『原始社会像の真実』は、現代文の教科書に出てくる評論です。ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。
そこで今回は、『原始社会像の真実』のあらすじや要約、テスト対策などを簡単に解説しました。
『原始社会像の真実』のあらすじ
本文は行空きによって二つの段落に分けられていますが、第一段落はさらに三つに分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを紹介していきます。
①-1原始社会には戦争がなかった。そのため、現代でも戦争のない社会を実現することができるはずだ、と言われることがある。しかし、どうしても違和感を拭い去ることはできない。実際はどうだったか本当のところはよく分からないが、他者を殺すという行為が行われていた可能性は排除しておかないほうがよい。原始時代の社会はありのままに捉えるべきであって、現代人のご都合で理想化してほしくはない。
①-2女性史の分野では、原始時代の女性の地位が高かったことを強調する傾向がある。しかし、最近の考古学や古代史の研究では、これまでの女性史の通説とはやや異なった社会像が浮かび上がってきている。そのため、学術的議論を戦わせていく必要はある。
①-3アメリカの進化生物学者、ジャレド・ダイアモンドは、環境保護を進めている人たちの間に、古代の人々はみな環境を守り豊かな自然の中に包まれて調和的な生活を送っていたという誤解があると述べている。例えば、イースター島やイギリスなどでは、古代の人々も私たちと同じように環境を破壊し、過ちを犯してきたのだ。
②現代の社会を変革しようとする運動では、原始社会を肯定的に扱う議論が多い。だが、それぞれの原始社会が抱えている長所や短所、あるいはさまざまな個性を客観的に見つめるべきである。原始社会は、ユートピアではなかった。実際の社会は著しく多様であり、その多様性の相互関係の中から次の社会がかたちづくられていったと考えたい。
『原始社会像の真実』の要約&本文解説
筆者は、社会を変革する際の目標・理想として原始社会を位置づけるのは間違いなのだと主張します。なぜなら、それは結局、現代の勝手な目線で原始社会を見ていることになり、その実態を捉え損ねるためです。
原始社会も、現代のような戦争や女性差別、環境破壊などがありました。そのような多様性を持った社会が、どういった流れで現代の社会になってきたのかを、私たちは客観的に考察する必要があると述べています。
つまり、原始社会をただ単に理想化して捉えるのではなく、長所・短所を抱えた多様性を持つ社会だったとして、冷静に捉えるべきということです。
過去にあったため、その社会の実現は可能であるはずだ、という論理は、一見すると筋が通っているようにも見えます。例えば、「戦争は昔はなかった」⇒「だから、今の時代の戦争もなくせるはずだ」というような考え方です。
ところが、もしもその過去の姿が事実でなければ、こうした論理は筋が通りません。そのため、筆者は実際の原始社会はどうだったのかということをもっとよく考えるべきだと主張しているのです。
なお、筆者は考古学者でもあるため、原始社会がありのままに捉えられずに、都合よく事実を曲げて語られる現状に対して不満を抱えていることも伝わってきます。そういった筆者の置かれた立場や背景を読み取ることも、この評論では重要なポイントとなります。
『原始社会像の真実』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①時代のサンブツ。
②障害をハイジョする。
③人目をサける
④ゴカイを解く。
⑤建物がホウカイする。
⑥コンゲン的な問題。
⑦相手の意見をコウテイする。
⑧キョクタンな行動に出る。
「一つの方向に向かっていたベクトルの向きを修正するためには、望ましい方向に力を加えるのではなく、元の方向の反対側にベクトルの力を加えなければならないというのは運動の鉄則だろう。」とあるが、この一文に関して次の問いに答えなさい。
①「一つの方向に向かっていたベクトルの向き」とは、ここでは何を表しているか?
②「元の方向の反対側にベクトルの力を加える」とは、ここではどうすることを表しているか?
①男性の地位を高く考え、逆に女性の地位や役割を不当に低く考えるような社会の傾向。
②女性の地位や役割を高く評価すること。
まとめ
以上、今回は『原始社会像の真実』について解説しました。ぜひ定期テストなどの対策としてもらえればと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。