魚や貝などのことを総称して「ぎょかるい」と言います。ただ、この場合に漢字の書き方が問題になってきます。
つまり、「魚介類」と「魚貝類」のどちらが正しい表記なのか?ということです。そこで本記事では、「魚貝類」と「魚介類」の違いについて詳しく解説しました。
魚介類・魚貝類の意味
最初に、「ぎょかいるい」の意味を辞書で引いてみます。
【魚介/魚貝(ぎょかい)】
⇒魚類と貝類。また、海産動物の総称。「―類」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「ぎょかいるい」という言葉は、正式には辞書に載っていません。多くの辞書では語尾の「るい」を書かずに「ぎょかい」と記述されています。
つまり、「ぎょかいるい」は動物学上の名称ではなく一般的な呼称ということです。
意味としては、「魚類と貝類。海産動物全般のこと」を表します。それぞれの言葉の意味を説明すると次のようになります。
- 「魚類」⇒マグロ・タイ・サバなど。
- 「貝類」⇒シジミ・アサリ・ハマグリなど。
- 「海産動物」⇒海に生息する全ての生物。
このような海に生息する生き物全般のことを「ぎょかいるい」と呼ぶわけです。
魚介類と魚貝類の違い
「魚介類」と「魚貝類」の違いを簡潔に述べると以下のようになります。
「魚貝類」⇒魚類と貝類のみ。
まず、分かりやすいように両者の語源を確認しておくと、「魚介類」の「介」という字は「介護・介抱」などがあるように「助ける」という意味があります。
転じて、「外側が固いこと」を意味する語として使われるようになりました。
つまり、元々の意味は「魚介」=「こうらやよろいなど、固い殻を持つ生き物」だったわけです。具体的にはエビやカニなどの甲殻類を指します。
ここから意味が広がり、現在では次のような生物も「魚介類」と呼ぶようになりました。
- エビ・カニなどの「甲殻類」
- イカ・タコなどの「軟体動物」
- イルカ・クジラなどの「哺乳類」
- サザエ・あわびなどの「腹足(ふくそく)類」
- ウニ・なまこなどの「棘皮(きょくひ)動物」
そして、「魚貝類」の方ですが、これは文字通り「魚類と貝類のみ」を指します。したがって、エビなどの甲殻類は厳密には「魚貝類」には含まれないことになります。
元々「ぎょかいるい」という言葉は、「魚介類」と書いていました。ところが、「ギョカイルイ」を耳で聴いて「カイ」を「貝」だと勘違いした人が「魚貝類」と書くようになりました。
要するに、「魚貝類」の方は人の混同によって生まれた言葉ということです。漢字の世界ではこのように間違った読み方をした言葉が一般化するのはよくある話だと言えます。
魚介類と魚貝類の使い分け
「魚介類」と「魚貝類」の使い分けですが、原則として「魚介類」の方を使うと考えてよいです。別の言い方をするなら、「魚貝類」の方は使わないということです。
理由については二つあります。まず一つ目は「意味の範囲」です。
すでに説明した通り、「魚介類」は「海に生息する全ての生物」を指し、「魚貝類」は「魚と貝のみ」を指すということでした。
つまり、魚介類は魚貝類の意味も含んだ言葉ということになります。したがって、広い意味を持つ「魚介類」の方を使っておけば特に問題はないというわけです。
その証拠に、共同通信社の『記者ハンドブック』では、以下のようなルールを決めているようです。
「ぎょかい(魚貝)」→「魚介もしくは魚介類」とする。
すなわち、読み書きの世界であるメディアでも「魚介」で統一しているということです。
一般的には、「共同通信社」以外のメディアもこれにならい、「魚介」を使う傾向にあります。したがって、私たち一般人としても原則として「魚介」を使えばよいということになるわけです。
そして二つ目は、「読み方の違い」です。
「魚介類」の方は、「ギョ」も「カイ」も「音読み」です。一方で、「魚貝類」の方は、「ギョ」は「音読み」ですが「かい」は「訓読み」です。
「後者」の読み方は「重箱読み(音読み+訓読み)」と言い、漢字本来の読み方ではありません。
簡単に言えば、「魚貝類」の方は正式な読み方ではないということです。以上、二つの理由から「魚介類」の方を使うという結論になります。
まとめ
今回は「ぎょかいるい」について解説しました。
「魚介類」⇒海に生息する全ての生物。
「魚貝類」⇒魚類と貝類のみ。
「使い分け」⇒①「魚貝」は重箱読み。②「魚介類」は「魚貝類」の意味を含んだ言葉。以上二つの理由から、原則として「魚介類」を使う。
「魚貝」の方を使っても決して誤りというわけではありません。ただ、漢字本来の語源や歴史を考えるならば、使う場面は限定的にしておきましょう。