頭隠して尻隠さず 意味 使い方 例文 語源 由来

「頭隠して尻隠さず」ということざは、誰もが一度は聞いたことがあると思います。

ただ、この「頭」と「尻」というのは何を意味しているのかという疑問があります。つまり、人間なのかそれとも他の違う動物を指しているのか?ということです。

そこで本記事では、「頭隠して尻隠さず」の意味や由来、類義語などを含め詳しく解説しました。

頭隠して尻隠さずの意味・読み方

 

最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。

【頭隠して尻隠さず(あたまかくしてしりかくさず)】

悪事や欠点の一部を隠して、全部を隠したつもりでいる愚かさをあざけっていう。

出典:三省堂 大辞林

頭隠して尻隠さず」は、「あたまかくしてしりかくさず」と読みます。意味は「悪事や欠点の一部を隠して、全部を隠した気でいる様子」を表したものです。

例えば、企業内部における悪事をバレないように経営陣が隠そうとしたとします。ところが、口裏合わせをしただけで実際には世間にバレてしまいました。

このような場面では、「頭隠して尻隠さず」が使われることがあります。つまり、隠したつもりでいるものの、実際には悪事がバレてしまったということです。

大事なのは、当人は隠したつもりでいるという点です。このことわざは、周りからは気づかれているけども、当人は気づいていない状況を表しています。したがって、多くの場合その人の愚かさをあざけるような否定的な意味として使われます。

頭隠して尻隠さずの語源・由来

 

「頭隠して尻隠さず」は、どの動物が元になってできたのでしょうか?

実はこのことわざは「キジ」という鳥の行動が由来です。以下に、簡単な逸話を紹介しておきます。

ある時、狩人に追いかけれていたキジが、草むらの中に身をひそめていた。キジは「この草むらの中なら大丈夫だろう」と考えていた。

ところが、いざ隠れる時には頭を草に突っ込んだだけで尾っぽは丸見えであった。そして、キジはそのことに全く気づかず、隠れた気になっていた。

結果的に、尾が突き出ていたキジはいとも簡単に狩人に捕らえれてしまったのである。

つまりこの話が元になり、現在のことわざができたわけです。

私たちの日常生活でも、このような出来事はよくあるでしょう。例えば、かくれんぼをした時には鬼から必死に隠れます。

しかし、頭だけを隠しても尻が見えていてはすぐに鬼に見つかってしまいます。同様に、物事は隠すところはしっかりと全て隠さないといけないのです。

もちろん、悪いことまで隠してはいけませんが、このことわざには隠すべきことは隠すべきであるという教訓が元になっています。

頭隠して尻隠さずの類義語

頭隠して尻隠さず 類義語 言い換え

続いて、「頭隠して尻隠さず」の類義語を紹介します。

雉の隠れ(きじのかくれ)】⇒一部分だけ隠して、隠れているつもりでいること。キジが草の中に頭だけを隠し、尾が出ているのに気付かないことから。
団子隠そうより跡隠せ(だんごかくそうよりあとかくせ)】⇒物事はつい見逃しそうな所から、思いがけず露見する。隠れて団子を食べた時は、残った団子を隠すよりも食べた跡を隠すべきことから。
身を蔵し影を露わす(みをかくしかげをあらわす)】⇒欠点の一部は隠せるが、すべてを隠すことはできない。体を隠したつもりでも、影は見えてしまうことから。
柿を盗んで核を隠さず(かきをぬすんでかくをかくさず)】⇒悪事を働いた後に、証拠を隠しきれずにバレること。柿を盗んで食べておきながら、肝心の種(核)を隠さないことから。

以上、4つのことわざを紹介しました。他には、似たような言い方だと「頭隠して尾を出す」「頭隠して尻を出す」などもあります。

これらのことわざは、「頭隠して尻隠さず」の同義語だと言えます。その他、「バレる・露見する」などの言葉で言い換えることも可能です。

頭隠して尻隠さずの英語訳

 

「頭隠して尻隠さず」は、英語だと次のように言います。

The foolish ostrich buries his head in the sand and thinks he is not seen.

「foolish」は「愚かな」、「ostrich」は「ダチョウ」、「buries」は「bury(~を埋める)」の複数形、そして、「sand」は「砂」を意味します。以上の事から、「愚かなダチョウが頭を砂に入れ、見つからないと思っている」という訳になります。

日本のことわざの場合、由来となったのはキジでしたが、英語の場合はキジではなくダチョウで表します。どちらも「鳥」という共通点はありますが、この場合はたまたま鳥であったと考えるのが妥当でしょう。

また、その他の言い方としては、次のような表現もできます。

Protect yourself at all points.(あなた自身の全てを守りなさい。)

裏を返せば、「(全てを守れていないので)守れ!」ということです。

頭隠して尻隠さずの使い方・例文

 

最後に、「頭隠して尻隠さず」の例文を紹介しておきます。

  1. 食い逃げした客の免許証が残っていた。まさに頭隠して尻隠さずだね。
  2. 頭隠して尻隠さず」ではこちらも困ります。詰めを甘くしないように。
  3. 彼らは否定しているけど、明確な証拠がある。頭隠して尻隠さずである。
  4. 頭隠して尻隠さず。口裏を合わせただけじゃ、私をごまかせなかったね。
  5. 口にアイスがついているのに食べていないだと?頭隠して尻隠さずだよ。
  6. やっぱりあの企業の悪事は暴かれたようだね。頭隠して尻隠さずですよ。

 

「頭隠して尻隠さず」は、日常生活からビジネスまで幅広い場面まで使うことができます。ただ、いずれの場合も基本は否定的な意味として使われます。

例えば、隠した気でいる人の愚かさをバカにしたり、視野が狭い人の不器用さを指摘したりといった用例です。あるいは、その場しのぎの浅はかさに幻滅するような使い方をすることもあります。

逆に、良い意味として使われることはまずないと考えても問題ありません。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

頭隠して尻隠さず」=悪事や欠点の一部を隠して、全部を隠した気でいる様子。

語源・由来」=キジが草むらに隠れる時に、頭を突っ込んだだけで尾は丸見えだったため。

類義語」=「雉の隠れ・団子隠そうより跡隠せ・身を蔵し影を露わす・柿を盗んで核を隠さず」

英語訳」=「The foolish ostrich buries his head in the sand and thinks he is not seen.」

「頭隠して尻隠さず」は、キジの尾が丸見えだったことからできたことわざです。由来を知ったからには、ぜひ正しい使い方をして頂ければと思います。