虚心坦懐 意味 由来 使い方 類語 英語

「虚心坦懐」という四字熟語をご存知でしょうか?

見慣れない漢字ですが、ビジネスでは人間関係を円滑にする際によく使われています。そのため、座右の銘にしている人も多いほどです。

本記事ではそんな「虚心坦懐」の意味や由来、出典・類語などを詳しく解説しました。

虚心坦懐の意味・読み方

 

最初に、基本的な意味と読み方をご紹介します。

【虚心坦懐(きょしんたんかい)】

何のわだかまりもないすなおな心で、物事にのぞむこと。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

虚心坦懐」は「きょしんたんかい」と読みます。意味は「わだかまりのない素直な心で、物事にのぞむこと」です。

「わだかまり」とは「心の中に残っている相手への不満や不信のこと」を意味します。つまり、「不満や不信をなくし、素直な心でのぞむこと」を「虚心坦懐」と言うわけです。

例えば、あなたが自分の友人と喧嘩をしてしまったとしましょう。何気ない一言で相手を傷つけてしまい、喧嘩になってしまうようなことはあります。

しかし、いつまでたっても不仲のままでは周りに示しがつきません。そこで、今までの不満を一切考えず、お互いに平静な態度で話し合ったとします。

このような場面では、「彼とは色々あったが、虚心坦懐に話せた」などと言うことができます。つまり、お互いが素直な心で話したということです。

「虚心坦懐」は、基本的に人と人が接する場面で使います。その場合、過去に蓄積されていた自分の負の感情はすべてなくした状態にします。言いかえれば、「心の中に余計な考えがない状態にする」ということです。

虚心坦懐の語源・由来

 

「虚心坦懐」は、「虚心」と「坦懐」の2つに分けることができる四字熟語です。

まず、「虚心」の「」は「空虚」「虚無」などの熟語があるように、「中身がない・からっぽ」という意味です。転じて、「虚心」は心がからっぽなことから「素直な心」を表すことになります。

ここで注意すべきは、「虚心」の「虚」には、「ウソ」という意味は含まれていないということです。

「虚」という字を調べると、「ウソ・偽り」という意味もあります。しかし、この意味で使うのは「虚偽」「虚言」など限定的な場合のみです。

本来の言葉の意味としては、「」は「すなおさ・謙虚さ」を表します。

そして、「坦懐」は「おおらかな気持ち。心が平らなこと」などの意味です。「坦」という字は「平坦」「分担」などがあるように「平らにすること」を表します。

そのため、「坦懐」⇒「気持ちを平らにする」⇒「素直になる」という意味になります。

以上まとめますと、本来の意味としては、

虚心」=心をからっぽにする。坦懐」=気持ちを平らにする。 

となります。

つまり、どちらも似たような意味を持った言葉ということです。あえて同じ意味を重ねることにより、わだかまりのなさを強調した四字熟語にしているということです。

なお、「虚心坦懐」には明確な出典はありません。そのため、昔の中国などの故事にも存在しない言葉です。「虚心坦懐」はあくまで、同じような意味の言葉を繋げ合わせて作られたものだと考えて下さい。

虚心坦懐の類義語

虚心坦懐 類義語 言い換え 対義語

続いて、「虚心坦懐」の「類義語」を紹介します。

虚心平意(きょしんへいい)】⇒わだかまりがなく、平静な意思。「虚心」は「素直な心」、「平意」は「余計な意思がないこと」を表す。
虚心平気(きょしんへいき)】⇒わだかまりがなく、平静な気持ち。「平気」とは「余計な気持ちがないこと」を表す。
明鏡止水(めいきょうしすい)】⇒何のわだかまりもなく、静かな心の状態。「明鏡」は「一点の曇りもない鏡」、「止水」は「止まって静かになった水」を表す。
一点素心(いってんそしん)】⇒ほんのわずかな純粋な心。「一点」は「一つの」、「素心」は「純粋な心」を表す。

「類義語」は「わだかまりがない・純粋な・平静な」などの意味を持つ言葉が多いです。この中では、「明鏡止水」がよく用いられます。

虚心坦懐の対義語

 

逆に、「対義語」としては以下の言葉が挙げられます。

意馬心猿(いばしんえん)】⇒心が混乱して落ち着かない様子。「走り回る馬」や「騒ぐ猿」は落ち着かないため。
玩物喪志(がんぶつそうし)】⇒珍しい物に心を奪われて、大切な志を失うこと。「玩物」は「珍しい物」、「喪志」は「目標や志を失うこと」を表す。
疑心暗鬼(ぎしんあんき)】⇒疑いが増え、何でもないことにおびえること。「疑心」は「疑う心」、「暗鬼」は暗闇の中の亡霊」を表す。
焦心苦慮(しょうしんくりょ)】⇒心を痛めて、思いをめぐらし悩むこと。「焦心」は「心を痛めること」、「苦慮」は「悩んで苦しむこと」を表す。

反対語は「混乱・疑心・悩み」などを表す言葉が多いです。相手の心理を疑っている際に、「疑心暗鬼」などがよく用いられます。

虚心坦懐の英語訳

 

「虚心坦懐」は、英語だと次のように言います。

to be free from all bias

「bias」は「偏見・先入観」、「free from」は「~から自由になる」という訳です。直訳すると、「すべての偏見から自由になる」という意味になります。

このことから、「偏見や先入観をなくして接する」⇒「虚心坦懐」と訳すことができます。

他には文章表現だと、「We talked frankly.(私たちは素直に話した)」などもあります。「frankly」は「素直に、率直に」という意味です。

その他、「openly」「honestly」などを使ってもよいでしょう。どちらも「素直に」という意味があります。また、くだけた表現だと「an open mind」などもあります。こちらは「心を開いて」という意味です。

虚心坦懐の使い方・例文

 

最後に、「虚心坦懐」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 虚心坦懐な態度で接することで、相手と打ち解けることができた。
  2. 今までのことは全て忘れ、虚心坦懐に話し合おうじゃないか。
  3. 虚心坦懐に話せたので、過去のわだかまりを清算できたのだろう。
  4. 先入観を捨てて虚心坦懐に話せば、彼は良い人なのかもしれない。
  5. あいつのことは嫌いだが、今日だけは虚心坦懐に耳を傾けることにしよう。
  6. もっと虚心坦懐に話したかったが、彼女は無愛想に対応してきた。
  7. 虚心坦懐に意見を聞けば、向こう側の意見も納得できた部分が多い。
  8. リーダーは「メンバー全員と虚心坦懐に話し合いたい」と述べた。

 

「虚心坦懐」は、「相手と純粋かつ素直に接する」という意味でした。したがって、基本的には前向きな意味として使うことがほとんどです。

「今までは、お互いがギクシャクしていた」「でも、これからは素直にちゃんと接していこう」。このような場面で「虚心坦懐」を使うことができます。

具体的な場面としては、日常的な会話やビジネスシーン、スポーツなどが挙げられます。相手とフラットな気持ちで接したいと考えた時に、うまく文章の中に取り入れてみて下さい。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

虚心坦懐」=わだかまりのない素直な心で、物事にのぞむこと。

語源・由来」=「心をからっぽにし、気持ちを平らにすること」から。

類義語」=「虚心平意・虚心平気・明鏡止水・一点素心」など。

対義語」=「意馬心猿・玩物喪志・疑心暗鬼・焦心苦慮」など。

英語訳」=「to be free from all bias」「openly」「honestly」など。

相手と素直な心で接するのは非常に大事なことです。この記事をきっかけに、過去に遺恨のあった人と「虚心坦懐」に接してみてはいかがでしょうか?