「迎合」という言葉をご存知でしょうか?主に「相手に迎合する」「迎合主義」などのように使います。
ただ、具体的にどのように使えばよいか分かりにくい表現でもあります。そこで今回は、「迎合」の意味や読み方、類語・反対語などを含め簡単に分かりやすく解説しました。
迎合の意味・読み方
まずは、基本的な意味と読み方からです。
【迎合(げいごう)】
⇒自分の考えを曲げてでも、他人の気に入るように調子を合わせること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「迎合」は「げいごう」と読みます。意味は「自分の考えを曲げてでも、他人の気に入るように調子を合わせること」です。
「迎合」は、上司との付き合い方を例にすると分かりやすいでしょう。
例えば、会社の上司の意見が「A」だったとします。しかし、自分の意見としては「B」でした。
もしも上司が「A」と主張しているのに、自分は「B」と主張し続ければ、たちまち関係は悪化してしまうでしょう。
そこで、「上司に嫌われたくないからとりあえずAにしとこう」などのように判断することを「迎合する」と言うのです。
つまり、「迎合」とは「相手に気に入られるように、上手く自分の考えを合わせる行為」を指す言葉ということです。言いかえれば、「相手のご機嫌をとること」とも言えます。
迎合主義とは
「迎合」は、政治の用語としてよく使われます。それは、「迎合主義(げいごうしゅぎ)」と呼ばれる言葉です。
「迎合主義」とは「相手の考え方に合わせようとする考え方」のことを意味します。
頭に「大衆」という言葉がつき、「大衆迎合主義」と言う場合もあります。
「大衆迎合主義」とは、英語で「populism(ポピュリズム)」とも呼ばれ、「大衆に気に入られるような政治をすること」です。
つまり、「多くの人に気に入ってもらえるように、調子を合わせる政治」ということです。
一般的に、「ポピュリズム」は否定的な意味として使われることが多いです。なぜなら、大衆にゴマをすったり利用したりする考え方だと思われているからです。
特に大衆の欲望や不安などを煽るような悪い政治をした場合によく使われます。ポピュリズム自体は、良い意味として使われることはほとんどありません。
迎合の類義語
「迎合」の類義語には、以下のものがあります。
「迎合」の類義語は「機嫌をとる」という意味の言葉が多いです。
理由は簡単で、迎合すると結果的に相手の機嫌をとることにも繋がるからです。
そのため、「迎合」=「相手の機嫌をとること」と言いかえても構いません。
迎合と協調の違い
「迎合」と似たような言葉で「協調」があります。
「協調」とは「利害や立場などの異なる者同士が互いに協力し合うこと」です。
「迎合」と「協調」の違いは、「合わせる行為が一方的かどうか」だと言えます。
「迎合」は相手に対して一方的に合わせることですが、「協調」は相手とこちらが双方的に合わせることです。
つまり、「協調」の方はお互いが納得して調子を合わせるということです。
迎合と同調の違い
「同調」とは「相手や周りに対して調子を合わせること」です。
「同調」は、相手に嫌々合わせる行為ではありません。あくまで、相手の意見に賛同した上で自分の意見を合わせます。
対して、「迎合」は、内心は相手の意見に反対している場合でも自分の意見を合わせます。
迎合と共感の違い
「共感」とは「他人の意見や感情などにその通りだと感じること」です。
「共感」は、相手に対して合わせるのではなく、自分自身がその通りだと感じた時のみ使います。この点で、無理に相手に合わせようとする「迎合」とは異なる言葉です。
また、「共感」は「感」という字が入っているように、実際に自分が感じ取るような場面で使うことが多いです。
迎合の対義語・反対語
「迎合」の「対義語」は以下の通りです。
「迎合」は、相手の言いなりになることでした。そのため、反対語は「相手に対して逆らったり指摘したりすること」を表す言葉となります。
この中では、「批判」と「反論」がよく使われる言葉だと言えるでしょう。
迎合の英語訳
「迎合」は、「英語」だと次のように様々な言い方があります。
- 「flatter(お世辞を言う)」
- 「assentation(上辺だけの同意)」
- 「cater to~(~に応じる)」
- 「go along with~(~に賛成する)」
- 「pander to(へつらう・迎合する)」
この中では「flatter」と「pander to」が使いやすい単語です。
「flatter」は「お世辞を言う・おべっかを使う」などの訳で日本語の「迎合する」と同じ意味として使うことができます。
また、「pander」は「へつらう」という意味なので、同じく相手にお世辞を言うような時に使うことが可能です。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
She is good at flattering.(彼女はお世辞を言うことが得意である。)
Don’t pander to him.(彼にはこびへつらわないようにしなさい。)
なお、「大衆迎合主義」の場合は「populism」と言います。
これはすでに説明したように、日本語だと「ポピュリズム」とそのまま訳します。
迎合の使い方・例文
最後に、「迎合」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。
- 目上の人にばかり迎合する性格は、周りから嫌われるだろう。
- あの作家は、自分の本を売るために読者に迎合するタイプだ。
- 日本の官僚は政治家という権力に対して、迎合する傾向にある。
- 最近のテレビ番組は大衆迎合主義のため、ありきたりでつまらない。
- 消費税を完全に撤廃するなどの大衆迎合的な政策は、現実味がない。
- 彼は上司に迎合したり忖度したりする性格として知られている。
「迎合」という言葉は、基本的に否定的な使い方をします。なぜなら、「迎合」には「相手に気に入られようとする」という一種のずる賢さが含まれているからです。
もし仮に、「単に相手に合わせる」という意味ならば、柔軟性や協調性という良い意味でも使えるでしょう。しかし、多くの場合、自分の出世や利益のために相手に合わせるという悪い意味の場合がほとんどです。
例えば、3.の例文の「権力に迎合する」という言い方が分かりやすいです。「権力」とは「国や政府などの国家機関」を指し、簡単に言うと「政治家の力」を意味します。
官僚は政治家の元で仕事を行っているので、「政治家に迎合する」ということは日常茶飯事です。政治家に対して迎合するかしないかによって、自分の出世が大きく変わってきます。
ところが、あまりに政治家の言いなりになると、行政の仕事に偏りが出てしまいます。そのため、「権力に迎合するのは良くない」という意味で否定的に使われるのです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「迎合」=人の気に入るように調子を合わせること。相手の機嫌をとること。
「迎合主義」=相手の考え方に合わせようとする考え方。「ポピュリズム」とも言う。
「類義語」=「ゴマをする・おべっかを使う・機嫌をとる・鼻息をうかがう」など。
「対義語」=「批判・反論・指摘・反抗」など
「英語訳」=「flatter」「assentation」「cater to」「go along with」「pander to」
「迎合」という言葉は、普段の生活だけでなくビジネスなどでもよく使われます。「迎合」を全くしないで生きて行くことは難しいです。しかし、あまりに相手に合わせすぎる人は、周りから反感を買うということも覚えておきましょう。