「焼けぼっくいに火が付く」ということわざをご存知でしょうか?漢字だと、「焼け木杭に火が付く」とも表記します。
「ぼっくり」と聞くと「松ぼっくり」をイメージする人も多いかもしれません。ただ、このことわざは「松ぼっくり」とは、全く異なる意味で使われています。
本記事では、「焼けぼっくいに火がつく」の意味や語源、使い方・類義語などを詳しく解説しました。
焼けぼっくいに火がつくの意味
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【焼け木杭(ぼっくい)に火が付く】
⇒一度焼けた杭は火がつきやすいところから、以前に関係のあった者どうしが、再びもとの関係に戻ることのたとえ。主に男女関係についていう。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「焼けぼっくいに火がつく」は「やけぼっくいにひがつく」と読みます。意味は「以前に関係のあった者同士が、再び元の関係に戻ること」です。
主に、男女のカップルが復縁するような際に用いられることわざです。
例えば、喧嘩をして別れてしまったカップルが仲直りをし、お互いが再び一緒に行動するようになったとします。このような場面では、「焼けぼっくに火がつくように仲良くなった」などと言われることがあります。
つまり、「焼けぼっくいに火がつく」とは一度壊れた人間関係が再び修復するような意味を持つということです。一言で言えば、「復縁」を意味することわざということになります。
なお、場合によっては「焼けぼっくいには火がつきやすい」「燃え杭には火がつきやすい」などと言われることもあります。意味は、「以前に関係のあった者は、元の関係に戻りやすい」ということです。
焼けぼっくいに火がつくの語源・由来
「焼けぼっくいに火がつく」は、「一回焼けた後の木は二回目以降燃えやすいこと」を由来とします。
まず、「焼けぼっくい」は漢字だと「焼け木杭」と書きます。元々、「木杭(ぼっくい)」は「棒杭(ぼうくい)」と書いていました。ところが、時代と共にだんだんと「ぼうくい」⇒「ぼっくい」と変化していったのです。
では、「棒杭」とは何かと言いますと、「建物を作るときに地盤に打ち込む基礎のこと」を指します。分かりにくいと言う人は、単なる「棒切れ」と思って頂いても構いません。この棒切れが焼けている状態を、「焼けぼうくい」と言うのです。
ここで「焼けぼうくい」を私たちの普段の生活に当てはめてみます。キャンプなどで火をつける時に木の棒を燃やした経験はないでしょうか?
この時に、一度燃やした後の木は生木の状態から炭化しているため、再び火をつけた時に非常に燃えやすいです。つまり、一回焼けた後のぼうくいは非常に燃えやすいと言えます。
転じて、「一度火のついた男女は復縁しやすい」という意味でも使われるようになったわけです。
よって、冒頭で説明した「焼けぼっくい」=「松ぼっくり」のイメージで考えるのは全くの誤解である事が分かるかと思います。あくまで、このことわざは、炭化した木が燃えやすくなる現象から作られたことわざということです。
焼けぼっくいに火がつくの類義語
続いて、「焼けぼっくいに火がつく」の類義語を紹介します。
- 仲直りする
- 復縁する
- 修復する
- 和解する
- 縒(よ)りを戻す
- 改善する
- 元の鞘(さや)に収まる
- 再燃する
- またくっつく
慣用句やことわざとしての類義語は特にありません。しいて挙げるならば、「縒(よ)りを戻す」は男女の復縁に際によく使われる慣用句です。
この中だと、「復縁する」「和解する」は「焼けぼっくいに火がつく」の同義語だと考えても問題ありません。相手と関係を取り戻す意味であれば、基本的に類義語となります。
焼けぼっくいに火がつくの英語訳
「焼けぼっくいに火がつく」は、英語だと次のように言います。
「Wood half-burned is easily kindled.」
直訳すると「半焼けした木は、簡単に燃やされる」となります。「wood」は「木」、「half-burned」は「半分焼けた」、「easily」は「簡単に」、「kindle」は「火をつける・燃やす」などの意味です。
また、別の言い方だと「The old love blazed anew between them.」などの表現も可能です。
直訳すると、「古い愛が彼らの間で再び燃え盛る」となります。「old love」は「古い愛」、「blaze」は「燃え立つ」、「anew」は「新たに」という意味です。
焼けぼっくいに火がつくの使い方・例文
最後に、「焼けぼっくいに火がつく」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。
- 久しぶりの再会で、焼けぼっくいに火がつくように彼らは仲良くなった。
- 彼は彼女と数年前に別れたが、焼けぼっくいに火がつくようによりを戻した。
- あの二人は同窓会で会って以来、焼けぼっくいに火がついて結婚したみたいだよ。
- かなりもめていたけど、再び仲良くし出した。焼けぼっくいには火がつくものだね。
- 焼けぼっくいに火がつくじゃないけど、最近縁を切った彼女が恋しくなってきたよ。
- あんなに喧嘩したのにまた一緒に行動?焼けぼっくいに火がつくとはこのことだね。
「焼けぼっくいに火がつく」は、すでに説明したように男女が関係を戻す際に使われることが多いです。特に、恋人同士や夫婦の復縁時には使いやすい言葉だと言えます。
ただし、このことわざは必ずしも良い意味として使うとは限りません。「腐れ縁」という言葉があるように、人間関係にも当然、悪い縁があります。もしも悪い縁を復活させてしまえば、お互いにとって害を生んでしまいます。
したがって、関係を戻すことがお互いにとって良いかどうか?ということも考える必要があります。もしもこの言葉を使う時は、復縁自体が良いものかどうかについても考慮してから使うようにして下さい。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「焼けぼっくいに火がつく」=以前に関係のあった者同士が、再び元の関係に戻ること。
「語源・由来」=一度焼けた棒杭は燃えやすいため。ぼっくいは「棒杭(ぼうくい)」が転じたもの。
「類義語」=「仲直りする・和解する・復縁する・ヨリを戻す・再燃する」など。
「英語訳」=「Wood half-burned is easily kindled.」「The old love blazed anew between them.」
木を燃やす際は、生木よりも炭木の方が燃えやすいです。転じて、男女の関係性について使われるようになったことわざが、「焼けぼっくいに火が付く」だと覚えておきましょう。