文で確認しておきます。
【良いの使い方】
- 品質の良いパソコンを買ったので、長持ちしている。
- テストで良い成績を収めたので、先生からほめられた。
- 来年はもっと待遇が良い会社に転職するつもりです。
- 健康には特に気をつけているため、体の調子が良い。
- 第一印象は笑顔が素敵なので、おそらく良い性格だろう。
【善いの使い方】
- あなたのように心の善い人は非常に珍しい。
- 彼女は、周りが尊敬するほど善い性格の持ち主だ。
- 行儀の善い子供なため、周りから怒られることがない。
- 日頃から善い行いをしている人は、運がよくなりやすい。
- 仏教で大事なことは、人のために善い行いをすることだ。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「良い」=すべての「よい」に使える。
「善い」=道徳的に「よい」場合のみ使える。
「好い・佳い・快い・宜い・吉い」=常用漢字ではないので、原則ひらがなで書く。
基本的には「良い」を使うようにし、「善い」は限定的な場面で使います。その他の「よい」に関しては漢字で書いても構いませんが、原則的にはひらがなで書くようにしましょう。