昔取った杵柄 意味 使い方 由来 類語 英語

「昔取った杵柄」ということわざをご存知でしょうか?

普段の文章やビジネスでも用いられている言葉です。ただ、具体的な由来が気になるという人も多いと思われます。

そこで本記事では、「昔取った杵柄」の意味や語源、使い方、類義語などを含め詳しく解説しました。

昔取った杵柄の意味・読み方

 

最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。

【昔取った杵柄(むかしとったきねづか)】

過去に鍛えた腕前。若いころに身につけた技能。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

昔取った杵柄」は、「むかしとったきねづか」と読みます。意味は「過去に鍛えて習得した腕前や技能」のことです。

例えば、編み物の技術が非常に優れたおばあさんがいたとします。通常であれば、年を取ると目が悪くなり細かい作業は苦手になってしまいます。

ところが、このおばあさんは編み物の技術が全く衰えておらず、若い頃に身に着けた腕前が今も体に染みついていました。

このような場面では、「彼女の編み物の上手さは、昔取った杵柄である」などと言うことができます。つまり、今の技術は過去に鍛えて身に着けたものであるという意味です。

「昔取った杵柄」は、若い頃に身につけた腕前や技術を表します。したがって、年配やベテランなどある程度年を取った人に対して使われることわざとなります。

昔取った杵柄の語源・由来

 

「昔取った杵柄」の語源はどこから来ているのでしょうか?

まず、「杵(きね)」とは「餅(もち)などをつく時に使う木製の道具」を意味します。そして、「柄(づか)」とは「手で握る部分のこと」です。

すなわち、「杵柄」とは「杵を手で握る部分」を指すことになります。

昔は大みそかになると、多くの家庭で自宅で餅をついていました。餅をつくのは子供や母親ではなく、一家の大黒柱である父親です。

ところが、そんな父親が隠居の身になっても、ひとたび杵を握れば見事な腕前を発揮する者もいました。この事から、「過去に身につけた技能は、いざという時に役に立つ」という意味で「昔取った杵柄」を使うようになったわけです。

意外に思う人も多いかもしれませんが、餅つきという作業は高度な技術が求められます。おいしい餅を作るには、こねる人とうまくテンポを合わせなければいけません。また、餅が木にくっつかないようにタイミングよく水につける必要もあります。

冷静に考えれば、一日やそこらではなく、何か月も練習しないと習得できない技術でしょう。つまり、餅つきの技術を時間が経っても忘れないことはある意味当然だったわけです。

なお、辞書の説明だと「昔取った」と書かれていますが、元々の由来は「操(と)った」が正しいです。

「操」という字は「操(あやつ)る」などがあるように、「何かをうまく扱う・コントロールする」などの意味があります。

つまり、元々は「昔はうまく扱っていた杵柄」という意味で作られた言葉ということになります。「取った」という表現は、あくまで分かりやすくするための当て字ということです。

昔取った杵柄は悪い意味?

 

「昔取った杵柄」は、良い意味・悪い意味のどちらで使うか迷う人が多いようです。

結論から言いますと、良い意味でしか使われない言葉だと考えて問題ありません。

「昔取った杵柄」は、身につけた技術が衰えていないという意味です。技術が優れていると言われてうれしくない人はいないはずです。

したがって、このことわざは多くの場合相手への褒め言葉として使うのです。

では、なぜ多くの人が悪い意味だと勘違いしているのでしょうか?その理由は、「雀(すずめ)百まで踊り忘れず」と混同しているからだと思われます。

「雀百まで踊り忘れず」とは「幼い頃に身につけた習慣は、いくつになっても忘れない」という意味のことわざです。

こちらは悪い習慣や道楽など、否定的な意味として使う言葉です。例えば、浮気をする癖やギャンブルの習慣などが挙げられます。

「昔取った杵柄」は悪い意味としては使いませんので混同しないようにしましょう。

昔取った杵柄の類義語

昔取った杵柄 類義語 対義語

続いて、「昔取った杵柄」の類義語を紹介します。

亀の甲より年の功(かめのこうよりとしのこう)】⇒年長者の経験は尊ぶべきである。「功」とは「きわめて長い年月のこと」を指す。「甲羅」の「甲」と「功績」の「功」を掛け合わせた言葉。
老いたる馬は道を忘れず(おいたるうまはみちをわすれず)】⇒経験豊かな人は、判断が適切である。年の取った馬は道をよく知っていて迷うことがないため。
医者と坊主は年寄りがいい(いしゃとぼうずはとしよりがいい)】⇒医者や僧は年を重ねて経験を積んだ者の方がいい。「坊主」とは「僧侶のこと」を指す。
昔の勘を取り戻す(むかしのかんをとりもどす)】⇒かつて持っていた技術や能力を再び取り戻すこと。

ことわざで、年長者の経験や技術を称賛するものは比較的多いです。この中でも、「亀の甲より年の功」はよく使われます、

その他、一般的な語だと「熟練・技能・達者」なども類義語に含まれます。

昔取った杵柄の対義語

 

逆に、対義語としては次のような言葉が挙げられます。

昔千里も今一里(むかしせんりもいまいちり)】⇒昔優れていた者でも、年をとると凡人以下になる。千里走れていた名馬も、年を取ると一里しか走れないため。
麒麟も老いては弩馬に劣る(きりんもおいてはどばにおとる)】⇒すぐれた人物も、年老いると凡人に劣るようになる。「麒麟(きりん)」とは「一日に千里も走る名馬」、「弩馬(どば)」とは「足が遅いのろまなな馬」を指す。
昔の剣、今の菜刀(むかしのつるぎ、いまのながたな)】⇒昔すぐれた人物でも、老いた今は役に立たなくなる。「菜刀」とは「野菜しか切れないナイフ」を意味する。
老いては子に従え(おいてはこにしたがえ)】⇒年を取ってからは、何事も子供に任せた方がいい。老いてからは自分の力に頼るよりも、子の力に頼った方がいい。

こちらは反対に、否定的な意味として使われることわざです。一般的な言葉だと、「老いる・老けこむ・衰える」なども対義語に含まれます。

昔取った杵柄の英語訳

 

「昔取った杵柄」は、英語だと次のように言います。

old hand

using one’s experience from the past

「old hand」は、直訳すると「古い手」という意味になります。

一見すると失礼な表現にも聞こえますが、ここでは「時間が経った腕前・手腕」といった意味で考えると分かりやすいでしょう。英語圏では、年長者でも腕前が落ちない人を尊敬を込めて「old」をつけます。

また、後者の方は「過去の経験を使う」と訳すと分かりやすいです。こちらは少々堅い文章に対して使われる表現です。

例文だと、それぞれ次のような言い方となります。

She is an old hand at cooking.(彼女は料理の達人である。)

He is using his experience from the past at hunting.(彼は狩猟の名人である。)

昔取った杵柄の使い方・例文

 

最後に、「昔取った杵柄」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 祖父は昔取った杵柄だけあり、書道をやらせたらさすがである。
  2. 彼の知識は昔取った杵柄で、特に経済に関する知識は誰にも負けない。
  3. 彼女は昔取った杵柄だけあって、校正を任されたら慣れたものです。
  4. 昔取った杵柄を見せてやる」と、その職人は勢いよく作業を始めた。
  5. あいつは以前、大工職人だったようだ。まさに昔取った杵柄である。
  6. 年の割には思ったより体が動いたよ。昔取った杵柄だと感じたね。
  7. 私の腕前なんてそんなに大したことはないですよ。昔取った杵柄です。

 

「昔取った杵柄」は、相手へのほめ言葉として使うことがほとんどです。多くは、その人が若い頃に習得した能力やスキルを対象とします。

ただし、まれに自分自身に対して使うこともあります。例えば、最後の二つの例文(6・7)です。この場合は、自分を客観視したり謙遜したりするような意味合いで用いられます。

他人に対して使う場合は、経験豊富な腕前を直接的に伝える表現ですが、自分に対して使う場合は経験があることを間接的に遠回しに伝える表現となります。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

昔取った杵柄」=昔や過去に鍛えて習得した技能。若い頃に鍛えて身につけた腕前。

語源・由来」=昔うまく扱っていた杵柄(杵を手で握る部分)。「取った」は「操った」が元。

類義語」=「亀の甲より年の功・老いたる馬は道を忘れず・医者と坊主は年寄りがいい・昔の勘を取り戻す」

対義語」=「昔千里も今一里・麒麟も老いては弩馬に劣る・昔の剣、今の菜刀・老いては子に従え」

英語訳」=「old hand」「using one’s experience from the past」

「昔取った杵柄」は昔という過去のワードが入っているので、ネガティブな印象を抱くかもしれません。しかし、実際には良い意味の褒め言葉として使えることわざだと覚えておきましょう。