「足蹴にする」という慣用句をご存知でしょうか?
日常生活からビジネスまで幅広く使われており、「足蹴にされる」などのように用いられます。ただ、実際にどのように使うのか分かりにくい表現でもあります。
そこで本記事では、「足蹴にする」の意味や語源、例文、英語訳などを詳しく解説しました。
足蹴にするの意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【足蹴にする(あしげにする)】
⇒足でもって蹴り飛ばすこと。ぞんざいに扱ったり酷い扱いをすることなどを表す際に用いる言い回し。
出典:実用日本語表現辞典
「足蹴にする」は、「あしげにする」と読みます。「蹴」は「け」とは読まないので注意してください。
意味は、「物事をぞんざいに扱ったりひどい扱いをしたりすること」を表したものです。また、単に「足を使って蹴り飛ばすこと」を指す場合もあります。
例えば、会社内の仕事で上司に対して決裁書を作成したとしましょう。ところが、上司からは「こんな決裁書じゃだめだな。」「やる気あるのかお前?」などと言われました。
挙句の果てには、提出した書類を破かれてゴミ箱の中に捨てられる始末です。このような場合には、「上司から足蹴にされた」などと言うことができます。
つまり、「足蹴にする」とは相手に対してひどい扱いやむごい仕打をするような行為を指す慣用句ということです。主に、相手の要求を乱暴に却下するような時に使われます。
足蹴にするの語源・由来
「足蹴にする」は、文字通り足で蹴る様子から生まれた言葉です。「蹴る」という動詞は、「ボールを蹴る」「石ころを蹴る」などのように何かを足で蹴飛ばすような時に使われます。
スポーツやゲームなどであれば話は別ですが、普通に生活していて物を蹴飛ばすということはありません。仮に蹴飛ばすとすれば、どうでもよいと考えている品物だったり価値がないと自ら認識しているガラクタだけでしょう。
この事から、「足で蹴る」⇒「足蹴にする」⇒「物事をひどく扱う」という意味になったと言われています。
「足蹴」という漢字をよく見ると、「蹴」という字にも「足」が含まれています。つまり、この慣用句は「足」という字をあえて重ねることにより、物事をひどく蹴飛ばすことを強調した言葉ということです。
なお、「あしげ」の「げ」は動詞「蹴る」の連用形である「け」が名詞化したものです。「げ」は、名詞「足」に続くことで濁った字音となっています。
足蹴にするの類義語
続いて、「足蹴にする」の類義語をご紹介します。
- 冷遇する
- 突き放す
- 邪険にする
- 相手にしない
- 冷たくあしらう
- いい加減に扱う
- 蹴り飛ばす
- 蹴りを入れる
- 蹴りを食らわす
- 面目をつぶす
- 面目を失わせる
- 顔に泥を塗る
- 却下する
- 一蹴する
類義語は、「ひどく突き放す・いい加減に取り扱う」といった意味を持つ言葉となります。そこから派生して、「面目をつぶす」など相手のプライドを傷つけたり羞恥心を抱かせたりする行為も類義語に含まれます。
その他、ことわざでは「鼻であしらう」なども類義語と呼べるでしょう。「鼻であしらう」とは「相手の言葉に取り合おうとせず、冷淡に扱う」という意味です。
最後の「一蹴(いっしゅう)する」はよく使われる表現なので、補足を入れておきます。「一蹴する」とは要求や抗議などを、簡単にはねつけることです。強い立場の者を主語にして、弱い立場の者に対して使われることが多いです。
「足蹴にする」と「一蹴する」の違いですが、「一蹴する」には「ひどく扱う」という意味までは含まれません。ここが両者のわずかな違いだと言えます。あくまで、「一蹴」の方はあっさりと拒否することを表した言葉となります。
足蹴にするの英語訳
「足蹴にする」は、英語だと次のような言い方があります。
- ①「kick(蹴りを入れる)」
- ②「treat badly(ひどく扱う)」
- ③「treat somebody cruelly(残酷に取り扱う)」
- ④「treat someone without consideration(ぞんざいに扱う)」
①の「kick」は日本語でも「キック」があるように、蹴りを入れることです。人やモノに対して物理的に蹴りを入れるような時に使います。②の「badly」は「ひどく」という意味の副詞、「treat」は「扱う」という意味の動詞です。
③の「cruelly」は「残酷に」という意味の副詞、④の「consideration」は「考慮・思いやり」という意味の名詞です。「思いやりなしに扱う」=「ぞんざいに扱う」という訳になります。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
He was kicking the ball in the park. (彼は公園でボールを蹴っていた。)
She was treated badly by her uncle.(彼女はおじからひどい扱いを受けていた。)
You should not treat somebody cruelly.(あなたは人を残酷に扱うべきではない。)
Don’t treat someone without consideration.(人をぞんざいに扱うな。)
足蹴にするの使い方・例文
最後に、「足蹴にする」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 彼は性格が良さそうに見えるが、部下を足蹴にするような人だ。
- 相手のご厚意を足蹴にするなんて、あいつはとんでもない奴だ。
- お金に困っているので友人に助けを求めたが、足蹴にされた。
- 今まで世話になった人を足蹴にするとはなんと恩知らずな奴だ。
- 父は厳格な性格ですが、私を足蹴にするようなことはありません。
- 激怒した男は、その場で相手を足蹴にした後、右拳で強く殴りつけた。
「足蹴にする」は最後の例文のように、「足で勢いをつけて蹴る」という意味で使うことも可能です。ただ、実際の用例しては「ぞんざいに扱う・ひどい仕打ちをする」という意味として使うことがほとんどです。
多くの場合、相手の頼み事や要求に対して、雑に扱ったり不作法な対応をしたりする時に使います。足蹴にするような人は、基本的に自分の利益のために相手にむごい扱いをしていると考えてよいでしょう。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「足蹴にする」=物事をぞんざいに扱ったりひどい扱いをしたりすること。
「語源・由来」=足で物を物理的に蹴る様子から。
「類義語」=「突き放す・邪険にする・面目をつぶす・鼻であしらう・一蹴する」
「英語訳」=「kick」「treat badly」「treat somebody cruelly」「treat someone without consideration」
人はめったなことがない限り、足で蹴ったりはしません。逆に言えば、「足蹴にする」はそれほど相手に対してひどい言動をするような時に使われる慣用句だと覚えておきましょう。